祝50周年!矢沢永吉の音楽家としての凄さを語りたい!
TBSラジオで毎週金曜日8時30分~午後1時まで放送の「金曜ボイスログ」
シンガーソングライターの臼井ミトンがパーソナリティを務める番組です。
このnote.では番組内の人気コーナー
「臼井ミトンのミュージックログ」の内容を書き起こし。
ちなみにyoutube版では動画も公開しているのでそちらも是非。
歌手活動50周年「矢沢永吉」
最近ソロ作が全曲サブスク解禁されたことでも話題になりましたが、
国立競技場で開催されます歌手活動50周年記念コンサートもあと1週間と
迫ったところで、永ちゃんについてお話したいと思います。
実はこの金曜ボイスログという番組、約2年前の第一回目の放送の記念すべき1曲目っていうのが永ちゃんの曲だったんですよ。
永ちゃんがキャロル解散後にリリースしたソロアルバムの1曲目を僕が自分で選曲してかけたんです。
矢沢永吉っていう歌手はご本人のキャラとファン層のキャラがあまりに強烈すぎて、ある種「アイコン化」してしまっているものだから、彼の音楽面での素晴らしさとか功績っていうのがほとんど語られていないような気がするんですね。
でも,彼はデビュー以来半世紀にわたって物凄く良質なグッドミュージックを作り続けて来た人で、今日はそんな彼の音楽面での功績についてお話したいと思います。
…が、まずはその前に何故彼が歌手という存在を超越してアイコン化してしまったのか?という部分から解説する必要があります。
キャロルを結成
彼は1949年、広島の生まれで、ロックスターになることを夢見て上京。
キャロルというバンドを結成します。
テレビ番組にちょろっと出演したことをきっかけに1970年にデビューするんですが、彼ら、一体どんなバンドだったかと言うと、リーゼントで革ジャン着てロックンロールをやる、という、1970年の当時にしてはかなり、古臭いことをしていたんですよ。
ロックンロールって言うのは、アメリカの黒人音楽文化であるリズムアンドブルース、これを白人向けにパッケージし直したものですね。
で、それを大衆文化に広めたのがElvis Presleyなわけなんですけど、このときロックとともにリーゼントの髪型を爆発的に流行らせたのもElvisですね。
で、そんなElvisを始めとするロックンローラーに憧れてイギリスのリヴァプールで結成されたのがBeatlesなわけですけど、彼らは一般的にはマッシュルームカットに小綺麗なスーツを着てるイメージが強いかもしれませんが、
デビュー前の下積み時代は彼らのアイドル、ElvisやBuddy Hollyを真似て、
彼らもリーゼントだったんですよ。黒い革ジャンを着てリーゼントで50年代の不良スタイルでキメていたんですね。
キャロルは、そんな下積み時代のBeatlesを真似たんです。
全員真っ黒な革ジャン着て、リーゼントの髪型で、音楽的にも、50年代に
流行ったような初期のロックンロールを演奏したんです。
で、こういうロカビリー文化、50’sの不良文化って今となってはもう一周も二周もして、Elvisの伝記映画だって大人気で普通にカッコいいと思えるかもしれないですけど、キャロルがデビューしたのってまだ1970年なんですよ。つまり、当時はまだ全然一周してなかった。今で言うところの90年代終わりのファッションみたいな感じかな。
え、ギリギリどうなのアリなの?無しかな?っていう絶妙なライン。
だって、この頃ってちょうどBeatlesが解散した頃で、既にBeatles的なロックバンドが時代遅れになっていた。
アメリカ西海岸のサイケなヒッピー文化とシンガーソングライターが最も
ナウいとされていた時代ですよ。日本でもいわゆる荒井由美とか細野晴臣とか、そういうニューミュージックみたいな流れが生まれ始めていた時代。
ロックミュージックやるっていっても、この当時はみんな髪型はロンゲで、髭生やして、ベルボトムのジーンズ履いて、っていうそんな時代にあって、リーゼントと革ジャンとロックンロールでいきなりバーンって登場するっていうのは、これ大事件なわけですよ。
でも、やっぱりそういうリバイバルって誰かが勇気を持ってやり始めるその一人目が肝心っていうか、そういうギリギリ「有り?」「無し?」のラインを先陣切って行ける人っていうのが、尊いんですよ。
本当の意味でのインフルエンサーですよね。
だから、まず矢沢永吉がやっていたキャロルというバンドの凄かったところはそこですよね。お前らこれ今ダサいって思ってるかもしれないけど余裕でアリだからな、っていうそのアティチュードがシビれますよね。
当然、メディアで大きな話題になり一躍スターダムにのし上がるわけです。
で、特にこの高度成長期真っ只中の不良たちの心をつかむわけですよ。
不良がどういう格好をしてどう振る舞ったら良いか、ある意味そのスタイルの雛形をキャロルが彼らに提示し、日本全国の不良のお手本になったわけ。暴走族、ツッパリ、ヤンキー。そういう人たちがキャロルのライヴに詰めかけて熱狂するわけだから、まぁこれ社会現象ですよ。
こういうわけで、やっぱり矢沢永吉っていうのは、社会現象を巻き起こした張本人であり、不良カルチャーを象徴するアイコンですから、
逆に言えば、不良文化に親しみを感じない人にとっては、もうそれだけで積極的に彼の音楽を聴こうとは思わない、っていうことにもなってしまいかねないわけです。
僕が冒頭から言い続けている「アイコン化されてしまっている」っていうのはまさにこの部分で彼の音楽家としての素晴らしさにどうしてもスポットライトが当たらない。
キャロルは狭義のロック〝リズムアンドブルース〟に日本語を。
で、じゃあキャロル時代に成し遂げた凄いことは何かっていうと…
それはずばり、ロックンロールに日本語の詩を乗せたことなんですよ。
以前、小坂忠さんの話をしたときに「はっぴいえんど」なんかの日本語ロックの黎明期におけるロックとフォークの違いって何なのか?
それは、ドラムのスネアが2拍目と4拍目で鳴っているかどうか。
バックビートを大切にするかどうかだ!っていう話をしたと思うんですが、キャロルが成し遂げた快挙っていうのは、まぁ歌詞書いていたのは永ちゃんじゃなくてジョニー大倉さんなんですけど、ロックに日本語詞を乗せたんじゃなくて、ロックンロールに日本語詞を乗せたっていう点なんですよ。
何がどう違うかというと、広義でのロック、狭義でのロックの違いです。
ロックって、最初は50年代のロックンロールから始まって、60年代70年代にはもっと広い意味の音楽を指す言葉になったので、広い意味でのロックと
言う言葉を無理やり定義するなら、バックビートを大切にする音楽。
ということになると僕は思っているんですね。
その広い意味でのロックに日本語を乗せるべく試行錯誤していたのが、
「はっぴいえんど」界隈。で、キャロルが日本語詞を載せることに成功したロックっていうのは、狭義でのロック。つまりロックンロールです。
ロックンロールっていうのはロックの語源になった本当の意味でのロックンロール、これはつまり、イコール、黒人音楽のリズムアンドブルースです。なので、言い換えるなら、キャロルはリズムアンドブルースに日本語を乗せた初めてのバンドだったんです。
日本語をちょっと英語的に巻き舌気味に発音するとか、、あるいは意味の
つながらない音や言葉を入れ込むとか、リズムアンドブルース直系のロックンロールという音楽に日本語を乗せるという道を、キャロルは(矢沢永吉とジョニー大倉)は開拓したんですね。
バックビートの効いた音楽に対してどう文学的にアプローチするかっていう方向を向いていた「はっぴいえんど」界隈とは、全然違う登山口から入って全然違う登山ルートを登っていたっていう感じかな。
だから、キャロルがいなかったら間違いなくサザンオールスターズもいないし、あるいはBOØWYもいないですよね。
永ちゃんは紛れもなく日本語ロックのパイオニアの一人なんです。
で、キャロル解散後の矢沢永吉ソロ活動における功績についてもお話したかったんですが、残念ながら・・・お時間となってしまいました。
今日は、キャロルがイギリス経由でロックンロールを取り入れたということがよく伝わってくる彼らのデビュー曲、「ルイジアナ」をお聴きください。
youtube版では動画で同様の内容をご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=pgrIV0pt4Kg
金曜ボイスログは毎週金曜日8時30分~午後1時にて放送。
AM954/FM90.5/radikoから是非お聞きください。