【動画🎓🎞️】途上国型と先進国型の経済発展モデルの違い~お金の教科書STEP2(2-10)

人口と経済の相関性

世界の人口は第二次世界大戦中も拡大を続けましたが、戦後から今日まで更なる急速な拡大期に入りました。

1950年に16.3億人だった世界人口は2000年に61億人を突破。
2022年に80億人を超え、2050年の将来予測は93億人です。

人口が増えれば消費されるモノやサービスが増え、企業は売上を上げ、利益を出し、それらの合計がその国のGDPを押し上げてくれる…

人口と経済、株価の時価総額には一定の相関性が認められるというのは今でこそ当たり前とされていますが、信頼できる様々な統計やデータが集まり国際的な経済との影響に反映されるようになったきたのは1970年代以降のコンピュータが普及を始めるまで待たなくてはなりませんでした。

1976年、スティーブ・ウォズニアックとスティーブ・ジョブズによって
APPLEⅠがほぼ手作業で完成し、Apple Computure社が創業。

しかしコンピュータが本格的に普及する以前から銀行が企業や消費者に投融資を行うことで好循環の経済成長を達成することは経済学者及び社会の経験則としても知られていました。

銀行融資型の経済発展モデル

その代表的な国が日本でした。戦後の日本では太平洋戦争で焼け野原になった国土の復興と戦地から帰還した兵士たちが家庭を持ち第一次ベビーブーム(団塊の世代の誕生など)が訪れます。

1963年、歌謡曲「こんにちは赤ちゃん」が大ヒット
子どもは体格が大きいほうが健康的と信じられていた。

衣食住…需要と供給で、欲しい人が多い状態は品不足と価格の高騰を招きます。物価上昇をコントロールするために日銀は政策金利(公定歩合)を上げ下げする事で社会に供給される資金量を巧みに調整しながら日本経済は経済成長を遂げていきます。

旺盛な資金需要に銀行は応え、預貯金のすぐに引き出されない資金を企業への設備投資などで、個人へは住宅ローンやマイカーローンなどで貸し出します。

今となっては驚くべきことの一つですが、1970年代以前まで今日のような低金利の住宅ローンはなかった時代です。住宅ローンも住宅金融公庫などの住宅専用金融機関が銀行と共同出資によって誕生。

しかしバブル経済において個人への住宅ローンのノウハウを吸収した銀行が独自に融資を行うようになります。

バブル最盛期の1990年には変動金利8.5％だった住宅ローン金利。
しかし不動産価格の高騰に対する「不動産融資総量規制」が1990年に始まると市場のゆがみはバブル崩壊へとつながっていきます。

(形は違えど米国で2007年に発生したサブプライムローンも住宅ローンのリスクを見誤って融資を行った結果発生。こちらはリスクを証券化することで分散しようとしたが、不動産価格の上昇を念頭に置いた返済能力のない人への貸し出しによって焦げ付いた)

住宅ローンっていつから始まった？ その歴史と過去の大事件を紹介

2003年、住宅金融公庫が独立し、景気後退局面にあって変動金利では将来の収入が伸びないかもしれずローン返済が不安との社会的要望に応える形で「フラット35」が誕生。

将来に対する見通しの違いによる結論が人によって異なる永遠の(不毛な)テーマ「変動か固定か」の多様化と論争が始まります。

郵便局と銀行による間接投資

郵便局も当時は郵政省の管轄する金融機関として郵便貯金事業(現ゆうちょ銀行)を営んでいました。

現在の郵便局に通じる郵便窓口と簡易保険、郵便貯金の窓口が並ぶ昭和時代の景色

郵政省は国の省庁ですので、郵便局の展開している郵貯、簡易保険は実質的な国の直営扱いとして万が一の破綻時に対してもきっと国が何とかしてくれるだろう*という点でも郵便局への国民の信頼は厚く、多額の貯金額を集めていましたが民間の銀行との事業の棲み分けのために法人や個人への融資には規制がかけられていました。

*昭和46(1971)年に預金保護制度が設立され、それ以前は銀行等の破綻時の保証はされていなかった。

https://www.dic.go.jp/yokinsha/page_000105.html

そこで郵便局は日本の長期国債を買って、国は国債を発行する事で集めた資金を使ってダムや発電所、高速道路、新幹線を延伸させる間接的支援によって国の発展に貢献しました。

*銀行は企業や個人への直接融資と国債を買う事での間接融資の両輪で事業を行っています。

例えば昭和57(1982)年に大宮駅-盛岡駅間が先行開業した東北新幹線は、昭和60(1985)年に上野駅-大宮駅間も開業。

総工費は当初8,800億円とされていましたが、物価高や災害・騒音対策などが追加されこの区間の完成までに2兆8,010億円にまで膨らみました。

こうした莫大な費用も個人から預貯金を介して銀行や郵便貯金で集めたお金を国債に投じることで実現しました。

また「かんぽ」の愛称で親しまれた郵便局の簡易生命保険*は、民間の生命保険がそうであるように長期国債を買う事で得られる利息や運用益を原資に保障を提供。

*簡易告知により告知枠での加入のみ。健康診断扱・医師扱等による詳細な引受査定は原則なく、保険金の加入限度額も民間より低く規制を受けていた点は共済に近い。

日本が経済成長を遂げるとゆうちょやかんぽは高い国債利回りの恩恵を受けます。

身近な例でこの時代の学資保険では累計払込保険料総額に対して満期時(0-18歳時)には200%以上になる満期保険金の返戻率を誇り、かつ被保険者の保障と入院・手術などの保障(特約)は実質無料で付いてくる状態のものも加入時期によってはあったほどです。

このためこの時代を経験した世代は「子供が生まれたら学資保険」という強烈な印象を持っていますが、こうした高い返戻率が実現できたのは国債金利が高かった時代だからこそで、現在のようなゼロ金利・マイナス金利の時代で同じようなことをやっても十分な教育資金を確保することは容易ではありません。

余談ですが簡易保険事業としての運用益に加えて日本人の長寿化による死差益*などを元手に日本全国に「かんぽの宿」を展開していました。
加入者は福利厚生の一環として割安な宿泊料で豪華な施設を利用でき人気を博しました。

温泉やプールを併設する宿泊施設も全国各地に作られた。
(かんぽの宿一関)

私も子供の頃、家族や歳の近いイトコらと夏休みや冬休みに旅行をする際に何度も利用した事があります。

*生命保険の三利源「死差益」「費差益」「利差益」の一つ。生命保険会社は保険金支払いのための原資を積立しておく必要があり、三利源以外の収益を上げることを禁止されている。
死差益は確率的な予定死亡率よりも亡くならなかった場合に生じる利益。
費差益は事業の効率化によってコストが抑えられて生まれる利益。
利差益は国債等の利回りが低下する事で保有債券の価値が上昇するなど債券運用によって当初予定していたよりも得られる利益。債券に限らず投融資による運用益全般を指す。

2007年に郵政民営化がされた郵便局の郵便事業(日本郵政)、郵便貯金事業(ゆうちょ銀行)、簡易保険事業(かんぽ生命)ですが、かんぽの宿も簡易保険事業が継承しました。

しかし全国70ヶ所の施設は老朽化や長期債券の運用利回りの低下に伴って年間50億円の赤字を出し続けました。

民営化(特殊法人化)されたかんぽの宿は2012年までにどうするかの決断が迫られていましたが、土地・建物合わせて全国で2400億円を投じられたものが今や126.5億円の評価…買い手候補として手の挙がったオリックス不動産ですが、あまりの価格差に鳩山総務相(当時)が売却を保留とし、2021年10月に32施設の買取先がやっと決まったほどです。

政治問題化した「かんぽの宿」売却、ここまで来たら徹底洗い出しを 評価額１万円施設の６０００万円転売おかしい、旧資産の売却先例モデルを｜牧野義司｜賢者の選択

ソ連崩壊後の世界経済

日本がバブル崩壊後まで引きずった銀行による融資*型経済発展モデルデッド・チェーンファイナンスですが、世界の経済はその間の1970年代～1990年代に次々と大きな転換期を迎えます。

*Debt=融資(借金)

一つにはニクソン・ショック。これはドル・金本位から信用経済への経済システムの大転換であり、今日の先進国での為替が変動相場へ移行する契機となります。

そして米ソ冷戦時代とその終焉を迎えたことによって世界はグローバル・サプライ・チェーンによる分業体制が確立します。

つまりそれぞれの国の得意な産業に特化することで、一部の企業が他の追随を許さない圧倒的なポジションを確立する水平分業モデルへ移行しました。

この代表格はコンピュータ産業にも見られます。CPUであればIntelとAMD、ハードディスクでいえばウエスタンデジタルvsシーゲート、メモリーでいえばサムスン電子、マザーボードでは台湾勢(ASUSやGigabite)などの圧倒的に市場支配をする企業が優位に他の追随を許さず展開する様相です。

米国最大のライバルであったソ連が内部崩壊したことによって世界は対立・分断のリスクを考慮せずに済む貿易取引が実現。

またソ連が弱体化していくと、後ろ盾を失いつつある中国では鄧小平による改革開放が始まり、香港にほど近い漁村だった深圳シンセン市はあっという間に中国の四大都市(北京・上海・広州・深圳)に名を連ねるほどの発展を遂げます。

アジア地域は安価で豊富な労働力によって「世界の工場」へと変貌。今では深圳は中国のシリコンバレーの異名を誇り、香港を超える大都市へと成長しました。

1970年代に人口3万人だった漁村は、40年で人口1250万人の中国主要都市へ変身。 地平線の彼方まで電気街という香港の川隣り深セン市。 中国版GAFAと呼ばれるBATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)4社全てがここに本社を構える。

また旧ソ連が崩壊すると旧ソ連を構成していた東欧諸国も西欧諸国(EC)の資本主義市場、労働市場へ一気に参入。

1989年11月9日、ベルリンの壁崩壊
1991年12月26日、ソビエト連邦崩壊

これによって欧州は経済同盟であるECからEUへと拡張(1993)され、アメリカに迫る巨大市場となり、2003年には共通通貨ユーロも導入され、米ドルに迫る今日につながる第二位のシェアを外国為替取引で占めるようになります。

そしてこの1970年代以降、国境を越えたグローバリゼーションの時代に、世界の経済をけん引していったのは旧来からの国内企業への融資に縛られていた銀行業ではなく、国境を超えて資金調達と国際投資のハブとなったのは証券会社と資産運用会社でした。

詳しくは本編の動画で。

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2-2お金について学ぶ目的は?(Free)

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【2-10】世界の人口推移と経済成長