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認知言語学の勉強法と、認知言語学のおすすめの本を紹介します(全て読了済み)

【プロローグ】
このプリントは、私の所属している慶應義塾大学環境情報学部教授の大堀壽夫先生の学部の研究室で私(今は大学院生)が、初回授業で作成して配布したプリントです。このプリントを渡す前に、丁寧に添削してくださった環境情報学部の大堀壽夫先生に心より感謝いたします。ありがとうございます。

認知言語学の勉強法

ここでは、認知言語学の勉強法を語っていきます。ボクが大堀研究会に入ったときに、手探りで研究を進めていったのですが、皆さんにはもう少しボクのたどってきた認知言語学の勉強法を紹介した方が、もっと円滑に研究活動も進むのではないか、と思いました。それがこの資料を書いたきっかけになります。

いったい、認知言語学はどのようにして勉強をして いけば良いのでしょうか。どのようにしたら、認知言語学の知識が効率よく身につくのでしょうか。それについて、話を始めていきます。では、はじめていきましょう。


大前提:自分が好きな分野を見つけるまで 

自分が好きな分野がこれから、見つかってくると思います。それは、認知言語学かもしれな いし、認知言語学に収まりきらないものであるかもしれません。皆さんは、言語に興味がなんとなくでもあったので、この研究会に入ったのだと思っています。ですので、認知言語学について学んでみるのは良いことであると思います。では、最初、何から学べば良いのか。

1. 言語学全般に関する入門書を1冊読む 

まずは認知言語学にかかわらず、言語学を取り扱った本を1冊、読んでみましょう。認知言語学というのは「認知」「言語学」である以上、言語学の1分野とされているのですが、言語学でどの立ち位置にあるのでしょうか。まず、それを知ってほしいと思います。特にーここでは答えは書きませんがーノーム・チョムスキーの創始した生成文法と何が関係あるのか、どうして認知言語学ができたのかというところを知るためにも、言語学全般を取り扱っ た入門書を1冊、読んでみてくださいね。以下、文献を紹介します。

①言語学の教室 哲学者と学ぶ認知言語学 (中公新書) | 野矢 茂樹/ ⻄村義樹
哲学者・論理学者である研究者が、認知言語学の研究者に対して、質問しながら認知言語学 の基礎をまとめている本。対話形式で読みやすかったのを覚えています。

②窪薗晴夫(編)(2019)『よくわかる言語学』ミネルヴァ書房
ミネルヴァから出ている本は、入門書の質は高いです。この本も、質が高いのでおすすめ。



2. 認知言語学がどのような学問かを知る 

さて、ここまでは、言語学全般を取り扱ってきましたが、ここからはその言語学の中でも認知言語学がどのような学問か、ということを知ることに焦点を置きましょう。認知言語学と言っても、文法論・意味論・コミュニケーション論など幅広いです。ですので、まず、自分 自身が研究テーマを絞る際にも、これらの本は読むと良いと思います。なお、下の大堀先生の「認知言語学」必読文献です。

大堀壽夫(2002)『認知言語学』東京大学出版会
これは研究会の先生である大堀先生が 2002 年に書いたもの。認知言語学の全般が読めて面白い。研究会の先生の本ならば、読んでおきましょう。よって、これは必読です。

野村益寛(2014)『ファンダメンタル認知言語学』ひつじ書房
こちらは、北海道大学の先生が書かれたもの。「ファンダメンタル」とあるだけに、結構重要なことが書かれていたりします。こちらも、入門書にはもってこいという感じです。


上の本はあくまでも認知言語学の文献だったら「入門レベル」に入ります。それをクリアしたら、森雄一・高橋英光(編)(2013)『認知言語学:基礎から最前線へ』や高橋英光・野村益寛・森雄一(編)(2018)『認知言語学とは何か:あの先生に聞いてみよう』(どちらも くろしお出版)などの文献が、認知言語学の最前線を分野を知ることができて良いと思いま す。

これから大堀研究会に入る人であれば、ここまでの「認知言語学がどのようなのか知る」 というのを遅くても5月までにはやってほしいと思います(筆者注:これは認知言語学系の研究室だったらどこでも必須ではないか)。


3. 認知言語学の各論を理解する 

さて、ここまでしっかり行った人は、認知言語学についてある程度は知識があると思われます。ここからは知識をさらに深堀りしていきましょう。認知言語学の「意味論」「文法論」 などに分かれて、それぞれの知識を学んでいくということです。以下、それらの分野をそれぞれ学べる基本的な文献を紹介します。

【池上嘉彦・河上誓作・山梨正明(監修)シリーズ認知言語学入門】
辻幸夫(編)(2003)『認知言語学への招待』シリーズ認知言語学入門1 大修館 吉村公宏(編)(2003)『認知音韻・形態論』シリーズ認知言語学入門2 大修館 ⻄村義樹(編)(2018)『認知文法論1』シリーズ認知言語学入門3 大修館
中村芳久(編)(2004)『認知文法論2』シリーズ認知言語学入門4 大修館
松本曜(編)(2003)『認知意味論』シリーズ認知言語学入門5 大修館
大堀壽夫(編)(2004)『認知コミュニケーション論』シリーズ認知言語学入門6 大修館


実は、上の「シリーズ認知言語学入門」は、大堀先生も自身のブログで挙げていたものになります。この大修館書店から出ている「シリーズ認知言語学入門」は、かなりというか、本当に参考文献が充実していて「こういうものを今後読めばいいのか!」ということを思い知 らせてくれる(?)ものになります。ちなみに、リストの下にある「認知コミュニケーション論」は大堀先生が書いたものになります。前の学期の授業でも取り扱いました。

ちなみに、この中でどれがおすすめと言われたら明らかに「認知意味論」。これは認知意味論を研究しているボクのポジショントークではなく、単純に、この本が「認知言語学の基礎 的文献を最も網羅しているから」です。

文法論は上のリストでは2冊あるので、目次を見て興味のある方から読むと良いです。


4. 認知言語学の研究法を知る

中本敬子・李在鎬(編) (2011)『認知言語学研究の方法:内省・コーパス・実験』ひつじ 書房


研究のアイデアが浮かびましたとしましょう。その時におそらく、質問紙調査とインタビュ ー調査を用いるという人が多いと思いますが、世の中、それだけが研究手法ではないのでこ の本を読んでみて(今、慶應のメディアセンターではボクが借りているので借りれない状況になっ ていると思いますが(筆者注:まだ返していません)、返します)、それ以外の研究法も知ると良いでしょう。


5. (あくまでも参考に)辞典を持つのもいいかも

辻幸夫(編)(2013)『新編認知言語学キーワード事典』研究社
辻幸夫他(編)(2019)『認知言語学大事典』朝倉書店


上の2冊とも、このプリントを作るために読んでみましたが、キーワード辞典の方が認知言語学に特化されていて、とても良いと思いました。どちらにするかというより、最近はグーグル先生の精度が上がってきたので、そちらで検索すると思います。ですので、できれば辞典を持つと良いと思います。

最後に


というわけで、ここまで語ってきました。基本的に、卒プロ生をはじめとして、研究をした成果を研究会内で発表する機会は多いと思います。

できれば、学部生のうちに1回でも外部 で、つまり学会発表できたら、研究へのワクワクが高まると思います。基本的に、最近の学会は、発表自体はウェルカムなところが多いです。

また、学会の分科会(SIG と言います) では発表があるたびにどんな発表でも受け付けるという感じですので、そういうところで 発表して外部の先生方からコメントをもらうのも良いでしょう。最後に学会情報を。


①日本言語学会―言語に特化しているので、教育などの応用的なものは少ない。 
②日本認知言語学会―認知言語学に関わる応用も聞き入れた発表ができると思います。 
③日本語用論学会―コミュニケーション研究が多い 
④言語科学会―心理寄り・教育よりの発表もある 5言語処理学会―コンピュータ関連が基本。発表のバラエティは広い。

また、英語教育系だと「JACET(大学英語教育学会)」などもおすすめ。

こちらは毎年8月か9月に全国大会を開いており、教育の研究もあれば、言語よりの研究もあります。ちなみ にこれを書いているボクは JACET の学会員ですので、教育よりの発表をしたい人は一緒に発表しましょう笑。

以上になります。読んでくださり、ありがとう。
今学期も頑張っていきましょう。

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