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サステナブル×IT×ジブンゴト|セルフブランディングの向上に向けて

SDGsには法的な強制力がなく、取り組み内容については企業に一任されています。そのため、「何から始めればいいのかわからない」「取り組み方がわからない」という疑問を抱きながら、手探りの状態でSDGsに向けた取り組みを進めている中小企業が大半です。

そこで今回は、SDGsに取り組むためのステップを紹介します。

1 なぜSDGsなのか?

まずはSDGsとは何かについて説明しましょう。

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年に国連総会で採択された国際目標で、2030年までに達成すべき17のグローバル・アクションと169のターゲットで構成されています。

国連が定めたSDGsでは、すべての人が安全かつ質の高い教育や健康といった基本的な人権を享受できるようにすること、ジェンダー平等を達成すること、飢餓をなくすことなどを掲げており、地球上のあらゆる場所において、誰一人として取り残さないことが謳われています。このスローガンを実現するために、各国政府だけでなく、市民社会組織や民間企業なども含めた全ステークホルダーの協力が求められているのです。

SDGsへの取り組みは、世界全体の問題であると同時に、日本にとっても大きな課題となっています。なぜなら、日本の人口はすでにピークアウトしており、このまま少子化傾向が続くと、2020年ごろには1億人を下回りかねないからです。

少子高齢化が進む日本では、生産年齢人口の減少により税収が減少したり、年金制度が崩壊したりするなどの問題が顕在化しています。さらに、医療・介護サービスの需要拡大による財政支出の増大によって、社会保障費が急増する一方で、歳入は減少し続けています。つまり、日本の国家予算は年々減少の一途をたどっているのです。

このような状況に対して、日本政府はさまざまな対策を打ち出しています。たとえば、労働力不足を補うため外国人労働者を受け入れる政策や、生活保護受給者の増大を抑制するための保護費削減策などがあります。しかし、これらの施策だけでは、いずれ行き詰まることは明らかでしょう。

また、現在の日本経済を支えているのは、製造業ではなくサービス業であり、雇用形態も正社員よりも非正規社員の割合が増えています。その結果、多くの日本人にとって、労働賃金の低下を招いているのです。

このように、日本を取り巻く環境は決して楽観視できるものではありません。特に深刻なのは、少子高齢化に伴う医療費の増大や、デフレ脱却のために金融緩和を続けることによる国債発行額の肥大化などで、歳出規模に比べて歳入が減少する傾向にあることです。このままいけば、あと10年ほどで債務残高がGDP比2000%を超えるほどになりかねません。

このような状況に対処するためには、国民ひとりひとりが自ら行動を起こす必要があります。それは、SDGsのような具体的な目標を掲げることもさることながら、国民の意識を変えていくことが何より重要なのです。

2 SDGsを推進するためにできること

それでは、どのようにしてSDGs推進のためのアクションを起こしていくべきでしょうか? 実は、SDGsの推進に向けて最も有効な手段は、企業や団体などの組織体から、個々人の生活習慣までを変革していくことです。

SDGsを推進していくためには、誰もが主体的に活動に参画することが不可欠だからです。例えば、ビジネスパーソンであれば、社内研修を通じてSDGsの重要性を理解してもらい、個人レベルでもSDGsに対する理解を深めてもらうことが必要とされます。

また、学校や行政においても、SDGsの理念を広めるとともに、生徒や児童・生徒が所属する組織におけるSDGsの実践を促進することが求められるでしょう。さらに、企業においては、社員教育を通じてSDGsの意義を理解することが必要不可欠なのです。

SDGsの目標は、世界中どこでも達成可能です。しかし、その実現までには長い道のりがあり、途中で挫折してしまうケースも少なくありません。だからこそ、SDGsを推進することは、企業にとっても、そして私たち個人にとっても、非常に重要になってくるのです。

3 SDGsを実現させるために、いまできること

企業が取り組むべきことのひとつは、SDGsの目標を達成するための行動指針であるSDGsガイドラインに沿って、事業活動を行うことです。

SDGsガイドラインは、国連事務総長のコフィー・アナン氏が提唱したもので、企業の社会的責任(CSR)に関する原則を定めたものです。具体的には、
(1)サプライチェーン全体での環境配慮
(2)人材の育成と確保
(3)人権尊重と男女平等
(4)公正な経済取引と紛争解決
(5)腐敗防止
(6)障害者の権利向上
(7)SDGsの実施と周知
(8)災害リスク軽減
(9)消費者保護
(10)産業の発展
(11)技術革新
(12)持続可能な開発のための政治
という項目からなります。

このガイドラインに沿った経営を行うことで、SDGsを実現させることができます。しかし、企業の中には、このガイドラインになかなか従おうとしないところも多いようです。

その理由としては、次の3つが挙げられます。

1つは、SDGsが必ずしも企業に利益をもたらすものではないという考え方があるからです。たとえば、SDGsが掲げる目標のうち、(2)〜(6)については、企業にとっては直接の利益とはなりません。しかし、(7)については、労働者の地位向上のために不可欠なものであり、すべての従業員が公平な条件で雇用されることが望ましいからです。また、(8)についても、企業活動が活発化することで、雇用機会が増える可能性があります。このように、企業にとっては必ずしもメリットがないわけではないものの、それでもなお積極的に取り組みにくい理由は、やはりコストの問題にあると思われます。

そこで、企業にとって負担にならない範囲で、できることから始めていく必要があります。まず、自社がSDGsを遵守していることを示すために、自社のホームページやパンフレットなどに、SDGsの理念や目標、実績などを掲載していくのです。

SDGsを実践している企業であることをアピールすることは、求職者へのメッセージとしても有効です。求人情報サイトなどを見ると、SDGs推進のためのボランティアを募集している企業は数多くありますし、そうした企業は、応募者に対して、SDGsの理念や目標について説明しています。

SDGsの理念や目標を、広く社会に発信することはとても大切なことです。それによって、多くの人にSDGsを認知してもらうことができるだけでなく、企業理念を改めて確認したり、業務内容を見直すきっかけになったりするからです。

また、従業員に対しても、SDGsの理念や目標を知ってもらうことは大切です。なぜなら、従業員の意識を変えるためには、トップダウンよりもボトムアップの方が効果的だからです。

SDGsを推進するために取り組むべきことは、ほかにもまだまだたくさんあると思います。しかし、SDGsを推進する上で重要なのは、あくまでも企業活動としてできることであり、それができないのであれば、無理してやる必要はないということです。

SDGsを実践することによって、企業の業績が上がることもあるでしょう。しかし、SDGsはあくまで手段であって、目的ではありません。SDGsを実践することにこだわりすぎて、本来すべきことを見失わないようにすることが何より重要なのです。

4 SDGsを実現させるために、企業のアクションは?

では、具体的にどのようなアクションを起こすべきか。

SDGsを実践するためには、次の3つのことが特に重要だと考えられています。

(1)企業と社員のコミュニケーションを強化すること SDGsを実践するために最も有効な方法は、社員教育を通じて、SDGsの理念や目標、実績などについて、正しく理解してもらうことでしょう。

SDGsは、単なる理想ではなく、世界中どこでも達成可能な具体的な目標なので、社員教育を通じて、社員一人ひとりの心にSDGsの理念を植えつければ、必ず浸透させることができるはずです。

また、SDGsの推進には、社員同士のチームワークが欠かせません。そのためにも、定期的にミーティングを行い、お互いの考えを共有し合うことが不可欠になります。

さらに、全社的なSDGsの取り組みを進めるためには、社内にSDGs推進委員会を設けるとよいでしょう。ここで、各部門長などの上層部によるPDCAサイクルが確立されれば、その部署内で改善案を検討して実行に移すことが可能となります。

(2)生産現場における環境整備 これまで述べてきたとおり、SDGsを実践するには、できるだけ早い段階から環境を整備しておく必要があります。とくに、(1)の生産現場での環境整備は急務と言えるでしょう。

それはなぜかと言いますと、環境問題というのは、実はさまざまな分野にまたがっており、非常に広範囲にわたって対策が必要とされているからです。たとえば、製造業の場合、原材料調達・加工・物流・販売などの過程で、環境汚染が発生する可能性があります。また、製造工程での化学物質の使用量を減らすことは、コストの削減につながるだけではなく、品質の向上や安全性の確保にもつながります。

しかし、それぞれのステップにおいて、何をどうすればいいのかわからないという状態に陥っている場合も少なくないのではないかと思います。そういう場合は、外部の専門家に相談すると良いでしょう。NPO法人やNGOには、幅広い知識を持つ専門家が数多く在籍しており、適切なアドバイスを提供してくれます。

(3)ダイバーシティ&インクルージョンを推進すること SDGsは、企業経営にとって、とても大きな意味を持ちます。なぜなら、SDGsを達成することによって、企業価値が高まる可能性があるからです。

たとえば、SDGsを実践することによって、女性の活躍推進が進めば、女性の管理職が増えることになります。その結果、女性が男性と同じ条件で働ける機会が増え、男性の活躍の場が広がるかもしれません。また、高齢者も働きやすくなるため、労働力人口の減少を防ぐことができます。

SDGsを達成することによって、企業の生産性向上や売上増加が期待できるのです。

ただし、SDGsは、単にSDGsを達成するだけでは不十分です。

SDGsは、企業経営の土台となる価値観そのものを変えなければなりません。つまり、すべてのステークホルダー(利害関係者)に対して公平かつ公正な企業活動を行っていくことです。そのためには、まずは経営陣が自ら率先して行動し、SDGsの理念や目標を体現していくことが求められます。

SDGsの理念や目標は、決して画一的なものではありません。しかし、SDGsの理念や目標を具体化し、それを文書化したことによって、企業活動がより良くなることは間違いないでしょう。

SDGs実践の留意点

SDGsを実践するうえでは、次の4つのことに留意する必要があります。

1 SDGsの理念や目標を明確にする

SDGsの理念や目標を明文化することは、企業理念の確立や業務内容の整理・体系化に役立つだけでなく、社員教育を通じて、SDGsの理念や目標について理解を深めることにもなります。

2 SDGsの理念や目標を実現するための戦略を立てる

SDGsの理念や目標を実現するには、どのようなビジネスモデルを構築していくべきかを考える必要があります。

3 SDGsの理念や目標を社内外に発信していく 

SDGsの理念や目標については、社内外へ積極的に情報発信することで、多くの人に理解してもらうことが重要です。

4 SDGsの取り組みを継続的に行う 

SDGsの取り組みを継続するためには、PDCAサイクルを確立することが重要です。PDCAとはPlan(計画)→Do"(実施)→Check(評価)→Action(改善)の頭文字を取ったもので、事業活動の進捗状況を確認するためのマネジメント手法です。

たとえば、経営層がSDGsの理念や目標を理解しているか確認するために、定期的に社内で会議を開くなど、定期的にチェックすることが必要です。

SDGs実践によるメリット

最後に、SDGsの実践によってもたらされるメリットを紹介しておきましょう。

(1)地球環境問題の解決 SDGsの実践により、二酸化炭素の排出を大幅に削減することができれば、地球温暖化防止に大きな貢献ができるとともに、環境汚染の低減につながります。また、廃棄物の削減やリサイクルが進むことにより、資源の有効利用が実現できます。さらに、SDGsの理念に賛同する企業が増えることで、経済の活性化にもつながるでしょう。

(2)社会課題解決 SDGsの理念や目標の実現に向けて、各企業が自発的に行動を起こせば、貧困問題をはじめとするさまざまな社会問題の改善にも役立ちます。

(3)4つのステークホルダーとの合意形成 SDGsの理念や目標について、各ステークホルダーと十分な議論を行うことで、SDGsへの共感と信頼を高めることができます。そして、SDGsの理念や目標に沿ったビジネスを行うことは、企業価値を高め、株主に対する責任を果たすことにもなるのです。

SDGsを実践するための具体的な方法については、本コラムの連載でもご紹介していきたいと考えています。

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