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vol.546「家業から企業へ。自走する管理職が育つ環境整備」


『矢場(やば)とん』を知っていますか?
名古屋めしを代表する味噌カツの名店です。
私も大ファンで、JR名古屋駅構内のお店でよくお弁当を買います。
といっても、名古屋駅で矢場とん弁当が食べられるようになったのは、ここ2年くらいの話。
それまで矢場とんは、お店でしか食べられませんでした。
名古屋駅構内に矢場とんの弁当専門店ができた時は嬉しくて思わずガッツポーズをしました。

その矢場とんが、去る5月21日の日経新聞電子版に大きく取り上げられました。
見出しは、「名古屋の味噌かつ矢場とん、家業から企業に 初の中計で多角化へ」

矢場とんの変革

今までの矢場とんは以下のような会社でした。
・経営戦略を立ててこなかった
・出店計画なし=誘われた場所から選択
・予算枠なし=社長らが都度承認=意思決定遅い

それを変えるべく、矢場とんHDの現社長で創業家の鈴木拓将氏が、2023年、中部電力出身の奥村与幸氏を傘下の矢場とんの社長に招へいしました。

奥村社長の下、これからの矢場とんは、以下を目指す会社に変わりました。
・2024〜26年の中期経営計画を策定
・出店戦略=4店舗新設(三河地区など)。計30店舗
・法人営業強化=旅行会社などに弁当営業を強化
・通販向け商品を増産=セントラルキッチンを新設
・人財育成=個人に一部の権限を委譲
・投資額=3年間で40億円
・売上=現行の46億→60億円を目指す

こうした老舗の変革を日経新聞の記者は次のように伝えています。
「家業から企業に」

ここで注目したいのは「家業」と「企業」は何が違うのか、です。
というのも、弊社のお客様には「ファミリービジネス(同族経営)」が多く、自社のことを「家業」と呼ぶ若き後継者が少なくありません。
そんな彼らから「家業から企業になるにはどうしたらいいのでしょう?」との質問を、よく頂きます。
彼らには、家業が前世代のもので、企業こそが近代的な組織の姿に見えるのでしょう。そこで今回は私の考える「家業」と「企業」の違いを簡潔にお伝えします。

家業と企業の違い

まず「家業」とは、家父長制度の親父がそのまま経営者をやっていて、全員が親父の指示に従って動く経営形態の会社です。
特徴は、トップダウンで何事も進んでいく点です。

日経には次のように記されています。
「(矢場とんは)家業的な経営が創業者から続き、ルールを細かく決めなくても意思決定ができる組織体制だった。それでも業績は右肩上がりで、計画を立てなくても事業の成長が見込める環境だった」

しかし、店数が増え、社員数が増えてくると管理すべき対象が増えます。
品質、納期、サービス、材料調達、売上回収、資金繰り、採用・定着・育成、社員の勤怠、経営者の健康...
これらが足並み揃えてレベルアップしていかないと、どこかに亀裂が生じます。

品質が安定しないまま出荷してしまう...
納期遅れが多発する...
長時間労働が常態化して社員が離脱する...
アフターサービスに手が回らない...
これらの問題、クレームに迅速に対応できない...
などです。

そして、そうした事実を隠すために、ハラスメントやコンプラ違反が起きます。
こうして急成長する組織はいつしか没落してしまうのです。

企業への進化の鍵

そんな事態を避けるための方法は、身の丈に合った中間管理職を育てることです。
社長に代わり、現場で経営方針の実践を管理する「できる管理職」が育つ仕組みを作るのです。

管理職が育つ仕組みに欠かせない要素は2つです。
第一は「中期経営計画書」です。
中期経営計画書には、以下のことが書かれています。
「これから数年、何を目指すのか。具体的に何に取り組むのか。そのために各部が果たすべき役割と一人ひとりに求められている行動は何か」

これを読めば、いちいち社長の指示を仰がなくても、自分が今、何を求められているのかが分かります。
つまり「自分で考えて自分で行動し、アウトプットを出す」人財が育つのです。

が、そうして頑張った人もその頑張りが認められ、正当に評価されなければ、やる気を失います。
また、親父の好き嫌いや依怙贔屓などの情実人事がまかり通るようだとやる気を失います。
そうならないよう、「何をしたら評価される。昇進できる。給与が上がる」が制度化されている必要があります。

つまり、管理職が育つ仕組みに欠かせない第2の要素は「人事評価制度」です。
これが整っていたら、自分の評価や給与をアップするために「自分で考えて行動し、会社に貢献する成果を出す」人財が増えるでしょう。
管理職ともなれば、可愛い部下に対し「あなたをワンランク上の役職に推薦したいから、今期頑張ってこれだけの成果を出してほしい」と動機づける人もいるでしょう。

まとめ

このように、「中期経営計画」と「人事評価制度」。この2つの経営ツールが環境整備されると、人は自分で考え自分で行動する、いわゆる「自走する社員」へと進化します。

そうすれば、親父の顔色を窺う必要はありません。 つまり、家業から企業に進化できるのです。 矢場とんは、経営者が代わることで ツールを整え、進化へと舵を切りました。

名古屋発の外食産業と言えば 「コメダ珈琲」ですが、こちらも同様に 経営者が代わり、家業から企業に進化しました。 そしてカフェで寛ぐ名古屋文化が日本中に受け入れられ、 全国第3位のカフェチェーン店へと成長しました。

あなたの会社では、「中期経営計画」と 「人事評価制度」は整っていますでしょうか? まだの会社はしっかり整備しましょう。

そして、自走する中間管理職を育てていきましょう。

実践に役立つ動画の解説

このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。

質問項目

  1. 家業から企業に変わるときに、経営者は外部から招いた方が良いのでしょうか?

  2. 家業から企業に変わることに反対や抵抗が起きることはありますか?

  3. 家業から企業に変わるべき瞬間は、規模の拡大以外にもありますか?


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