尻が青い子一等賞

 彼氏いる?とか彼氏欲しくないの?とかって聞かれるたびに、私は懇切丁寧に聞かれてないことまで答える。今はいいかなって思ってます。とか、まああんまり欲しくはないんですけど。とか、好きでもない人となんとなく付き合ってみるっていうのも性に合わないし。とか、聞かれたことの三倍くらいの情報を相手に与える。だけどこれらも本当は正確じゃなくて、比較的当たり障りのない表現を使って会話を続けている。致命的に面倒な人間だということがバレないように。

 正確に、歯に衣を着せず、言葉を尽くしていうなら、情緒が安定していて依存させてくれる人、ご飯を作ってくれるか、洗濯物を干してたたんでくれるか、コーヒーを淹れてくれるか、いつも冷たい紅茶が冷蔵庫に常備されるように取り計らってくれるかそのうちのどれかをしてくれてる人、私が気まぐれに家事をしてもしなくても寛容な人、放っておいてほしいときには一切の干渉を断ち、また私の気が向いたら構ってくれる人、私が散歩行こうとかコンビニ行こうとか飲みに行こうとかご飯行こうとか旅行行こうとか言ったら、にこにこしながら付き合ってくれてる人、だけど私ばかりが誘うのもつまらないのでそちらの方からも時折どこかに行こうと誘ってくれてるひと、たとえその誘いに乗るのと断るのがが五分五分だったとしても特に嫌な顔をしないでいてくれる人、なら付き合いたい。

 女だろうが男だろうがそんなことはどうでもいいけど、できればセックスは求めないでいてほしい。重いものを持ってくれるとか、お金があってブランドものを買ってくれるとか、ご飯を奢ってくれるとか、端正な顔立ちとか、友達が多いとか、車道側を歩いてくれるとか、おしゃれとか、高学歴とかそんなこともどうでもいいの。ただ縦にも横にも大きな人だと素敵。それをひっくるめて「彼氏欲しい」という表現になるならその通りです。

そんなこと言ったってこんな人は世界中どこ探したっていやしないし、こんなものを他の人間に求めるのはあまりにも失礼だ。第一これはいい人ではなく、私にとって都合のいい人にすぎない。

だから恋人は全然欲しくない。この言い方は少し語弊があるけれど、やっぱり全然欲しくない。いつか欲しくなるのかも。もしかしたらずっと欲しくないのかも。でもこういう人でないと一緒にいたくないから(そしてこんな人は存在しない)、やっぱり私には必要ない、恋人なんてもの。

 【P.S.】あと勝手にヘテロだと決めつけて話しかけてこないでほしいし…。私はまだ私のセクシャリティを決めかねてるから。たとえ本当に私がヘテロだったとしても、決めつけられるのは御免だわ。っていうのも伝えると « 面倒な女 »と捉えられるので言わないけど、こんなものが面倒だと捉えられるって考えちゃって口を噤む状態に私が置かれてるのが、少し悲しい。

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