はじめての暴力:毒親エピソード③

娘はブランコが大好きだ。乗せて揺らしてあげると大きな口を開けて全力で喜びを表現する。そんな娘が乗ったブランコに近づこうとしたよちよち歩きの子。とっさに止める見知らぬママさん。それを見て思い出すエピソードがある。

きっかけはブランコ

私は5歳。3つ下の妹と、父親と公園来ていた。まず大好きなブランコで遊ぶ。たくさん漕いで、満足して、さあ次の遊具に向かおうと歩き出した時…

Piko、止めろ!!

という父親の怒鳴り声と、背後でガンッという音がしたのが同時だった。離れたところにいたはずの妹がまだ揺れているブランコに近づき、硬い台座が頭に直撃したのだ。倒れている妹に私が駆け寄るより早く、父が妹を抱き上げた。激しく泣く妹。

父は妹を抱いたまま私に歩み寄ると、無言で私の右膝を蹴り上げた。

思い出した記憶

大人になるまで、蹴られた事実もそのときの気持ちも忘れていた。思い出したときのことを書きたい。

じんじんした痺れのような痛みが右膝に蘇る。と同時に、何が起きたのか分からず、ただぼぉーっとするしかなかった蹴られた直後の自分の映像が頭の中に流れ込んできた。

なんで膝が痛いの?パパがやったの?なんでもないことのように振る舞わなきゃいけない、痛い、と知られたくなかった。私を支配していたのは、何故だか分からない猛烈な恥ずかしさだった。

蹴られたその日

公園の帰りはパフェを食べさせてもらった。ブドウが乗っていたと思う。私はそれをニコニコしながら食べた。ちょっと高い椅子に座っていて、脚がプラプラするたびに痺れる。

家に帰って母の顔を見ても何も言えなかった。自分が悪いことをしたような、見つかってはいけない秘密を抱えている気持ちだった。夕飯はローテーブルで正座で食べるのが当時の我が家の習慣。痺れた膝のせいで正座ができない。お風呂は妹と母と3人で一緒に入る。服を脱ぐと真っ赤に腫れた右膝。母は何も言わなかった。

暴力の理由

妹がブランコの柵の中に入ったのを止めなかったから、だそうだ。止められたらよかった。幸い妹は大事に至ることなく、打撲で済んだ。あのときもっと早く後ろを振り返っていれば間に合ったかもしれない。もしかしたら自分は嫌な子だから、間に合ったのにわざと助けなかったのかもしれない。なんてことをしてしまったのか。誰にも知られるわけにはいかない…そして私はこの日の出来事を綺麗さっぱり忘れてしまった。パパは怒ると怖いけどいつもの大好きなパパのままだった。

暴力の理由は、大人になって記憶が蘇った時に本人から直接聞いた。妹の頭にブランコが当たった瞬間、頭に血が上って我を忘れ、大人の男の力で、本気で蹴り上げたんだそうだ。

今となって思うこと

いやまず親が目を離すなよ、と言いたい。ブランコの柵の中に入らないように、ちゃんと見てなよ。でも。もし可愛い娘の頭にブランコなんて当たったら、私だってパニックに陥るかもしれない。もし、娘と同じように可愛らしい下の子が生まれたとして、その子の頭にブランコが当たったら?その時娘が私よりも近くにいたら?その時私は娘を責めるんだろうか…

そんなこと考えて、2人目妊娠に踏み切れないでいる。




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