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成功する子 失敗する子 ― 何が「その後の人生」を決めるのか(著者:ポール・タフ, 訳:高山真由美)

人生における「成功」とは何か?好奇心に満ち、どんな困難にも負けず、なによりも「幸せ」をつかむために、子供たちはどんな力を身につければいいのだろう?神経科学、経済学、心理学…最新科学から導き出された一つの「答え」とは―?アメリカ最新教育理論。(Amazon内容紹介)

本書は、人生における”幸せ”を掴む為、幼少期の子供教育に焦点を当てた話を展開している。話の中では、読み書きや学力のようなIQで測れる認知能力に対し、やり抜く力・好奇心・自制心のような数字で測る事のできない非認知能力にスポットを当てられているが、そこで紹介されている数々の事例がとても興味深い。

例えば、ストレスに満ちた環境で育った子供の多くが、集中することやじっと座っていること、失望から立ち直ること、指示に従うことなどに困難を覚える。これは、脳のなかで幼少期のストレスから最も強く影響を受けるのが前頭前皮質だからであり、前頭前皮質は、自分をコントロールする活動、感情面や認知面におけるあらゆる自己調節機能において重大な役割を果たしているからである。

また、「ステレオタイプの脅威」という現象をつきとめた実験では、知的な、あるいは身体的な能力を試すテストのまえに帰属する集団に関係することがらをほのめかされると、テストの結果に大きく影響するという。プリンストン大学の白人の学生がミニゴルフの十ホールのコースを回るまえに生まれつきの運動能力(彼ら自身、自分にあまりないと思っている能力)を試すテストであるといわれたケースでは、戦略的思考能力(持っていることに自信のある能力)のテストであるといわれた白人学生のグループよりもスコアが四打数悪かった。黒人の学生については効果は正反対で、戦略的思考のテストであるといわれたグループのほうがスコアは四打数悪かった。これは、「白人は運動能力が低い」「黒人は知的でない」といったステレオタイプを自分も踏襲してしまうのではないかと不安に思っていると、より悪い結果が出てしまうというものである。

こうした非認知能力にまつわる実験データが本書では数々紹介されているが、個人的に一番心に残ったのはこの箇所であった。それは、非認知能力が高いが低かろうと、結局は挑戦する事なしに成長する事はできないからだと思うからだろう。

「若者の気質を育てる最良の方法は、深刻に、ほんとうに失敗する可能性のある物事をやらせてみることなのだ。ビジネスの分野であれ、スポーツや芸術の分野であれ、リスクの高い場所で努力をすれば、リスクの低い場所にいるよりも大きな挫折を経験する可能性が高くなる。しかし独創的な本物の成功を達成する可能性もまた高くなる。やり抜く力や自制心は、失敗をとおして手に入れるしかない by ランドルフ」


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