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自分のトキメキを大切に一歩ずつ進んでいく-イラストレーターSaki Morinaga-

vision trackでは昨年、見る人の「心を動かすイラストレーター」との新たな出会いを求めて、「vision track所属イラストレーター / 公募プログラム」を実施しました。選考基準は「自分にしかない『らしさ』を起点にしながら、多くの人の『好き』に応えられること」。300名以上の応募者の中から7名のイラストレーターが所属に至りました。
より多くの方に7名の魅力をお伝えするため、今月から1名ずつインタビューをお届けしていきます。
第1回は、何にもとらわれない自由で愛らしいイラストで多くの人の心をつかむSaki Morinagaさんにお話を伺いました。普段のお仕事の様子や今後の展望、意外な一面まで、魅力的な飾らない人柄もたっぷりと伝わるインタビューになりました!
ぜひ最後までお楽しみください🐻


クリエイティブ企業の営業からイラストレーターになるまで

ーイラストを描き始めたきっかけや、イラストレーターとして活動するようになるまではどんなお仕事をされていたのでしょうか?

絵を描いたり美術館に行くのが好きな母の影響もあり、子どもの頃から絵を描くことは好きでした。大学では英語を専攻していたのですが、広告づくりに魅力を感じて広告系の企業に就職して、7年営業として勤めていたので、とくに絵の勉強はしていないんです。
営業として働きながらイラストを描いていたら、イラストを見た友人からInstagramへの投稿を勧められて。少しずつアップしていたら徐々にフォロワーが増えてきて、個人の方からウェルカムボートのお仕事とかを依頼いただけるようになったんです。だんだんそれが企業さんや展示の依頼に変わって、忙しくなってきて。仕事をしてる時間も惜しいなと思うようになり、独立を決心しました。

ーご友人がインスタでの発信を勧めてくれたきっかけは何だったんですか?

当時はiPadじゃなくてポストカードにイラストを描いて部屋にたくさん飾っていて、家に来てくれた友達が「欲しい!」って言ってくれたのでプレゼントしたりしてたんです。ある時、仲のいい友人から「私の友達で自分のイラストをインスタにアップしてる子がいるよ」って私にもすすめてくれて。その友達も東京に住んでいるので今でもよく会いますが、イラストレーターになった私を見て「私のおかげだね」って言ってました(笑)

vision trackへの所属は1つの目標だった

ー今回の公募プログラムに応募するきっかけと、実際に所属いただくことになっていかがですか?

地元の福岡で活動されているisayamaxさんの展示に行ったとき、独立するかどうか悩んでいると話したら「いろいろ不安があるんだったら1人でやるんじゃなくてどこかに所属するのも選択肢の1つだよね」っていうアドバイスをいただいて。vision trackのことは元々知ってはいたんですが、その中でisayamaxさんからも名前を聞いたんです。
ただ、その時は公募もされてなかったので、いつか入れたらいいなくらいに思っていました。
今回の公募のお知らせを見て応募させていただいたんですけど、vision trackの所属イラストレーターになることを目標の1つにおいていたので、それが叶ってすごく嬉しい気持ちで今はいます。

やりたいことリストを叶えていく達成感

あおぞらブルワリー「BREEZY WEEKEND」ラベル
醸造から携わりました!(写真:本人提供)

ーすでにたくさんのクライアントワークを経験しているSakiさんですが、転機だったり印象に残っているお仕事はありますか?

1番は、あおぞらブルワリーさんのビールラベルのお仕事ですね!
イラストを仕事にしようと思い始めた頃、すごくおしゃれなデザインのクラフトビールブランドを見て、自分がお酒好きなのもあり、いつか自分のイラストもこうやって形にできたら幸せだなと思ってたんです。
福岡での個展にたまたまクラフトビールショップのオーナーさんが来てくれた時、「イベントで新しいクラフトビールを作る」と聞いたのをきっかけに、そういう仕事をしたいと思ってる旨を伝えたら「じゃあやってみようよ!」と、醸造から携わらせてもらうことになったんです。
自分でやりたいことリストというのをノートに書いてるんですけど、ビールに限らずお酒のラベルのお仕事をするっていうのは目標の1つとしてリストに書いていたので、それが叶ってすごく嬉しかったです!
ビールを飲んだイメージでイラストを描かせてもらってすごく楽しかったし、自分らしさも出せて、夢も1つ叶えられて、とても思い入れのあるお仕事になりました。

たくさんの出会いやきっかけになっている個展や展示の様子(写真:本人提供)

ー巡り合わせもあるけど、相談しやすかったり、一緒になにかやってみたいと思えるのはやはりSakiさんの人柄ですよね。ちなみにリストには他にどんなことを書いているんですか?

最初の頃はInstagramのフォロワー1000人とかグッズの商品化とか、そういう小さいことから入って。vision trackへの所属も書いてましたよ!
たまにそのリストを見返して「できてる!」って思うのが自分の中でも達成感になっています。

作業環境やクライアントワークの進め方

自宅の作業スペースと制作風景(写真:本人提供)

ー使っている機材や普段の作業環境はどんな感じですか?

クライアントワークはiPadで、Procreateというアプリを使って描いていて、個展などでオリジナル作品を描く時はキャンバスにアクリルで描くことが多いですね。
基本的には自宅で作業しています。仕事でも個展でも「なにを描くか」を考える時間を大事にしていて、家にいるだけだと思いつかないことも多いので、カフェに行って考えたり新しい土地に行ってみたりとか。外では思いついたら描く程度で、インスピレーションを見つけるために出かけている感じです。
自宅では映画を流して、音だけ聴きながら作業したりもしています。好きなホラー映画を流したり・・描いてるものは全然違うんですけど(笑)

ーラフから完成まではどんなイメージですか?

ラフは線画で描いたもので、カラーは案件次第です。要素の追加や修正をしてOKをいただいたら、またゼロから清書で描きます。私のタッチの場合、線がきれいになったりカラーで少し変わる程度で、ラフと清書は大きく変わらないと思います。
内容がしっかり決まっている案件の場合はもちろんそれに沿って描きますが、クライアントさんの方からざっくりとしたイメージでのオーダーの場合は、1つの案件に対してラフを3案ぐらいは必ず出すように心がけてます。
私が1番いいと思うパターン、クライアントさんやその先のお客さんをイメージして寄せたパターン、あとは全然違うパターンで私からの提案みたいな感じでっていうのが多いです。

ラフデータ                 完成データ

ーいくつかの提案から選べるのはクライアントさんからすると嬉しいですよね。
今は世の中的に疲れていたり色々な縛りや状況がある中、Sakiさんのイラストは「何かにとらわれてない、みんな自由な世界、こういう世界だったらいいのにな」という希望のようなものを感じます。そういった「Saki Morinagaさんらしさ」全開のものも案として出してもらえたらすごくいいなと思います。

ありがとうございます。そういう風に感じてもらえていたら嬉しいなって思います。

ーほかにもクライアントワークで大切にしていることがあれば教えてもらえますか?

最初に完成イメージをしっかりとヒアリングするようにしていますね。
ほかにも、清書後の修正が難しいのでラフの時点でよく確認して、お互いに効率良く進められるように自分なりに考えています。
きちんと要望を反映させつつ、自分らしさを出せる作品にすることは毎回心がけていて。とは言え、自分っぽくなりすぎて要望に沿ってないのも違うのでバランスは大事にしています。

ーそういった感覚は営業の経験も活きていそうですね!

営業時代はデザイナーさんに修正のお願いをたくさんしていましたが、自分が描く側になって悪いことしたなと思うこともあります(笑)
やっぱり最終的には商品を手に取ったり広告を見たりするお客様の反応が良いもの、ちゃんとそこを汲み取れるかどうかなのかなって思っています。

自分の「体験」を大事にしたい

インドやラオスで象と触れ合う(写真:本人提供)

ーイラスト以外に好きなものはありますか?

まずは海外旅行です。日本と全く違うような環境で生活を体験して、日本じゃ絶対できないようなことをしたいですね。
そう思うようになったきっかけに、「うわーっ」てすごく心が動かされた言葉があって。学生時代に今の夫から聞いた言葉なんですけど「人の価値を決めるのは持ってる物ではなく、何を経験し、何を見てきたかだ。だから自分は物にお金を使うより、経験する事にお金を使いたい」っていう話を聞いたときに、全然そういうお金の使い方できてないなと思って。
それからカンボジアにボランティアに行ったり、アジアを周遊したり、知らない世界を見るために、海外に出向くようになりました。
ラオスで象使いの免許を取ったりもしましたよ(笑)

ーすごく素敵な言葉ですね!まさに、本当にそう思います。それにしても、象使いはかなりレアな体験ですね!(笑)

象使いの免許が取れる村に着いてから説明を聞いてみたら結構危険だって分かったんですけど、もう後戻りはできませんでした(笑)
それと、陶芸も好きです。ものを作るのは何でも好きだったので、小さい頃から粘土で人形を作ったりしてたんですけど、個展のグッズを考えている中で、海外のお土産にあるマグネットみたいなものが作れたらかわいいなって思ったのがきっかけで始めました。
電子レンジで焼ける粘土で熊のちっちゃいマグネットを作ったら、お客さんに好評で自分的にもいいなって思えて。もうちょっと大きいもの作ってみたいなっていうところから、今いろんなものにチャレンジしてます。

マグカップやお香立てなどを陶器で制作(写真:本人提供)

ーSakiさんが思う陶器の魅力ってどんなところですか?表現としてイラストとは違いますか?

自分の描いた絵が立体になることで、絵で飾るのとは違う面白さがあるなって思ったのと、歪んだり思い通りに焼けなかったりもあるんですけど、それをお客さんから「この歪みはどうやって表現したの?」って聞かれて、それも味になってるんだって発見があって。ワイングラスみたいなもので、本来まっすぐの土台のところが曲がっちゃっててグラスとしてあまり機能しないだろうけど、そのお客さんが買っていってくれたんです。
陶芸はイラストと違って全然計算できないけど、自分では失敗したと思ったことでも人にいいなって思ってもらえるところが面白いなぁと思いました。

今の気持ちを大切に、より広い世界へ

ー今後チャレンジしてみたいお仕事はありますか?

まずはずっと目標にしている、大好きなPOPEYEの表紙を描きたいですね。また最近、藤井大丸(百貨店)のエントランスを担当したのですが、それを友達がたまたま見つけてくれて連絡をくれたのがすごく嬉しくて。もっと沢山の人に見てもらえるような商業施設や駅などのお仕事をしてみたいなって思うようになりました。

ー最後に、3年後の自分へ一言お願いします!

今以上に活動の幅を広げていてほしいと思います。今の自分が大切にしていることだったり今持ってる気持ちは忘れずに、描き続けていてほしいなって思ってます。
そのために今はもっと技術を磨けるように頑張ります!

インタビュー後記

自分の「トキメキ」を大切に作品を描き続けているSaki Morinagaさん。
純粋無垢な作品は、シンプルという言葉だけでは表現しきれない大きな強みがあります。
人それぞれの考え方を尊重できたり、新しい発見ができる彼女だからこそ、これからさらに飛躍していくんだろうなと感じるインタビューでした。


【Saki Morinaga プロフィール】
福岡出身、東京在住。
2020年からInstagramを中心に活動を始め、2023年よりフリーのイラストレーターとして独立。BEAMSや靴下屋などのブランドコラボや、広告、雑誌、パッケージ、地元企業のイラストレーションを手がける他、国内・海外での個展開催も積極的に行なっている。
可愛らしくも大胆で自由闊達な彼女の作品は、不思議と見ている人の気持ちを軽く、明るくさせてくれる力があり、各方面からの関心が高まっている。

<Saki Morinagaに関するお問い合わせはこちらまで💁‍♀️>

写真: きるけ。
インタビュー:村山ゆかり(vision track)
編集:増山郁(vision track)

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