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人材マネジメントの動向⑩

みなさん、こんにちは。
「人材マネジメントの動向」シリーズとして、コラムを再開します。
いろいろと考えてみましたが、あえてこのテーマとしました。
VCラボとして、顧客との接点を持ち始めたというのと、サービスの開発にあたり、ラボ内での議論がおもしろく(僕にとっては気づきを与えてもらえるありがたい場です)少しみなさんと共有したいという思いもあって、このシリーズの継続と、コラムの再開とさせていただきました。
まずは、人材マネジメントの動向⑩~⑫の3回でまとめていきたいと考えています。

そして、所長コラム⑨「目的と目標の違いとは」は、「セルフ・アウェアネスを高めよ」という僕に対するフィードバックでもあり、「思い」のマネジメント(Management by Belief:MBB)を読んで、自己を相対化したものを人材マネジメントの動向⑬よりコラムでまとめていきたいと考えています。
こちらは、準備が出来次第公開する予定です。

「人材マネジメントの動向⑨」からつなぐために、簡単に振り返ります。
経験学習で課題を持たれている人たちに貢献したいという僕の思いがありました。
この背景には、経営環境の変化(それに伴う人材不足)や働く人の価値観の変化という人材マネジメントに影響を与える変化があります。
「人材マネジメントの動向⑤」でふれた守島基博先生の「変革迫られる人材マネジメントと人事部」を参考にしています。
そして、僕自身の顧客への提供価値を創造するための学習プロセスを明らかにする作業(この段階は「現状」を明らかにするという意味になります)に入り、サービスを開発していくということで終わっています。

学習プロセスを明らかにする作業は、当初質的研究の方法論であるM-GTAを理解できる範囲で活用して明らかにしようと考えていました。
けれど、覚悟はしていたものの、M-GTAを短期で理解するのは難しくサービス開発も想定すると、別の方法を考えたほうがいいと思うようになっていきます。
さまよいながら、M-GTAの「研究を、社会活動と位置付け、その展開をデータの収集、データの分析、分析結果の応用に区分する」という考え方に辿り着きます(二度目の帰還です)。
「分析結果は、現実場面に応用されることでその有効性が評価されるという考え方」です。
「応用者」、つまり私たちが、「最適化(best fit)」するということになります。

具体的には、田中先生、中原先生が「新規事業創出経験を通じた中堅管理職の学習に関する実証的研究」で明らかにされた学習プロセスの最適化を想定しています。
田中聡・中原淳(2017)「新規事業創出経験を通じた中堅管理職の学習に関する実証的研究」『経営行動科学』30(1)

その学習プロセスの中で、今「メンバーの自主性を引き出すマネジメント観の獲得」という概念に着目しています。
ダクラス・マクレガー先生が言う「自分の意思決定やアクションを左右する仮定群」を「再考」することとも関連します。

関連して、ラボ内で、❛さきみ❜が人的資本経営について注意を向けさせてくれました。
チビさきみのこべや④『自分と対話してますか?』

リクルートの「人的資本経営の潮流と論点2022」で、「すべての人は、その人ならではの強みや才能、特性をもっている。
それらを未使用・未開発状態のままにせず、あらゆる人の強みを引き出し、活かしきる」というリクルートの考え方にふれたとき、僕に欠けている視点であり、実は違っていたのですが、そのときは、❛さきみ❜の考えと近いなとも思い、これを学習プロセスを明らかにする作業の一環として、マネジメント観を振り返る材料にしようと考えました。

しかし、すんなりとマネジメント観の振り返りに入れたわけではありません。
❛さきみ❜から「心理学や人材マネジメントなどの専門用語を紹介したいのではなく、VCラボの考えと結びつけた物語によって、VCラボをわかりやすく紹介したい。」というフィードバックがあったのです。
我に返ります。

これには続きがあります。
冒頭にVCラボとして、顧客との接点を持ち始めたという話をしました。
「管理職の成長を支援したい」と、所長の人脈から話が舞い込んできたのです。
アンケートも行われ、おおまかに研修をデザインすることになったのですが
研修をどう意味づけるか、悩みました。
概念の定義や、その領域の研究成果について説明することは重要だと思います。
でも、本当に伝えたいことは他にあるのではないか。
そのときに、思い浮かんだのが、先ほどの❛さきみ❜からのフィードバックです。
研修を意味づけるため、研究者の視点から、明らかになっている成果を伝えるのとは別に、一人のビジネスパーソンの視点から、関連する事例を示すことだと思ったのです。
研修の意味づけのため、本当に伝えたいことは僕の事例を示すことであり、
❛さきみ❜からのフィードバックに対する僕の答えも事例を示すことでした。

それでは、次回人材マネジメントの動向⑪で、松尾先生の「部下の強みを引き出す経験学習リーダーシップ」を手掛かりとして、マネジメント観の一部を「再考」します。
松尾 睦(2019)『部下の強みを引き出す経験学習リーダーシップ』ダイヤモンド社

https://www.diamond.co.jp/book/9784478108918.html


■ プロフィール
小西 定之(こにし さだゆき)
ビジョン・クラフティング研究所 シニアコンサルタント

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産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、証券会社で企業金融に従事、その後、独立系コンサルティング会社において人材マネジメント分野のコンサルティング業務(主に人事評価制度)に従事、そして株式会社ジャパンEAPシステムズで会社におけるメンタルヘルス対策のあり方について探究。

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