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仕事の成功に純文学というスパイスを

先月、第164回芥川受賞者に現役大学生の宇佐美りんさん【推し、燃ゆ】が選ばれた。大学在学中に受賞したのは過去に3名いて、宇佐美さんは21歳という史上3番目の若さで受賞したそうだ。

振り返ると、18年前の2003年上半期の芥川賞は、【蹴りたい背中】の綿谷りささん、【蛇にピアス】の金原ひとみさんの若き女性のダブル受賞で世間を賑わした。

綿谷さんの受賞時の年齢は19歳11ヶ月、金原さんは20歳5ヶ月で、綿谷さんの記録は未だに破られていない。

自分よりも4つも5つも年下の同世代の女性の活躍は刺激的で、2人の受賞作を掲載した『文藝春秋』を思わず手にしたものだ。雑誌としては異例の118万部を売り上げた。そのうちの1冊は私が購入した。

私は、起業を目指す前は、純文学が好きで、家の本棚には夏目漱石、武者小路実篤、太宰治、梶井基次郎らの本が並んでいた。純文学特有の淡々として落ち着いた文章の運びや人間の心のさまざまなあり方、言葉にならない感情の表現を読むことで、ひとりで内省できることが楽しみでもあった。

例えば、【吾輩は猫である】で有名な夏目漱石は、実は恋愛もののストーリーが多くて三角関係を扱った作品が多い。【こころ】、【門】、【三四郎】などがそれだ。

人の機微(きび)に触れる体験

純文学は、実際に恋愛をしていなくても、恋愛している時の人の気持ちを擬似で体験できる。しかも主人公だけでなく登場人物の何者にもなれて、さまざまな角度からその人の感情に立つことが可能だ。もちろん実際に恋愛するのが一番なのだけど。

人の機微に触れる経験が多いほど、対人関係において良好な関係を築くことができると思う。これをやると相手がどう感じるのか、自分もその人の立場になって考えることができる繊細さを学ぶことができる。

最近は、特定の彼氏や彼女がいない、もしくは作りたくないという若者が増えているそうだ。自分の思うままに過ごせるし、楽だという声も聞く。

何を選ぶかはもちろん自由なのだけど、仕事で成功しよう、しかもチームビルディングにおいて結果を出そうとするならば人の機微に触れる体験を避ける、という事は不利かもしれない。恋愛で幸せの絶頂を感じたり、想い人から別れを告げられ悲しみにふける、そしてそこから立ち上がって強くなったりすることで、人の気持ちがわかるようになったりしながら成長していく。その経験はすべて人生の糧になる。

もし今特定の相手がいないなら、たまにはビジネス書を横に置いて、純文学で人間の心のひだを学ぶのもいいかもしれない。


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