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「幻想郷世界 II」こぼれ話 (20) [終]

続きです。前回はこちら。

第1回から読まれる方はこちら。

※ 記事の特性上、同一動画へのタイムスタンプを用いたリンクが複数貼られます。あらかじめご了承ください。


第5楽章「FINALE」(続)

#100 偶像に世界を委ねて ~ Idoratrize world(続)

さあ、2周目のイントロからリスタートです。ここから大サビへと繋がっていきます。
この部分、初期版では1周目とそこまで差を出していなかったのです。

しかしこれだと、このあと変化していくということが分かりにくくて、ちょっと唐突に感じてしまうんですね。もっと予告が欲しい。
というわけで、高音のトリルを目立たせて、鉦にめった打ちをさせたのが次の版です。

これでもだいぶ良いですが、もうひと押し!ということで、最後の2拍に金管のトリルまで総動員したのが、完成版(74:34~)です。

次の部分(75:05~)ではテンポが遅くなり、トランペット3本ユニゾンという最終兵器が、サビを朗々と歌い上げます。

このへんの構成や裏のアルペジオは、チャイコフスキーの交響曲第5番や、

ホルストの「惑星」より「木星」を参考にしています。

クライマックスの部分は、当然のごとく結構な書き直しを伴う苦労がありました。まずは初期版から。

これは1周目のサビ(73:36~)をもとにして少し改変したものですが、いかんせん軽いですね。次へ進もうという場面ではなく、もう終わろうという場面なので、マッチしていません。
というわけで全体的に書き直したのがこちら。

前半は一歩ずつ踏みしめるような感じ、そして後半は初期版の推進力を維持した感じになりました。これを基本にして、ブラッシュアップを進めていきます。

この版では前半7-8小節目の打楽器が改善されて、煽りが強くなりました。

次の版では、後半の打楽器のリズムが変えられていますね。3-3-2から4ビートになって、前半に引き続いて踏みしめ感を重視する形になっています。

前半8小節目にダメ押しのシンバル1発が入りました。また、後半3-4小節目に弦と木管の上昇する音形を追加して、金管一辺倒の音色に少しでも変化を持たせようとしています。

ここで、後半のメロディラインが変更されて、5小節目でE音まで上がるようになりました。上昇のエネルギーを維持するためですね。
これでほぼできあがったので、最後に後半1-3小節目あたりの濁りを整理して、完成版(75:44~)としました。


CODA

恒例の長大なコーダです。今作も4分弱あります。

前作同様、まずは1楽章冒頭「宇宙巫女現る」の回想(76:21~)から始まります。その後は、ブルックナーの交響曲第8番を全面的に引用して組み立てています。

ただしバイオリンの8分音符は、「宇宙巫女現る」で出てくる東方動機の音形に変更され、対旋律として、各ラスボスのメロディが作品順に回想されます。これも前作と同様ですね。

「聖徳伝説 ~ True Administrator」から始まり、「亡失のエモーション」、「輝く針の小人族 ~ Little Princess」、

「ラストオカルティズム ~ 現し世の秘術師」、

「ピュアヒューリーズ ~ 心の在処」、「今宵は飄逸なエゴイスト (Live ver) ~ Egoistic Flowers.」、

「秘匿されたフォーシーズンズ」、

そして「偶像に世界を委ねて ~ Idoratrize World」と進んでいきます。

最後のEs-Durになる部分、初期版では底本としたブルックナーの交響曲第8番に倣って、ファンファーレにティンパニが入っていました。

しかし、これはあまり曲調に合わなかったので、完成版(79:24~)では抜いて、トランペットと木管のみとしています。

ラスト9小節は、コーダの複付点のリズム、東方動機の変形、そして「偶像に世界を委ねて」のAメロから取ったモチーフが組み合わせられます。

ここの初期版は、今とは違う形でモチーフを組み合わせていました。

ただこれだと、低音にある「偶像に世界を委ねて」のサビから取ったモチーフが野暮ったいんですよねえ。最後も最後という場面では、音符が上下に動きすぎてて合いません。

次の版では、モチーフの組み合わせは現行版と同じになりました。違うのは締めの部分で、この版では東方動機を使っているのですが、どうも「地上に落ち着いて終わる」感じがして、しっくり来ません。ここはやはり、宇宙に発散して欲しい。
ただ、これはお手本のブルックナーがそうなっているので、なかなか捨てられませんでした。

東方動機の上りをやめて、下りだけにしたバージョン。さっきよりは良いですが、やっぱり落ち着いちゃうんですよねえ。

もう一回、上りも含む形に戻しています。いろいろと小細工はしていますが、本質的な問題は未解決のまま。

ここでようやく、ロングトーンで伸ばす形に変わりました。これはブルックナーの交響曲第4番から取っているので、前作と同じところに回帰した、ということになります。

あとは最後の全音符の長さを調整して、完成版(79:47~)となりました。


おわりに

以上、100曲すべての振り返りでした。
作品を書いている途中に何を考えていたのか、とか、途中経過はどうなっていたのか、とかは、なかなか記録に残せないので、今回の振り返りはおもしろかったですね。
自分でもあとで読み返したら、また新たな発見があるかも。

今作もさまざまな人の力を借りて、完成にこぎつけることができました。
構想段階から完成まで付き合ってくれたしらは氏、動画制作についていろいろとアドバイスしてくれたyuu115431氏、動画へのイラスト使用を快諾してくださった絵師の方々。そしてもちろん、東方という世界を作り上げてくれたZUN氏に最大級の感謝を述べて、このシリーズを終わります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また次の作品で、お会いしましょう!


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