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「幻想郷世界 II」こぼれ話 (19)

続きです。前回はこちら。

第1回から読まれる方はこちら。

※ 記事の特性上、同一動画へのタイムスタンプを用いたリンクが複数貼られます。あらかじめご了承ください。


第5楽章「FINALE」(続)

#100 偶像に世界を委ねて ~ Idoratrize world

さあ、最終曲です。ここは原曲まるまる一周よりも時間を使い、たっぷり5分くらいかけて、全メドレーのクライマックスを歌い上げます。

最終曲の候補としては、「ピュアヒューリーズ」「秘神マターラ」「偶像に世界を委ねて」の3曲がありました。
このうち「秘神マターラ」については、他と比べてメロディのスケールがちょっと小さいため、まず候補から外れて、残りの2曲の比較に。
「ピュアヒューリーズ」もポテンシャルはじゅうぶんあったのですが、大サビでd-moll → h-mollと下降転調することの処理に困りそうだったのと、「偶像に世界を委ねて」のイントロが明らかにオーケストラ向きだったので、後者を選択。
「偶像に世界を委ねて」には大サビと呼べるようなループ直前の盛り上がりがなかったので、一周させてから主調のh-mollでそれを挿入すれば、華々しく終われそうだな、という見込みも立てられました。


さて、この曲は長丁場だったので、音色にバリエーションを持たせるための試行錯誤をしながら、アレンジを進めていった感じでした。
最終曲で盛り上がる都合上、どうしても金管が出ずっぱりになるので、そこにどれだけ彩色を施せるか、という挑戦でしたね。

イントロは先述したとおり、オーケストラ向けとしては「完璧」だったので、こちらは言われたとおりに全力でぶっ放すだけです。
とはいえ、初期版では大太鼓を入れすぎてしまい、

メロディの高貴さを損ねてしまったので、それを調整して完成版(71:03~)としています。

直後の推移部からAメロへは、初期版ではストレートに入っていました。

ここについては、新たにメロディが始まる前に一息つきたいよね、ということで、完成版(71:27~)では、ハープの下降グリッサンドによる間隙を追加しています。

Aメロは1回目がしっとり柔らかく、2回目がテンポを戻して快活に、という感じにしています。ともに後半部に対旋律が挿入されますが、これは2拍遅れのいつものですね。

この2回目、最初はもっと弦楽器を背景に沈めて、管楽器を表に出すつもりで作っていたのですが、

どうも響きがドライになってしまって合わないので、完成版(72:04~)では1回目に引き続いて弦楽器をしっかり鳴らす形に変えています。
金管が強く出てくればどうせ弦は裏に隠れてしまうので、こちらの方が音色にバリエーションが出ていいですね。

推移的なBメロを経てサビに入ると(72:49~)、弦楽器のトレモロを背景にホルン(+ユーフォニアム)が優勝するのですが、

今作はこういうコテコテなトレモロの場面、意外と少ないですよね。

続いてAメロがg-mollで再現されます。こちらは先ほどよりも速度感を重視して、対旋律をなくしていますね。
7-8小節目の8分音符の動き、初期版では普通に再現していたのですが、

これもよりストレートにしたかったので、チャイコフスキーのお力を借りて、完成版(73:12~)では下降音階に変更しました。

サビ2回目はg-mollのままですが、伴奏がだいぶ軽くなって推進力重視になっています。
初期版では、メロディがトランペットとトロンボーン主体であることがよりハッキリしていましたが、

完成版(73:36~)では受け渡しの回数を増やして、「エレクトリックヘリテージ」のときと同様にテクスチャを細かくしています。

サビ3回目、原曲でgis-mollになるところでは、突然E-Durに転調して古典派の交響曲のような打撃音が入ります。
初期版では途中で減衰する中途半端なものだったので、

完成版(73:58~)では、ちゃんと一段落するまでtuttiを維持させています。

このあとは短い経過句をはさんでイントロからループ、そしてラストの大サビへと進んでいきます。


続きは次回!


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