「幻想郷世界 II」こぼれ話 (9)
続きです。前回はこちら。
第1回から読まれる方はこちら。
※ 記事の特性上、同一動画へのタイムスタンプを用いたリンクが複数貼られます。あらかじめご了承ください。
第3楽章「VALSE」
さて、3楽章はワルツ、得意分野です。今回もたいへん良いできあがりになりました。
ワルツと題してはいますが、3拍子つながりでかなり遠いところまで離れて行ってしまうのも、いつもどおりって感じですね。
冒頭は、2楽章の最後の和音から間髪を入れずに始まりますが、バイオリンのハーモニクスだけが残ることで、前の雰囲気をリセットしています。
リズムの感じられない白玉音符ばかりが続くのも、その一環ですね。
また、この楽章では、従来のドミナント-トニックにとらわれない「ふわふわした進行」が意図的に使われています。
ここのcis-mollに入っていくとき(21:57~)の進行もそれで、A7sus4から半音階的な動きでC#mにふわっと着地します。
【2022/04/02追記】
冒頭について、参考文献を思い出したので、追記しておきます。
ホルストの「惑星」より「海王星」から、コリン・マシューズが追加した「冥王星」へのつなぎで、同様のテクニックが使われていました。
【追記ここまで】
#47 宇宙を飛ぶ不思議な巫女
いい曲です。最近の東方で3拍子の曲といえばコレ、って感じですね。
最初の曲ですし、オーソドックスなワルツで始まります。
後半(22:39~)から入ってくる対旋律は、1小節遅れでの反行型にしてあります。フルートとファゴットのユニゾンというのもたいへん良い。
#48 ロストリバー
そしてまだ2曲目なのに、いきなり不安定になります。
ほぼフルートだけしか鳴っていないところで、1音だけ挿入されるファゴットがたまらないですね。こういう音符、大好きです。
あとから入ってくるオブリガート(23:05~)も、ピッコロとバイオリンのユニゾンという何とも捉えどころのない組み合わせです。
後ろに添えられるチェレスタも含めて、前半は神秘的な雰囲気を出すように心がけた感じですね。
後半は普通のワルツが戻ってきます。このあとは、初期版では「魔界地方都市エソテリア」に繋がっていたのですが、
曲調が唐突に変わってしまうので、「ルーシッドドリーマー」をあいだに挟む形で、曲順を変更しました。
#49 ルーシッドドリーマー
前半はまたアクの強い感じになっていますねえ。
ここ(23:31~)はミュートトランペットにメロディを割り振っていることからも窺えますが、あんまり「音楽的に」やってほしくなかったので、「機械的に」というテンポ指定をつけています。
まあ、打ち込みでは結局どれも機械がやるので、あまり関係ないですが。
後半には半音上行していくベースライン(23:57~)が出てきます。
この形は盛り上げる力が強いので、5楽章とかでも頻用しているのですが、ちょっと使いすぎたかなあ、というのは反省点ですね。
#50 魔界地方都市エソテリア
変拍子。テンポを少し早めて、スケルツォの雰囲気になります。
この曲は、前作で使えていなかったトラックからのチョイスですね。
後半(24:35~)のtuttiになった部分は、盛り上がりのわりに打楽器や編入楽器の音符が少ないので、古風な感じになっています。
前作もそうでしたが、3拍子になるとなぜか古くさい鳴り方を志向したくなるんですよね(笑)
#51 トータスドラゴン ~ 幸運と不運
ひとつめの「山」です。
ここは主部の前半で妙にハマってしまって、微々たる差しかないようなボツ候補がザクザク出てきました。
せっかくなので、順番に全部出してみます。
まずは初期版。
骨子はこの段階でもうできています。
ただ、b-moll前半 → b-moll後半 → gis-mollと盛り上がりが単調増加になっているのが、気に食わなかったようですね。
チューバがずっと鳴っているのも、重たいですし。
後半のメロディから弦楽器が抜けて、少し抑えめになりました。
でも、まだベースではチューバが鳴ってますね。中途半端です。
後半のメロディに重なっていたテナーチューバが前半に移動して、音量差が明瞭になりました。ベースのチューバも後半からは抜けましたね。
ぶっちゃけこの時点で、もう完成版とあまり区別がつかないのですが、ここから迷走が始まります。
これはちょっと、前との差が良く分かりませんでした。
前半のテナーチューバが若干強くなってるかな?
多分このあたりから、弦の内声の刻みがずっと鳴っているのが問題だ、ということを認識して、それを間引いていますね。
後半の内声が寂しくなって、空虚な感じです。
さすがに後半が空虚になりすぎたので、戻したのかな? あと、メロディの楽器が補強されている感じがします。
これは後半に行き詰まりを感じて、いったんメロディとチェロのベースライン以外を全撤去してますね。
ここからもう一度組みなおしです。
組みなおした結果のコレがいちばん迷走してますね(笑)
チェロにあった分散和音の動きをビオラに移して、全体に上の方に音が固まってしまっています。
静かにしたいのに騒がしい感じ。
弦の内声の刻みを抜いて生まれた空虚感を、トロンボーンの信号と、メロディのハモリで解消したバージョン。
これでようやく方向性が定まりました。これにハモリをもう少し追加したのが、完成版(25:06~)です。
中間部に向けてのブリッジでは、ファゴットとチェロのピチカートによるユニゾンがありますが、これはベートーヴェンの交響曲第5番から拝借したアイディアですね。
続きはまた次回!
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