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【今日のコラム Log.17】わしの世界は夜が長い【涼奈】

文:涼奈

 わしの世界は夜が長い。

 ちょっとかっこよく言ってみた。異世界に住んでいるとか大層なことじゃなくて、わしの住んでいる場所が山を背負ってるから日の出が遅くて日の入りが早いってだけなんじゃけど。

 でもこれって結構面白くて、普遍の代表みたいな一日の長さ。これが実は住んでいる場所なんて一個の要素だけでびっくりするくらい変わっちゃうんじゃよ。日が昇ると起きて日が沈むと寝るなんて言うけれど、それじゃったらわしは半日以上寝ることになってしまう。ここに住んでたご先祖様はぐーたらじゃったのかな。

 夜が長いってことは必然的に夜と触れ合う時間も長くなるわけなんじゃが、それが理由なのか、わしは夜が好きじゃ。もしかしたら好きじゃからこんなところに住んでるのかも。暗くて、静かで、世界が明日に備えておとなしくしてる。考え事がはかどるから、いっぱい考えて押しつぶされそうになったり、音楽に心がこれでもかってくらいに揺さぶられて泣きそうになったり。夜にはそんな魅力が詰まってる。ほら、夜が他の人よりも長いってちょっと優越感じゃない?

 話をちょっと戻して、わしにとっての当たり前が実はずれていた、なんてことは他にもあって、わしは生まれつき色の見え方が普通の人とちょっと違うらしく、苦労したことがないでもなかったんじゃよね。でも、わしに見えているのはわしだけの世界。そんな感じに考えてみたら、楽しくて仕方がなくなった。そもそも万人が全く同じように見えているわけがなく、それぞれがそれぞれの世界を見てる。そんな中で大きく違って見えるのって、なんだか特別。話は通じないかもしれないけど、変な角度から世界を眺めていられる。それに、おぬしらが言ってる赤ってほんとにそんな色してるのかな。

 まとまりがあるようでない話をだらだらしてきたわけじゃけど、つまりは、当たり前は当たり前じゃないよってこと。わしが生まれてから信じてきた世界と、隣にいるやつが生きている世界は、全く違うものなんじゃよ。夜の長さも、色も違う世界が無数に、それこそ生きている人の数だけあって、それが交わったり交わらなかったりして世の中は動いてるんじゃよね。そんな風に考えると、わしが今抱えている悩みなんて、他の人から見たらどうでもいい取るに足らないことだったりするんじゃろうな、なんて、今日ものんびりと昇ってくるお寝坊さんなおひさまを眺めながら思うのです。


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