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so.

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「so.(エスオー)」は、女子高のとあるクラスの一日の間に起こる出来事を、様々な時間、それぞれの視点から綴る群像劇です。
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2016年5月の記事一覧

【so.】川部 心[1時間目]

【so.】川部 心[1時間目]

 三条先生が出欠を取っていたら、右隣の岡崎氏が、私を挟んで左前方のおそらく神保氏の写真を撮った。ところ構わずシャッターを切る無神経さが苦手だが、何も言えない。その時間が過ぎるのをじっと耐えるだけだ。その時ふと、私が電車の中で裏サイトに書き込んだコメントの後に、何か書き込まれてはいないかと頭に浮かんだ。スマホを出して覗いてみると、案の定コメントが増えていた。

「終業式のアレでしょ」

「アレってな

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【so.】川部 心[2時間目]

【so.】川部 心[2時間目]

「J-MEN第一話!」

「ヒカリの兄妹が、面接を受けるシーンから、もう涙出そうだったよー」

 橘氏はお兄様がいる影響か、少年ジャガデオンもJ-MENも欠かさず読んでいるので、毎週月曜日の朝はJ-MENの話をするのが常だった。昨日は祝日だったからジャガデオンは土曜日発売で、その深夜にはアニメの放送開始だったから、先日の土曜日の充実っぷりったらなかった。

「最後にシノハラが」

「嘘! どこに?

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【so.】川部 心[4時間目]

【so.】川部 心[4時間目]

「川部氏、驚嘆いたしましたぞ」

 小ホールから教室への道すがら、荘司氏と歩いていた。さっきの卓球トーナメントで披露した私の実力を、心の底から賞賛してくれているようだった。しかしありがたいけれどそれを素直に受け止められない自分の自身の無さよ…。

「たぶんさっきのが私の学生生活のピークになると思います」

「そのようなことはありますまい」

「だといいですが…」

 実際、残り1年ちょっとの高校生

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【so.】和泉 美兼[始業前]

【so.】和泉 美兼[始業前]

 かったるい連休明けのだるさ。やってらんない1月の寒さ。太ももに挟まったスカートを引き抜きながら、わたしは長年の疑問を口にしてみた。

「なんで女の制服はスカートって決まってんだろね?」

 バスの後ろの方、二人がけの席にのりんと座って揺られている。車内は暖房が効いているとはいえ、バスに乗るまでの寒さに既にうんざりしていた。

「今年に入ってから、寒くね?」

 のりんはわたしの疑問をあっさり無視

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【so.】和泉 美兼[1時間目]

【so.】和泉 美兼[1時間目]

「おはよう!」

 1時間目が現代文になるたびに、逸見の馬鹿でかい声を聞かされて耳がびりびりする。おもむろにチョークを掴んでガッガッとすごい音を立てながら2文字の漢字を書きつけて、逸見はぶーちゃんを当てた。

「新藤、これなんて読むか分かるか?」

「どう…もう?」

「お前の好きな食べ物系の言葉だ」

「パン!」

 わはははは。そんなはずあるか。思わず声を上げて笑ってしまった。

「レモンと読

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【so.】和泉 美兼[2時間目]

【so.】和泉 美兼[2時間目]

 授業が終わると、すぐに厚着ののりんが教室を飛び出していくのが見えた。いよいよインフルエンザの症状が出始めたんだろうか。近寄りたくないなと思っていたら、つだまるが話しかけてきた。

「ねえ、さっきのさ」

「書き込んでみればいいじゃん」

 なおも不安そうに聞いてくるから、ぶっきらぼうに言い放った。

「このクラスの誰か?」

「なんでしょ。大体想像つくけど」

 わたしは後ろの席の直己に聞こえる

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【so.】和泉 美兼[4時間目]

【so.】和泉 美兼[4時間目]

 ちくしょう、直己にハメられたんだ。

「あたしが黒幕って何よ。あたしがやったってこと?」

 ヨシミの鋭い眼光と叫びが頭に蘇る。クラスで敵にしたらヤバい人間ナンバーワンを、わざわざ敵にするような事を言うわけないじゃないか。絶対に朝のホームルーム前に直己が言ってきたことだ。

「ヨシミ、あんな仲良かったのにおかしくない?」

 あの女、そんなようなことを吹っかけてきた気がする。

「ヨシミが殺した

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【so.】月山 綾[始業前]

【so.】月山 綾[始業前]

 震えるような1月の寒さでも鹿は営みを止めない。のそりのそりと霜を踏みながら歩く男鹿の角は切られている。

「あれ、綾ちゃんの友だちじゃないの?」

 杉枝姉ちゃんが指差した方向を見ると、遠くのベンチにまっさが座って何かを頬張っている。きっとマクガフィンズのありえない組み合わせのバーガーだろう。いつも「よりによって何で?」って組み合わせの新商品ばかり出してくるけれど、味覚がどうかしているファンに支

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【so.】月山 綾[1時間目]

【so.】月山 綾[1時間目]

「おはよう!」

 逸見先生のいつもの大声。これだけ声を張れるって事は、それだけ教師って仕事に熱意を持てているってことだろう。いつ頃から先生は、生涯の仕事を先生にしようと決めたんだろう。きっと私みたいに悩むことなくスパッと決められたんだろうな。
 先生は黒板に「檸檬」と殴り書きをして、その読みを問われた新藤さんは「パン」と答えたから、おもわず笑ってしまった。発想がすごいな。
 出席番号で当てられた

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【so.】月山 綾[3時間目]

【so.】月山 綾[3時間目]

「月山さん」

 階段を降りて部室へ行こうとしたら突然、委員長に呼び止められたからびっくりした。

「次は小ホールで卓球やるんですって。岡崎さんにも伝えておいてくれる?」

「わかった。ありがとう」

 グラウンドでサッカーのような悲惨なことじゃないんだ。きっとまっさは既に部室で着替えているだろうから、小走りで部室へと向かった。

「それ、いつの写真?」

 部室で制服を脱ぎながら、部室のパソコン

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【so.】月山 綾[4時間目]

【so.】月山 綾[4時間目]

「さびぃよぉー」

 体育の後、しばらく放心状態だったまっさは、やっと着替える気になったみたいだった。

「まっさ、早く着替えてよ。次、音楽室」

「わー、まじか。急ぐ」

 まっさは雑に着替え始めた。私は既に着替え終わっていて、ドアを開け放した部室の入口で立っている。早く音楽室へ行ってしまいたい。

「ぎゃー! 靴下も脱げた!」

 バランスを崩して素足で床を踏んだまっさは、その冷たさから悲しそ

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【so.】新藤 五月[始業前]

【so.】新藤 五月[始業前]

「行くよー!」

 キミが内野に声をかける。バッターボックスには1年の小林。まずはストレートを内角と外角の真ん中に交互に要求してみる。小林はそれを引っ張ったり流したりして器用に打ち分ける。

「遅い! もっと走ぇォラー」

 今朝も顧問の石堂の檄が飛んでいる。焼き過ぎたパンの耳みたいな肌の色をしているなといつも思う。

「次カーブ!」

 キミはそう宣言したけれど、フェンスの方を向いたまますぐには

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【so.】新藤 五月[1時間目]

【so.】新藤 五月[1時間目]

 逸見先生のおはよう砲が炸裂した1時間目の教室は、みんな「うるせえな」という気持ちで一気に団結したはずだ。チョークを握りしめて壁に殴りかかるかのように無言で文字を書きつける先生。檸檬と書かれた瞬間、わたしの頭の中にレモンパン120円の値札とぷりっとしたフォルムが現れた。獰猛なイノシシのようなずんぐりむっくりのあの形! すぐに開いてあるパンノートにレモンパンと書こうとしたら先生に檸檬の読みを突然聞か

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【so.】新藤 五月[2時間目]

【so.】新藤 五月[2時間目]

 キミとトイレへ行こうとしたら、ナオが付いてきてなにやら終業式のアレがどうとかタグっちゃんがこうとか言ってる。わたしは冬休み中に後輩から聞いた話をふっと思い出した。

「終業式のアレって、パン屋のことでしょ! 終業式なのに間違えてパン屋が来ちゃって、廃棄にするのも勿体無いからってことで、無料でパンをもらった奴がいるらしい!! それがタグっちゃんだったってこと!?」

「お前はパンのことばっかだな!

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