鱶みどり
「so.(エスオー)」は、女子高のとあるクラスの一日の間に起こる出来事を、様々な時間、それぞれの視点から綴る群像劇です。
1月半ばの連休明け。女子校のとあるクラスに湧き起こる騒動と、13年前の秘められた過去を、クラス全員の時間ごとに描写して解き明かしていく群像劇です。 青江 つぐみ書道クラス/弓道部 7/24生まれ しし座 始業前1時間目|2時間目|3時間目|4時間目|昼休み|5時間目 和泉 |美兼美術クラス/帰宅部 3/4生まれ うお座 始業前1時間目|2時間目|3時間目|4時間目|昼休み|5時間目 井上 |真書道クラス/弓道部 12/11生まれ いて座 始業前1時間目|2時間目|3時
「先生、ごめん、今なんて?」 私が尋ねると、宮本先生はハンカチで目尻を撫でながら言った。 「郷 義弓は、私の同級生なのよ。信じられないだろうけれど」 「信じられないっていうか、意味が分からない」 私がそう言うと、宮本先生は曖昧に笑った。 「そうよね。何があったか説明するわ。これは私の背負った業みたいなものだから」 先生は机へ振り向いて、その上に乗っていたマグカップを手に取ると向き直った。 「何か飲む?」 「いらない」 サヨが言う。 「私も大丈夫」
「いまからホームルームを始める」 三条先生は教卓から宣言した。私は自分の席に着いている。 「せんせー昼ご飯は?」 新藤さんがお昼ご飯について尋ねる。私は全くお腹が空かない。朝だって食べていない。自殺してから食事を摂るという行為に及ぶ必要がなくなってしまった。新藤さんは粘り強く先生と交渉している。やっと解決したと思ったら、これからクラスに聞きたいことがあると先生は言った。 「こないだ面談やったじゃないっすかー」 そう言ったのは和泉ちゃん。彼女はいつも反抗的だ。
「いまからホームルームを始める」 三条先生がそう言って、全校集会のあとにすぐホームルームが始まった。 「せんせー昼ご飯は?」 新藤さんが気になっていたことを聞いてくれた。 「このあと5時間目をその時間にする」 「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」 「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」 「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」 「そうはいかない。君たちに聞きたいことがあるからだ」 聞きたいこと。面談で聞いて
「いまからホームルームを始める」 教室へ戻り、三条先生が教卓の上から宣言した。わたしはまず大事なことを確認する。 「せんせー昼ご飯は?」 「このあと5時間目をその時間にする」 「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」 「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」 「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」 「そうはいかない。君たちに聞きたいことがあるからだ」 え。5分ってわたしとしてはかなり譲歩した数字だったのに。 「こ
「いまからホームルームを始める」 三条先生が教卓から声を上げて臨時のホームルームが始まった。早速、食物と空腹しか頭にない新藤五月が噛みついた。 「せんせー昼ご飯は?」 「このあと5時間目をその時間にする」 「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」 「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」 「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」 「そうはいかない。君たちに聞きたいことがあるからだ」 おや。てっきり人体模型落下事件につ
「いまからホームルームを始める」 三条が教卓の上から声を発する。深刻な表情をしているように見える。 「せんせー昼ご飯は?」 新藤さんが空腹を訴えた。 「このあと5時間目をその時間にする」 「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」 「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」 「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」 「そうはいかない。君たちに聞きたいことがあるからだ」 聞きたいこと…きっとたまきの起こした事件のことだ
「いまからホームルームを始める」 三条センセーが教壇から言った。 「せんせー昼ご飯は?」 早速ぶーちゃんが餌の心配をしている。 「このあと5時間目をその時間にする」 「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」 コンビニでなんか買ってきとけばいいじゃん。 「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」 「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」 「そうはいかない。君たちに聞きたいことがあるからだ」 長くなるのか、この時間
「いまからホームルームを始める」 壇上から三条先生が宣言して、5時間目へ跨いでのホームルームが始まった。 「せんせー昼ご飯は?」 さっちんが早速気になることを聞いてくれた。 「このあと5時間目をその時間にする」 「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」 「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」 「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」 「そうはいかない。君たちに聞きたいことがあるからだ」 うーん。私はお弁当を持っ
「いまからホームルームを始める」 三条先生は深刻そうな表情で言った。でも、教室へ入ってくるときにハセベのパンの袋を持っていたことに私は気づいていた。あたし達には真っ直ぐ教室へ戻るよう委員長に言わせといて、その間に自分はちゃっかりパンを買ってたんだ。狡いなと思った。 「せんせー昼ご飯は?」 さっちんが尋ねる。もし、さっちんにバレたら、三条先生は半殺しにされんじゃないかと思う。 「このあと5時間目をその時間にする」 「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」 「ハセベ
「いまからホームルームを始める」 三条先生が教卓から宣言してホームルームが始まった。 「せんせー昼ご飯は?」 新藤さんが早速昼食について問い合わせる。私も今日はお弁当を持ってきていないから、パンを買いに行けるのかどうかは気がかりだった。 「このあと5時間目をその時間にする」 「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」 「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」 「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」 「そうはいかない。
「いまからホームルームを始める」 三条先生がホームルーム開始を宣言して、お弁当が遠くへ飛んでいってしまった。お腹がすいたなあ。さっそく新藤さんがいつ食べられるのか聞いてくれたら、このホームルームが終わったら食べられるってことが分かった。じゃあ何をやるのかなと思ったら、みんなに聞きたいことがあるって言う。 「こないだ面談やったじゃないっすかー」 和泉さんが言うと、三条先生は答えた。 「年末の件はもういいんだ」 郷さんが死んじゃったことじゃなければ、さっきの人体模
「いまからホームルームを始める」 三条先生が壇上より緊張の面持ちで宣言する。早速空腹についての訴求を新藤氏は試みた。 「せんせー昼ご飯は?」 「このあと5時間目をその時間にする」 わたしは今朝コンビニエンスストアのオーゾンで購入した握り飯の昆布味とおかか味が無駄にならないことに安堵した。 「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」 毎日昼にパンの行商へやって来るハセベのパンを何度か購入して食したことはあるもののそれほど美味とは感じなかったため火急の時分以外は頼り
「いまからホームルームを始める」 三条が教卓の上から宣言した。 「せんせー昼ご飯は?」 新藤。たしかにお腹減ったなあとは思う。パン買いに行けないと困る。 「このあと5時間目をその時間にする」 「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」 「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」 「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」 「そうはいかない。君たちに聞きたいことがあるからだ」 長くなりそうだなと思ってウンザリした。 「
「いまからホームルームを始める」 三条先生が教卓から声を響かせる。さっきの校長先生のお話からの続きで、人体模型落下事件についてのお話なのかなと思った。 「せんせー昼ご飯は?」 新藤さんが先生に尋ねる。よくこの状況でお昼の心配ができるなと呆れてしまう。 「このあと5時間目をその時間にする」 「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」 彼女はまだ諦めない。お弁当を持ってきていれば、そんなことに思い悩まなくたって済むのに。 「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで
「いまからホームルームを始める」 三条先生が深刻な表情でそう言って、5時間目のホームルームが始まった。 「せんせー昼ご飯は?」 さっそく、さっちんが昼ご飯について確認する。わたしも今日はパンを買わないといけないから、それは少し気がかりだった。 「このあと5時間目をその時間にする」 三条先生は教室に入ってくるとき、小さな紙袋を持っていた。教卓の中にしまったらしいけれど、あれはどう見てもハセベのパンの袋だった。 「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」 「ハセベ