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自分はまだまだ精進が足りないので

とある百貨店で販売をしたとき、隣が北欧フェア会場になっていて、ふだん見かけないようなおしゃれなデザインの服や雑貨が並んでいた。

季節外れではあったが、とても暖かそうでかっこいい服をみつけ、値札を見たら25,000円、まぁそれくらいはするよなと思ったが、まぶたの残像に違和感を覚えて二度見したら250,000円だった。
デザインがすこぶるよいから手に取る人は多いが、単価数百円レベルの物産展会場の隣だからだろうか、どの人も値札を見ると口が半分開くか、体勢が10度くらい後ろにのけぞる。

うろたえないのはどんな人? と見ていると、現れたのは初老の女性。
あら、かわいい…あら、お値段かわいくない…と軽くいなし、払おうと思えば払えるお値段ねと言いながら結局買いはしなかったが、ふるまいも着こなしもゴージャスでホンモノだと思わせた。

もちろんこんな金額など珍しくない人も多いことは承知しているが、自分はまだまだ精進が足りないので、これください、とは言えない。
どころか、値札を見たときの自分の反応はどんなだったのだろうと、表情を作ったりして再現してみたりする庶民ぶり。

後ろに5度ほどのけぞりながら口を半開きにし、眉間にシワを寄せて目を見開いたところで、お客様と目が合って…そうだ、仕事中だった。
その顔のまま「い、いらっしゃいませ」。

今日も懸命に、1,000円の抹茶大福を売る。

(2019/5/16記)

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