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主婦サイクル、主夫サイクル、主ふサイクル

「今晩は牛かエビにでもしようかな」
朝、息子の弁当を作りながら、ふとそう思った。

***

休日だけキッチンで腕を振るうパパ。
ふだん家計を切り詰めているママからすると、え?この食材買う?となる。

ほらローストビーフおいしいだろう、パパが腕によりをかけて作ったのさ。

――いやいや、今日はクリスマスでもないし、あのね、ママだってビーフ塊買ってくればいつだって作れるけど、買わないだけだから。

そして子供が追い打ちをかける。

おいしい! パパ料理上手だね! いつもパパが作ってくれたらなぁ!

――ムカつく! たまにキッチン立っただけで子供から高得点稼ぎやがって! そらぁふだんと違うもの出せば子供は喜ぶに決まってるから!

もちろん休日も何もしないパパよりは百倍いいのだけど。

***

パパに買い物を頼んだら、やたらグレードの高いものを買ってきたり、珍しいものを買ってきたり。

――え? なんで400円もするキャベツ買ってきたの?

いやぁ、これしかなかったから。

――嘘つけ! キャベツは98円やろ!

そして家庭の平穏が乱れていく。

***

そういうパパたちは、多少見栄張りなところはあるかもしれないし、子供の得点稼ぎに走っているきらいもあるかもしれない。
少なくともママの目にはそう映るから、ムカつく!となる。

しかしそれだけではない(と思う)。
ふだんキッチンに立たないから冷蔵庫の中身がまったく頭に入っていない。
ここ数日どんな食材をどう使い、使っていくのかの予定を知らない。
何日前にどれを特売で買い、次はいつどれを買うかの計画も知らない。
ストックの食材をどう組み合わせれば一品生まれるかの基礎を知らない。

知らないづくしなのだ。
これでいきなり戦場に送られたら、目を引くレシピに従ってありえない高級食材を買い込み、ちょんと切ってちょんと焼くだけで子供がわぁ!と言ってくれるような料理に走るしかない(と思う)。

パパだって会社では綿密な事業計画に基づいて、会社の身の丈にあったプロジェクトを完遂し、評価されている(はず)。
料理や買い物だって、自分が主担当として取り組み、さまざまな計画や予定に基づけば、パパだってできる(はず)。
材料や知識、武器が足りないだけなのだ(たぶん)。

ママは、パパに1日だけ料理を頼めばローストビーフを作りがちということを分かってあげたらいいと思うし、パパは、ママが場当たり的に買い物や料理をしているのではないことを分かってあげたらいいと思うのだ。

***

かみさんの入院からまもなく1週間を迎える。
この間キッチンを預かり、古いものから使い、足りないものを揃えてきた。

3日目くらいからだろうか、冷蔵庫の全容を理解できたのは。
食品庫のストックにも気を配れるようになったのは5日目あたりだろうか。
1週間でどれくらい買い物したか、感覚的に意識に残っている。
主婦サイクルを主夫サイクルとして身につけたのだ。

そして今朝、冒頭に書いた「牛かエビにしようかな」に至る。
贅沢がしたいわけではなく、最近食べてないし、もちろん少し高いけどそろそろ食べ時では? というタイミングの問題。
主婦サイクル、主夫サイクル、主ふサイクル。

***

今日の息子の弁当はこれ。

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ちくわ磯辺揚げ、讃岐うどんの店に行くと無意識で必ずピックアップするほどの大好物で、一度作ってみたかった。
そういえば、小学生の頃の給食でも大好物だったな。
フライパンで作ったのでカラッとは揚がらず残念だったが、二切れほどつまんでみたらまぁ悪くはなかった。

(2022/6/15記)

チップなどいただけるとは思っていませんが、万一したくてたまらなくなった場合は遠慮なさらずぜひどうぞ!