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そんなことある? といまだに半信半疑

僕の名は難読だ。

姓は誰でも読めるが、名は読めない、らしい。
自分ではそう難しいとも思えないのだが、実のところ、これまでにヒントなしで読めたのはわずかに一人、中学の国語の教師だけだ。

少なくとも、よくある名ではない。
だから僕と同姓同名の人なんて見かけたことはない。
ただ一人を除いて…

***

京都で過ごした大学時代、自分が通う大学の付属病院を受診した。
そんな大仰なところに行ったのだから、それなりの病気だったはずだが覚えていない。

受付で問診票を出し、しばらく待つと「○○さん」と呼ばれた。
「○○さん、診察券をお出しください」
「今日が初めてなので診察券持ってないです」
「前に他の科でも受診されたことはないですか?」
「いえ、今日がホントの初めてです」
「おかしいですね…お調べしますので少々おかけになってお待ちください」

ん? いったい何がおかしいというのか?

待合のソファーに戻ってしばらくして、また呼ばれた。
「○○さん、ご本人確認のため、お母様のお名前をお願いします」
「△△ですが」
「ほらやっぱり! ご本人もお母様もお名前が一致しています。これでご本人の確認が取れました」

いやいやいや、確認が取れましたってあんた。
「いえ、そんなはずはないです」
「え? ここに受診歴があるんですよ?」
「いやぁ、ホントに初めてですって」
「ではご住所お願いします」
「えっと住民票があるのは、神戸市垂水区…」

そこで制された。
「すみません! 別の方のようです。申し訳ありません!」
「いえ、別にいいですけど」

ほら、だから言うたやん。
あとは淡々と初診の手続きに移ったが、僕にはモヤモヤが残った。
いや、ゾワゾワと言ってよい。

この世に、いや、この京都に、僕と同姓同名がいる。
しかも母親の名まで…

改めて言う。
僕の名は、少なくともよくある名ではない。

ひょえーーーーー!
こわーーーーー!

***

そんなことある? といまだに半信半疑だ。
あの受付の人、そういえばちょっと青白く透けていたかも…

ぎょえーーーーー!

(2022/1/24記)

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