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ヨダレヨダレ、やばいって
うまそうなイサキと目が合った。
今が旬も旬、最盛期、どピークの魚だ。
店でうまそうな魚に引き寄せられることを僕は「目が合う」という。
これまでにも何度か書いたから、そろそろ「目が合う」マガジンが誕生してもいいくらいだ。
鯛にも似た淡泊でうまい魚とは聞いていたが、それならと選ぶのはいつも鯛の方だった。
だからまだイサキは口にしたことがない。
そもそも、これまでに食べたことのない魚ってハードルが高い。
店に売られている時点でもちろん食用だから、海で見知らぬ魚を釣り上げて、えー! これ食べられるん? 毒あったらどうするん? こわいー! もう海に帰しちゃえ!と大騒ぎするときのようなことはない。
それでも捌き方、調理法、食べ方が一切分からないので、なかなか手に取ってカゴに入れるには至らないのだ。
「今日はイサキがお買い得ー! 煮つけ、塩焼きにオススメですよー! とくに塩焼きは香りが立ってたまりませんよー!」
店のおっちゃんが連呼する。
塩焼きかぁ、うーん、まずは生で試してみたい。
買うか。
買ってみるか。
——これ、刺身ムリ?
「…………新鮮ですよー」
うまく責任回避された。
黒光りする三重県産の1尾を連れ帰る。
丸々とした腹は優美でエロチックな曲線を描く。
![](https://assets.st-note.com/img/1717972193491-9UFy2GbHG2.jpg?width=1200)
腹を開けてみると立派な白子が2本、どーんと詰まっていた。
オ、オスだったのか…
エロチック撤回。
三枚に下ろし、刺身にする。
なんといっても「新鮮」と言っていたからな、あのおっちゃん。
脂の乗りがすごすぎて、身にやんわりと包丁が入る。
ヨダレヨダレ、やばいって。
それだけではあまりに食卓が淋しくなるだろうと丸アジも連れて帰って、こちらもサクサクさばいて刺身に。
さらには夏を感じる食卓にしたくてトウモロコシも連れ帰り、塩ゆでに。
いや、それではまだ足りぬとキャベツとキュウリの塩昆布和え、ナスの味噌炒め、イサキの白子の煮つけ…
![](https://assets.st-note.com/img/1717973314503-jUOWAHuYU6.jpg?width=1200)
つ、作りすぎた…
イサキめっちゃうまいやん!
これまで50余年の人生にイサキが一度も登場しなかったことを悔いた。
今回は皮を引いたが、次は湯霜造りにしよう。
肉は牛、豚、鶏、羊からさらに増やす機会がほぼないが、魚なら未知のものがまだまだ店に並んでいる。
これからいろんな魚を試せると思えば、残りの人生も捨てたものではない。
(2024/6/10記)
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