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僕は皆さんの優しい温もりに支えられている~新開地ハシゴ酒ツアーリポート~

あぁ、終わってしまった…
第3回へんいちリアル会〈新開地ハシゴ酒ツアー〉。

昨日はまたえらく暑い日だった。
そんな日に炎天下を歩きましょうツアーを計画したことを後悔。
それでも前日までと違って、かすかな風があったのがせめてもの救いだ。

今回、新開地は僕もよく知らないエリアと断りながらツアーを呼びかけたのだが、5名の方が手を挙げてくださった。

👨 Hana父さん
👩 Ruby✩さん
👩 カスミソウさん
👩 神戸のちーちゃんさん
👩 ちゃすよさん

(申込順)

主催者もよく分かっていないツアーに参加する――
いや、もう皆さんの勇気に脱帽だ。

第1部は新開地の歴史散策とハシゴ酒。
起点となるJR神戸駅に参加メンバーが集合した。

まずは駅近くのカフェに入って簡単な自己紹介。
続いてスライドを使って新開地の歴史を学ぶ。
(下の「<」「>」を使えばスライドをご覧いただけます)

何も知らずに歩けばただ「治安のよくない通り」という印象で終わるが、歴史を知れば今見えないものも見えてくる。
各自のスマホでこのスライドを開いてもらって解説。
よく分からないふわふわしたツアーの割に、この勉強会だけ近未来的。

いよいよツアーのスタートだ。

新開地のシンボルゲート〈ビッグマン〉。
赤と青のゲートにくりぬかれたシルエットはシルクハットをかぶったチャップリンだ。

チャップリンは言わずと知れた世界の喜劇王。
大の親日家でもあるチャップリンは、船しかない時代に何度も日本を訪れたが、2度目の来日では京都・奈良へ行く予定をキャンセルし、新開地を巡ったという。
活動写真館や大衆演劇座などが立ち並び、「西の浅草」として隆盛を誇った戦前の新開地に、喜劇王としてシンパシーを感じたのだろう。

当時の新開地がこれだ。

そして同じ場所を撮ったのがこちら。

今は〈シネマ神戸〉という映画館になっている。

はす向かいには大衆演劇の〈新開地劇場〉。

怪しげな雰囲気の簡易宿泊所(ドヤ)。
高度経済成長期には新開地近辺の造船や鉄鋼などに全国から日雇いの労働者が押しかけ、ドヤも50軒以上あったというが、今ではこの1軒だけ。

小さな建物なのに、部屋数は138もあるという。
なぜ? それは1部屋が1畳しかないからだ。
テレビ付きの部屋なら1泊1550円、テレビなしなら1100円という。
一度は泊まってみたい。

近くには〈ボートピア新開地〉。
ボートピアとはまた耳に優しい愛称だが、正式名は〈競艇場外発売場〉。
要するに、ボートレースのギャンブル場だ。
おかげで新開地には朝からカップ酒片手のおっちゃんたちがあふれる。

競艇に興味はないが、1階に展示されていたボートには興味津々。
70kgという軽さ、そしてこの薄さにびっくりした。

ハシゴ酒1軒目、ボートピアの隣にある〈冨月(ふうげつ)〉へ。
昼ひなかに頬を赤らめて店から出てくるグループを見て期待が高まる。

参加メンバーの神戸のちーちゃんさんが『あまから手帖』掲載店としてマークしてくれていた店だ。

店内のテレビはあたりまえのようにボートレースを中継。

壁にずらりと並ぶエレキギターはいったい何だ?

〈利き酒セット〉(600円)に〈バサ(牛の肺)〉(300円)。
初めてのバサ、何このグニョグニョの食感、めっちゃうまいんやけど。

あとで知ったが、この〈冨月〉、昔は焼肉屋だったそうだ。
メニューに焼肉やホルモンがやたら多かったのはそういうことか。
どうりでバサのこのうまさ。
900円でさらりと店を後にする。

さぁ次は?という時点ですでに第1部の残り時間が1時間を切っている…
え、なんで…
ちょっと勉強会に時間割きすぎた?
あ、そうだ、〈冨月〉へ行く前に〈新開地アートひろば〉という文化施設で開かれている「ニューおばけやしき」に寄ったんだった。

このおばけやしき…内容はネタバレになるので、「身構えず入るのがよい」とだけ書いておこう。

〈冨月〉の次に向かったのは、神戸現存最古の喫茶店〈エデン〉。

客船のキャビンを模した店内は、船大工に特注したという黒光りの調度品にあふれ、床がギシギシと軋む。
震災で倒壊しなかった奇跡を喜びたい。

このコーヒーのうまいことといったらない。
創業時代、他店の倍の価格で提供したというコーヒーは今やすっかり地域に愛され、他店と比べても安いくらい。

そしてここで占い師Ruby✩さんの恒例のワンポイント手相タイム!
ちゃすよさん、神戸のちーちゃんさんがRuby✩さんの言葉に深く聞き入り、2人とももう涙を流さんばかり。
占いであると同時にキャリアコンサルティングでもあると僕は感じた。

〈エデン〉の向かいには、聚楽館ビルが建つ。
新開地の象徴と謳われた〈聚楽館(しゅうらっかん)〉跡に、その聚楽館をまねて建てられたビルだ。
最近までラウンドワンだったが、コロナ禍を経てパチンコ店に。

昔の聚楽館はこちら。

どんな賑わいだったんだろう。

ここで第1部、あえなく時間切れ終了。
ハシゴ酒ツアーと銘打ったのに、立ち飲み1軒、喫茶店1軒とは…

新開地駅の改札にて、第2部から参加のメンバーを迎え入れる。
第2部は席に腰を落ち着けて打ち上げの予定だったが、変更して立ち飲み。
立ち飲み欲が収まらなかったのだ。

近隣漁港の入札権を持つという魚屋が直営する〈えびす大黒〉。
生中は219円、冷酒1合は439円と驚愕の安さ。

この小さなテーブルに大人6名がギュウギュウになって飲む、食う。
店の人からも、狭いので…とか、他のお客さんが通れないので…と何度も言われたが、もう仲よしの6人は離れられない。

ここまで順調にTwitterでリアタイツイートをあげてきたが、もうだんだんワケが分からなくなってきた。
シャッターを切る手許もおぼつかず、シャコ刺しは虫にしか見えないし、隣にブレブレで写った塩辛のようなものは何かすら覚えていない。

結構飲んで食べたが、6人で6000円とはいったいどういうことか。
新開地はどうやら昭和から時間が止まっているようだ。

少し散策を続け、〈神戸松竹座跡〉へ。
ここは落語や漫才などの演芸の繰り広げられた新開地きっての寄席で、昭和初期に大賑わいを見せたが、昭和51年閉館。

寄席の灯は、2018年にオープンした〈喜楽館〉に引き継がれている。

〈赤ひげ〉で打ち上げ。
朝10:59の開店から飲み客でごった返すという新開地の名店だ。

店の賑わいは言うまでもないが、壁一面にずらりと並ぶメニューは圧巻。
しかもどれもがたまげるほど安い。

むむ、そういえば冷酒を頼んだというのは写真を見て今思い出した。

どれだけ飲んでも食べても、ひたすら安い(ことしか覚えていない)。
皆でいっぱいいろんな話をした(が内容を覚えていない)。
レモン好きがバレて、皆が絞ったレモンを僕の皿に置くようになった(ことはよく覚えている)。

かくて心地よい酔いのなか、とうとう第3回リアル会〈新開地ハシゴ酒ツアー〉はお開きに。

第1回、第2回は、こうしたリアル会を開催することにまだ慣れず、緊張のし通しだった。
その場は楽しみながらも、終わればどっと疲れが出てくるような。

それが昨日の第3回はどうだ。
心の底から楽しんでいる自分がいた。
出会いを楽しみ、歴史散策を楽しみ、ハシゴ酒を楽しみ、会話を楽しみ。
参加者みんな、同じように楽しんでくれただろうか。

以前から新開地ツアーをやってみたいと思いながら今回実現に至ったのは、参加者でもある神戸のちーちゃんさんのこのツイートがきっかけだ。

神戸大学病院に術後の通院を続ける中、すぐ近くの新開地や隣の旧・福原遊郭が気になってふらりと立ち寄ったりしているさなかに、このツイート。
一気に新開地ハシゴ酒ツアーの企画が頭に組み上がった。

肝心のちーちゃんさんに声がけしてみると、もちろん参加します!と快諾。
僕の主宰するメンバーシップ〈神戸おでかけコース〉のメンバーでもあるちーちゃんさんは、自作のフリーペーパー「ち新聞」の第2号を今回のツアー特集にあて、その中にツアーマップを載せてくれると申し出てくれた。
事前に打ち合わせ、できあがったのがこちら(渾身の著作物のため、僕からは表紙の公開のみにとどめる)。

シワになってごめんなさい。活用の証です。

ツアーお役立ちのマップに昨日どれほど助けられたことか。
こうして準備から関わってくれるのがもう本当に嬉しい。

そのほか、ワンポイント手相鑑定だったり、郷里のおみやげだったり、皆さんが持ち寄られたものの温かさにウルウルの一日。
ありがとう、本当にありがとう!

僕は皆さんの優しい温もりに支えられているのだと実感する。
逆に僕も皆さんに何か提供できていたらいいな。

今回の参加者がもしツアー記事をあげてくれたら、ここに追記していこう。


👩 Ruby✩さん


👩 神戸のちーちゃんさん

僕は3月末の手術でふつうのものが食べられなくなり、かつて経験したことのない絶望に見舞われた。
わずかな奇跡が起きない限り、もう二度と皆さんと外で楽しい時間を過ごすことはないのだと思った。

そして半年が経ち、僕はこうして皆さんとうまい酒を囲めるようになった。
身体の神秘がありえない奇跡を起こしたのだ。
泣けるほどに嬉しい。
昨日集まった皆さんも快気祝いの乾杯をしてくれた。

あらためて今回ご参加いただいた5名に心からお礼申し上げたい。
皆さん、本当にありがとうございました。

(2023/7/30記)

チップなどいただけるとは思っていませんが、万一したくてたまらなくなった場合は遠慮なさらずぜひどうぞ!