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僕はトーマスではなくやえもんで育った

昨日、あつこさんが「きかんしゃトーマス」について投稿された。

長らく3Dアニメとして続いてきた「きかんしゃトーマス」に、新たに2Dアニメ版が出るという記事。
のっぺりした顔が、トーマスじゃないみたいと締めくくられている。

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その記事を読んで思い出したのは、僕がトーマスを見なくなった理由。

「きかんしゃトーマス」は1945年の『汽車のえほん』シリーズが原作だ。
日本が敗戦でうちひしがれているさなか、イギリスではこんな夢ある絵本が登場していたのだ。

第1巻は『The Three Railway Engines(邦題・三だいの機関車)』。

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エドワード、ヘンリー、ゴードンの3台が登場し、トーマスはいない。
今や断トツ人気のトーマスは当時は主役ではなかったのだ。

この絵本を映像化する企ては数々試みられたが、その多くは失敗し、TV化されたのは1986年というから、原作から実に41年後のこと。
僕が慣れ親しんだ実写版のトーマスの登場だ。

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1番ゲージと呼ばれる鉄道模型を使って撮影されている。
1番ゲージとは軌間(レール幅)45mmの模型のことで、日本で最もポピュラーなNゲージ(軌間9mm)の5倍もあるから、精密な作りが可能だ。

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トップハム・ハット卿は人形で一切動きがない。

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この実写版アニメはリアルな質感が申し分なく(模型や人形で撮影しているので当然だ)、原作者が何よりも大切にした架空のソドー島の世界観を忠実に再現していた。
日本では「ひらけ!ポンキッキ」内で1990年に放送が始まってちょくちょく見ていたが、その後、生まれた子供たちともよく見たものだ。

しかし2008年、事件が起こる。
模型を使った実写版の制作が終わり、3DCG化したのだ。

僕は中学時代に粘土の形を少しずつ変えながら撮るクレイアニメ、コマ撮りのストップモーションアニメを制作していた。
その苦労とできあがりの感動を知っていたから、CG化はショックだった。
もちろんCGにも苦労は尽きないだろうが、言ってしまえばCGはどんなムリな設定でも映像化できる。

あっという間に、トーマスへの関心を失い、まったく見なくなった。
当時8歳だった長男も、何これ?と言ったきり見なくなった。

あつこさんの記事を読み、そのことを思い出したのだ。

あつこさんファミリーは、3DCG版のトーマスに慣れ親しんだために、新しく制作される2D版に違和感を持たれたようだった。
僕は、実写版を模して作られた3DCG版に対しては、そうまでするなら実写版を作り続けてくれたらいいのにとしか思えなかったが、2D版となるとまったくの別物だから歓迎している。

このあたり、どのトーマスに親しんだかで大きく評価は分かれそうだ。

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日本にもある。
1959年初版の『きかんしゃ やえもん』だ。

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63年経つ今でも新本が手に入る、あまりに有名な超ロングセラー。
後生大事に持っている僕の愛蔵書(1972年版)の表紙を今朝スキャンした。

トーマスが邦訳され日本に紹介されたのは、やえもん発表の14年後。
顔つき機関車というある意味不気味なトーマスが日本で大成功を収めたのは、やえもんがすでに広く人気だったからといわれている。

もちろん僕はトーマスではなくやえもんで育った。

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トーマス、そしてやえもんに思いをいたすきっかけをくださったあつこさんに、心から感謝している。

(2022/6/22記)

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