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年賀状の卒業宣言は、年賀状でやらないほうがいいかな

年賀状に少なからず違和感を抱いてきた。

通常、親交のある人に宛てた私信というものは、
・自分)伝えたいことを書いて送る
・相手)受け取ってそれを読む
・自分)(必要があれば)伝えたいことを書いて返す
という流れを辿り、これが続けばいわゆる文通になる。
LINEなど今どきの連絡手段に比べると速度は格段に劣るが、やっていることは同じだ。

しかし年賀状は、
・自分)伝えたいことを書いて送る
・相手)伝えたいことを書いて送る
これが同時に行われ、それで終わり。

「最近どう?」「近況教えて」とあっても、年賀状の場合、それに答えるのは1年先になる。
そしてまた1年先には、互いに同時に質問を投げかけるのだ。

昨年、僕は「淡路島で地域活性化を手伝っている」と何名かに書いた。
今年は「6月に退職して惰眠を貪っている」と書いたが、入れ違いに「最近人気の淡路島! どんなことしてるの?」という年賀状を受け取った。
来年、僕は「再就職した」という年賀状を送り、「え? 退職したの?」という年賀状を受け取るのだろうか。

僕は年賀状廃止論者ではない。
季節の挨拶として年始にハガキを送る習慣はあってよいと思う。
ただ、用あって送る通常のハガキとは違って、年賀状はあくまで挨拶状だ。
そこに返答の必要のある事柄を書くから、ちぐはぐなことになる。
質問は書かず、自分の近況をただ書き添えるのがよいと思っている。

年賀状を終えたい人は「今年のこの年賀状で終わりにしようと思います」と卒業宣言を書き添えるのが慣わしのようになっている。
もちろん、断りなく出さなくなるよりはいい。

でも、笑顔の浮かぶような近況にあふれた年賀状を受け取ると、こちらから一方的に送りつけた卒業宣言がその笑顔を消したかもしれない、と心が痛くなる。
遊園地のデートで、ジュースを買って来てくれた笑顔の恋人に、いきなり別れを告げるシーンが脳裏をよぎるのだ。

年賀状の卒業宣言は、年賀状でやらないほうがいいかな。
僕が卒業するときは、春でも夏でもいい、相手が送ってくれた年賀状にきちんと答える形でハガキを送り、そこに卒業宣言を書こうと思っている。

(2023/1/3記)

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