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ファッションデザイナーとして働いていた頃の話

ファッションデザイナーというとみなさんコレクションを行っているようなブランドのデザイナーを思い浮かべると思います。
実際にはアパレル企業に勤めてそこの会社が持つブランドのデザイナーとして働いている人、しまむらみたいな大きな量販店の下請け企業にも各々デザイナーがいます。
私が勤めていたのは一昔前のアパレル企業、下請けみたいな小さな会社や中堅企業いくつか勤めた経験があります。
担当していたのは主に二十代女性向けのアパレル、その頃元気だった109系のブランドです。
平成のギャルブームで渋谷109では月間1億売るブランドがいくつもありました。
セールなんてお祭りのようでそれは楽しかった時代です。

そんなところに並ぶ服を作っていたイチブランドのデザイナー、当時はデザインMDという仕事をしていました。

そこに至るまでの過程は
とある美術短期大学の服飾科に入学、推薦入試を受験しましたが学校へ行って薔薇のデッサンをした覚えがあります。
もともと絵を描くのが好きでよく描いていたので、特別な勉強はしませんでした。

服飾学生時代


入学後は2年間ファッションに関する勉強と、短大だったので普通のお勉強が並行してありました。
ファッションの勉強だけしたい!という方は専門学校へいったほうが良いですね。
なぜその学校へ行ったのかというと、専門はダメという親の希望と受けたい授業があったからです。
2年次に山本耀司さんから直接指導が受けられる選抜クラスがあったのです。
ファッション業界でその頃すでに日本人レジェンドとして名高いヨウジヤマモトに会える!
そんなミーハー心でそこへ行きました。
入学してすぐ洋服原型パターンから展開パターンを作ったり、トワルの組み方、シルエット補正の仕方などの服を作る知識から、色彩学、デッサン、マーケティングなどなどなるほど確かに洋服を作って売るにはそういう勉強も必要だよねというお授業がさまざまありました。
色彩学などは苦手、というか嫌いで成績が悪かったです。
色の選択や配置は好き嫌いやインスピレーションでするタイプなので感覚的なものを数値や言葉にするのは私にとって大変なことだったんだと思います。
2年時になんとか選抜クラスに入れてもらって無事山本耀司さんのクラスも受けられ感無量でした。
忙しかったですが、基礎から服作りを学べた充実した2年間でした。
課題が出たり、共同制作の期限があったりで持ち帰って制作しての毎日でしたので合コンなんてもってのほか。
というか美大は合コンに誘わないという大学生の常識がありました。
確かに変わり者が多かったので正解だと思います。
その代わり女子ばっかりなのにいじめは存在しなかったですよ!
忙しくてそれどころじゃないし、皆んなが同じような目標を持っている前向きな空気感がありました。

初めて就職した大手下請けの会社

卒業して初めて勤めた会社ではその頃の109で一番売り上げの高いブランドの下請け企業でした。(今でもあるCで始めるブランド)
毎週大量のデザインを持って行ってその中から採用が決まったら制作して収める、みたいな形でひたすら腱鞘炎になるまでデザイン画を描いてました。
一日100枚レベルのデザイン画を全部ダメ、また来週、とポイされたことも少なくなかったです。
その会社では韓国への出張によく連れて行ってもらってたのが楽しかったです。
その頃の109の半分は東大門市場と南大門市場で出来ていたかんじ。
直接服を買い付けていたブランドもあるし、アクセサリー系はほとんど韓国買い付けの会社が多かったと思います。
私は生地の発注と買付に行ってました。
頭がついている鶏が丸ごと出てくる参鶏湯、生地が山盛りに置いてある上にお盆を置いてご飯を食べているおばちゃん、夜中の市場を走り回る5歳くらいの子供たち、日本と似てると思ってたけど日本と違う常識がある国なんだなとびっくりした記憶があります。

2社目自社ブランド


もう一つ勤めた会社は109に店があるブランドでした。
今度は下請けじゃない!企画部長にダメ出しされる数も減る!みたいな動機で転職です。
最初の会社ではもうモチベーションが限界でした。
自社ブランドならニーズを肌で感じられて、そのニーズに合わせた企画デザインができるのではと。
その会社は先輩に恵まれ、いい人ばかりでした。
シーズンによっては終電まで仕事することも多かったですが、あの時代だからできた?今でもそうなのかは不明です。
今企業デザイナーしてる人に聞いてみたいです。
というのも私が働いていた時代はまだPCやインターネットが一般的ではなかったので、ネットショップ黎明期で海外とのやりとりは電話とファックスでしたしデザイン画もオール手書き。
今では全てオンラインでできるでしょうからやりようによっては在宅ワークも可能でしょう。
市場調査も店舗を回るよりオンラインでSNSやオンラインを見たほうが参考になりそうです。
しかしよほど数を見ていないと生地の質感やボリューム感はわからないし、細かい部分の縫製やシルエットもやはり実物をかず見ないと想像では賄いきれない部分があります。
洋服を着るのはアバターではなく人間なので、やはり実物を見ないとわからないことって多いですね。
この会社ではMDアシスタントでした。
MD=マーチャンダイザーという名の雑用なんでもやる役でした。
デザイン、パターン、縫製する会社とのやりとり、プレス業務、店舗ディスプレイ、店舗マーケティング、、、
なんでもやることがとにかく楽しかったです。
特にあの頃は雑誌も売れた時代で、プレス業務では毎日のようにくるスタイリストさんがどんな服を選ぶのか見てました。
風間ゆみえさん、井関かおりさん、佐々木敬子さんなど有名なスタイリストさんがくるのが楽しみだったんですが特に白幡啓さんが好きでした。
着ている服も、選ぶ服も、出来上がった紙面も全てがかっこよくてとても楽しみでした。
白幡啓さん、あれから今でも好きです。

結婚出産で退職してしまいましたが、子育てがひと段落して改めて『服作りたい』とふと思って今に至ります。

洋服に関する仕事に着くには

ファッション関連の仕事には様々ありますが、その中でも洋服の仕事がしたい!と漠然と思っている人にはまず洋服の何が好きなのかを考えることをお勧めします。
一からイメージの中にある服を作りたいなら、服飾関連の学校に行くことが近道です。
オンライン上にたくさんの情報がある今の時代は自己流でできなくもないかもしれませんが、よほど手先が器用で立体感覚が優れている方でないとその感覚は掴めないような気がします。
経験者の指導があるかないかは大きいです。

洋服屋さんで働きたいなら特殊な経験もいらないでしょう。
興味と探究心は必要かと思います。
毎月雑誌を読む、洋服の仕組みや専門用語を勉強していたりすれば有利ですね。

セレクトショップのバイヤーは作る知識はいらないです。
しかしやはりたくさんの洋服を見たりきたりした経験がないといいものを選べないと思います。
センスというのは経験で磨くものですからとにかく触れること、ハイブランドから安い服まで何が違うのか?自分で感じる違いを理解することだったり、時代の風を感じることは常に必要です。

全てに通じで言えることは常に更新されていく情報を追って、シーズントレンドを追っていると一年があっという間のファッション業界。
駆け抜けるように仕事をすることになるかもしれません。
私の場合、定番ラインの継続販売でシーズンに振り回されない新しいサスティナブルなファッションを作りたい、という気持ちでやっています。


新しいファッション業界の扉が開き始めている現代。
これからが楽しみです。

Dress shop~garden~
相良

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