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腹の裏が疼くと思い出す優しさ

突然だが、生理痛とは何か、ご存じだろうか。

生理の数日前から痛む腹。否、通常便意もしくは下痢などで腹痛をもよおす場合を「腹の表」と称するなら、生理痛は「腹の裏」が痛む。医学的なことに疎くて詳細は不明だが、恐らくこれが子宮の位置なのだろう。子宮を手で握りつぶされるような痛みだ。

私はこの痛みを、半年前に知った。久々の更新となる本投稿は、初めて生理痛とやらに苦しんだ前職での冬のある日の優しさについてしたためたい。

そもそも、私は生理経験が同年代の女性に比べかなり浅い。元来初経が遅かったうえ、高校生になってすぐくらいから生理が8ヶ月来なかった。(甲状腺機能亢進症という病気だった。もし息が苦しい、生理が来ない、食事量は多いのに体重は減る、などといった症状があればすぐに甲状腺内科を受診してほしい)おまけに生理が来ても、ただ経血がナプキンに付着しているのみで、その他の症状が全くなかった。

時は過ぎ、社会人になった。私は驚くほど仕事ができないダメOLをしていて、毎日怒られていた。おまけに部署にいる女性は私一人。しかも九州。自分が「舐められている」ことが目に見えてわかる。会社を出て電気錠が閉まる音がした途端、私は涙が止まらなくなる。帰り道の10~15分、ひたすら泣きじゃくりながら帰る。一人暮らしの家に帰っても寝るまで泣く。食事は喉を通らない。泣き疲れて寝て、翌朝土偶のような顔でまた出勤。

そんな生活を送っていたときだった。生理初日、冬場の勤務中、異常なくらい腹が痛んだ。普通の痛みとは違う、腹の裏側の痛み。寒さも相まってデスクでうずくまっていたら、周囲にいた先輩たちに気付かれ、ものすごい心配された。昼休みにコンビニに走り薬を買おうとするも、ない。午後も同じで、腹は痛む。心配する先輩たちに生理であることを伝えると、決まりが悪そうな表情を浮かべたり、とりあえず胃薬をと渡されたりした。最悪なことにこの日は賞与支給日で、定時の2時間後に開かれる説明会に参加しなければならなかった。腹が痛い上に居残り。地獄かと思ったし、実際にのたうち回っていた。

説明会が終わると、すっかり社内は夜モード。私が勤務を終える頃出勤してきていた夜勤者が、淡々と仕事をこなしていた。そのうちの一人に私の疲れ果てた顔を見られからかわれ、いつもなら笑って突っ込むところだが、半泣きで具合が悪いと伝えた。部署内でそんな顔を見せたのは、恐らく初めてだった。一緒に説明会に参加していた先輩に送ろうかと言われながら、夜勤者に心配されながら、私はありがたさと申し訳なさに満ち満ちて何とか自力で帰宅。家でしくしくと腹もとい子宮を痛ませ、しくしくと泣いた。

携帯を開くと、部署から電話がかかってきていた。部署からの電話は確実に大きな仕事のミス。さらに子宮とストレスからか腹まで痛んだ。折り返すと、その日の別の夜勤者であり、特にお世話になっている先輩が架電したものだった。何のミスかとはらはらしていたそのときの第一声がこれだった。
「黒いポーチ忘れてるけど大丈夫?」

拍子抜けした。ポーチは確かに生理用品は入っているが、9割がリップで占められている。そんな間抜けなポーチとはつゆ知らず、先輩は忙しい合間を縫って電話してきてくれたのか。大丈夫であることとお礼を伝えて電話を切ったのち、優しさが沁みておいおい泣いた。

翌朝、生理2日目ゆえ本調子とは言い難い状態で出勤したら、前日にからかわれた先輩に言われた。
「あいつめちゃめちゃ心配しながら電話してたからお礼言っとけよ」
存じていたとは言え、改めてそう聞くと気持ちがいっぱいになった。引き続き痛みに苦しんだが、こころなしか前日より痛みが和らいだような気がした。

生理痛は今でもひどい。2回に1回大波が押し寄せてくるので、すぐに薬を服用する。このくらい大丈夫だろうと薬を服用しないと、それ見たことかと言わんばかりに子宮は疼いてくる。痛みにのたうち回っていると、毎回当時を思い出す。苦しいばかりの新卒時代、苦しいばかりの部署ではあったが、大事に想ってくれていた人たちがいたことを。

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