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「テロワール」を感じとるよろこび

Vol.025
ワインを飲むとき、あるいはテイスティングをするとき、大きく3つに分類して、ワインの味わいを楽しむ方法があります。「ブドウの果実」「発酵」「テロワール」です。

「ブドウの果実」とは、ワインをグラスに注いだとき、最初に鼻をくすぐる香りと味わいです。「かすみ草のような香り」「レモン、グレープフルーツの匂い」、あるいは「南国フルーツのような完熟感」というように、果実が発する香りをかぎわけることです。

「発酵」は、酵母がブドウに含まれる糖を、アルコールと炭酸ガスに分解する化学変化。発酵のプロセスで樽を使い、数か月熟成させたワインは、バニラやトーストのような香りが加わる場合があります。また、ブドウに含まれるリンゴ酸をまろやかにするために行う、マロラクティック発酵を経たワインは、乳製品のテイストが漂います。

今回は、3つめの「テロワール」が本題です。
「テロワール」とは、“土地”を意味するフランス語から派生した言葉で、視野を広げれば、ワインの原料となるブドウの栽培環境に注目することです。簡単に栽培環境を説明すると、まず、ブドウの樹を植えた土壌の特長はなにか、ブドウが育った年の降水量や日照時間はどうであったかなど。条件が複雑にからみあう「テロワール」から、栽培過程や、土壌の特長が見えてきます。

すでにVol.018で書いたように、イタリアは地形と気候に恵まれています。土壌は、石灰質、花崗岩質、粘土質などのほか、イタリア特有の土壌もあり、実に多彩です。

では、どんな香りが「テロワール」を象徴するのでしょうか。
たとえば、「チョークの香り」「濡れた石の感じ」「砂利のような匂い」などが、テイスティングでよく用いられる言葉です。その正体はミネラルですが、「テロワール」を感じとるとは、そのワインの産地に連れ出されるようなものなのです。東京のワインバーで飲んでいながら、北イタリアの地へ、南イタリアの大地へと旅する感覚が、「テロワール」から教えられる醍醐味です。

いまヴィーノサローネで販売中のワインは、「テロワール」が魅力的な3種類をそろえています。特にミネラル感は絶品です。

白ワインの“カンテ”は、フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州のカルソ地区の厳格なミネラルが持ち味です。

“スキオペット”は、同じ州であっても、コッリオ地区のポンカ土壌(白亜紀までさかのぼる砂岩と泥岩、そして粘土質と砂利が混じりあった土壌)で栽培されたブドウを使います。すっきりとしたミネラル感が白眉です。

“パラスコス”は、ブドウの果皮も漬け込むマセラシオン発酵の香りが支配的なオレンジワイン。ゆっくりと時間をかけて味わいうちに、ポンカ土壌の「テロワール」が顔を出します。

ワインを飲むときに「テロワール」に意識を向けると、産地の特長をひもとく楽しみにつながります。イタリアワインの魅力を探る、もうひとつの感じ方です。

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次回の“ディアリオ ヴィーノサローネ”に続きます。


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