いま、主が解釈するオレンジワイン
Vol.019
主がオレンジワインにであったのは、かれこれ十数年前です。当時、イタリア・ミラノでは、ビオワイン、オーガニックワイン、ナチュラルワインと称して、新しいワインの提案がはじまっていました。
フルボディの濃厚なワインに対し、軽快に楽しめる自然派のワイン。無農薬のブドウ栽培、自然酵母で発酵、亜硫酸塩(酸化防止剤)を添加せずに醸造したものでした。
思い返せば、ミラノのバールで注文したワインが、オレンジワインだったのではないか。あまり意識せず、ナチュラルワインとして飲んでいたが、ナチュラルワインのなかにオレンジワインのボトルが混ざっていたのだと思う。
飲んだワインの色は、濁っていて濃い、ただただ酸味が強い。香りに広がりが足りない。あまりいい印象ではなかったのでした。
昨年の暮れ、ヴィーノサローネの構想を練りはじめたころ、実は、真っ先に気になっていたワインは、白や赤ではなく、オレンジワインでした。主がミラノでオレンジワインを飲んだころから長い時間が流れ、日本でもオレンジワインは一般的となり、名の通ったワイナリーの逸品がワインバーなどで浸透していたのも、その理由です。
そんなオレンジワインを、主はこう解釈しはじめました。
そもそも、オレンジワインという名称は、2000年代のはじめ、イギリスのワイン・インポーターが、その色味から「オレンジワイン」と称したようです。白、赤、ロゼの3種類のほかに、新たなジャンルにオレンジワインを位置づけた、といってもいいでしょう。
なんといっても、イタリアのオレンジワインの産地は、フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州が代表格です。“白ワインの聖地”を築いたマリオ・スキオペットさんの少し年下の造り手に、ヨスコ・グラヴネルさんと、スタニスラオ・ラディコンさんがいます。
時は1990年代。土着品種の白ブドウを使いながら、白ワインとはまったく色も香りも味も異なる、ワインを造り上げました。このふたりが、フリウリにおける、いやイタリアにおける“オレンジワインの嚆矢”です。
ごく簡単に、オレンジワインの造り方をいうと、赤ワインの醸造工程と同じように、ブドウの果皮や、ときには果梗(房枝の部分)もタネも、一緒に漬け込むマセラシオン発酵を取り入れます。マセラシオンの期間は、数日~数か月と多様。ワイナリーによってはさらに、SO2(亜硫酸塩)を加えないとか、フィルターをかけずに濁ったままびん詰めする、という方法があります。多くのワイナリーは、SO2無添加で、濁りの残ったワイルドなワインに仕上げていますね。
そういったオレンジワインの歴史や発酵方法を認識してから、何種類か試飲し、徐々にオレンジワインのとらえ方が変化しました。
酸化臭は、オレンジワインの熟成感に置き換え、色が薄いのは、SO2無添加が原因と考え、ウーロン茶やアンズのような香りは、まさにオレンジワインの持ち味を実感するように変わってきました。
果実味や花の香りは、覆い隠され感じにくいものの、時間が経つと少しずつあらわれてくる。これこそが、オレンジワインの“深遠な魅力”です。
言い換えればオレンジワインとは、ブドウのどの部分も捨てることのない、丸ごとのブドウとテロワールの歴史をも表現するもの。自然の醍醐味を、あますところなく映し出しているのです。
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次回の“ディアリオ ヴィーノサローネ”に続きます。
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