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たった数行の、たしかなぬくもり

手紙が届いた。
桜とお雛さまが描かれた便箋。

「花の咲く頃を待っています。」

という言葉で締めくくられた5行の文章。

凍っては割れるのを繰り返している湖を見ると、スウェーデンの春はきっとまだまだ先だ。樹々の蕾も固く閉じて、寒い冬にじっと耐えているようだ。
人間が寒さに肩をすくめ、歯を食いしばるのと同じような、そんな感じ。
日本の季節の移り変わりを肌や香りで感じることができない今、その心、そのぬくもりを感じられることが嬉しい。

花の咲く頃を待つ。

思い浮かぶのは、冷え切った空気と春に向かう日差しの中、少しずつ蕾が柔らかくなってきた桜の木をぼーっと見上げている母の姿。自ずと頬がゆるんでしまう。
また肩を並べてお花見できる日がきますように。

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