ショートシーン＃01【かすみ草ときゅうり】

桜がたくさんの花を持って停留所の椅子にただ座っている。梅が停留所にくる。野菜の入った袋を持ってる。

梅「二時バス、一時間に一本なんですね」
桜「そうなんですか」
梅「･･････はい」
桜「あと三十分くらいですかね」
梅「そうですね」
桜「靴紐解けてますよ」
梅「あ、ありがとうございます」
桜「･･････」
梅「両手塞がってたから」
桜「私、蝶々結びできないですよ」
梅「え？」
桜「蝶々結び」
梅「そうなんですか」
桜「いつも、こう、縦になっちゃって」
梅「ああ、子供の頃私もそうでしたよ。輪っか作って、いつもと回し掛ける方向は逆だ！　って覚えてました」
桜「なるほど･･････いつも下手くそで縦に曲がっちゃうから、お前は捻くれ者だって言われたりして、なんか意地になってその癖、直しませんでした」
梅「なるほど」
桜「その野菜、美味しそうですね」
梅「親戚の家でとれた野菜で、美味しそうで欲張り過ぎちゃいました」
桜「美味しそう」
梅「･･････そちらの持ってるお花も綺麗ですね」
桜「これ、私が育てた花なんです」
梅「凄い綺麗、それにしてもたくさんお持ちなんですね」
桜「･･････今からこの花を母に渡しに行く所なんです」
梅「それはきっと喜びますね」
桜「はい、母の一番好きな花です」
梅「いいですね」
桜「よかったら、一束差し上げましょうか？」
梅「え･･････はい、じゃいただきます」
桜「今の時期は、かすみ草もとっても綺麗だから」
梅「本当ですんr。あのよかったら、これ、きゅうり･･････」
桜「え？」
梅「あのきゅうり、いりませんか？」
桜「はい、いただきます」
梅「物々交換って初めてしました」
桜「私もです」
梅「なんか嬉しいものですね。プレゼントもらった気分です」
桜「そうですね、特別なものに思えますね。食べるのが楽しみです」
梅「もらって困るものってありませんか？」
桜「ありますね」
梅「例えば？」
桜「鹿の人形･･････」
梅「鹿？」
桜「『誕生日でしょ、これあげるわ』ってそれがお菓子と小さな鹿の人形を貰ったんです。『なんで鹿なんですか？』って聞いたら『家で転がってから』って言われて、『え、いらない』って思っちゃいました」
梅「それは、欲しくないですね」
桜「気持ちがあるのか、それともないのかわからないですよね」
梅「その鹿はどうしたんですか？」
桜「･･････どこか、旅に出ました」
梅「旅ですか･･････」
桜「はい」

　　　笑う二人

桜「･･････」
梅「あ、もうすぐバスが来ますね」
桜「そうですか･･････じゃ私もそろそろ行きます」
梅「え？」
桜「気をつけて帰ってださいね」
梅「乗らないんですか？」
桜「はい、乗りません。私はただの休憩でした」
梅「･･････あ、なるほど」
桜「では、またどこかで」
梅「･･････はい、また」

End.

コメント📝
どの環境でもどの場所でも、気軽にこんな言葉を交わせたら楽しいだろうなと思います。どこの誰とか関係なしに「いい天気ですね」「そうですね」ただそんなやりとりをするだけで、今日いいことあったんだと、言える一日になる気がします。