未知の世界が広がる海。海底から隆起したハワイは、地球の心臓部とつながっている。
海と共に生きよう、というコンセプトを掲げているviehula!。
それは私たちが地球を、自然を、感じようとしたときに最もダイナミックにその本質を感じさせてくれる存在が海だから、ということ。
またプリミティブな感覚、内なる野生を思い出そうとしたときに、海に触れることで、豊かな海の傍らで狩猟採集をして生きてきた遠い記憶がよみがえるように感じるから、などの背景があります。
海になぜこんなにも惹かれるのでしょうか
波打ち際にたたずめば、その音を聞いているだけで癒され、刻々と変わる海の色と空の色の変化を見ていると、時間が過ぎるのも忘れてしまいます。
海はなぜこんなにも私たちの心を惹きつけてやまないのでしょうか。
地球表面の実に7割を占める広大な海。地球中を海流がぐるぐると動き回り、世界をつなげる海。
30億年前に初めての生命体が生まれた場所でもあり、いまだ膨大な量の生き物たちの住処でもあり、地上では考えられないほどの巨大な生物たちの生息場所でもあり。
また太陽のエネルギーを必要とせず、鉄などの無機物から栄養を生み出す化学化合細菌の存在など、まだまだ未解明な独自の生態系も存在する海。
生物の面から見ても、いまだ多くの謎を抱えていて、その神秘性が私たちを惹きつけているのだとも考えられます。
最大深度10,920m。もう一つの宇宙が広がる海
また一方で、海は地球の星としてのダイナミックな営みが繰り広げられる別世界でもあります。太平洋の平均深度は4,188m、最大深度は10,920m。陸地以上に広大なもう一つの地球、もう一つの宇宙がそこには広がっています。
海面からは見えませんが、太平洋の海底は海山であふれています。そしてそこでは多くの火山活動が繰り広げられ、いまだ新しい海山が誕生し続けています。
その中でも地球のより中心部とつながり、マントルから大量のマグマが湧き出ている場所・ホットスポットが数十か所、地球上に存在しています。その中でも太平洋を代表する巨大なものがハワイ島の直下にあり、キラウエア火山が良く知られるようにいまだ活発な火山活動を続けています。
ハワイ島でも最も高いマウナケア山は海抜4,205mあり、水深6,000mの深海からそびえ立っているので海底から考えるとなんとその高さ10,000m、実は世界一高い山。つまり世界一、地球の内部が表出した場所ともいえます。
さらにはハワイ島の南東沖、わずか30kmのところにホットスポットから生まれる新しい火山・ロイヒ海山が1954年に発見されました。
このロイヒ海山は今でも活発に火山活動をくり返し、直近の噴火によってできた火口にはハワイの女神の名前「ペレ」が名づけられています。海面まではあと1000mほどとなり、1万年後には新しいハワイ諸島の島が誕生することになります。
そしてハワイ島を起点として、西に向かってマウイ島、モロカイ島、オアフ島、カウアイ島、ニイハウ等、マロ環礁、ミッドウェー島などかつてホットスポットで作られた火山が太平洋プレートにのってベルトコンベアで運ばれるように移動し、連なっています。
ハワイの神話には女神パパと男神ワケアによって、その子供として島が生み出されるという「島産み」神話があります。
大地の創造の地、海の底からダイナミックな地球の活動によって世界一の山が立ち上がる特別な土地だからこそ生み出された神話なのかもしれません。
ハワイと海底でつながる日本。ハワイ‐天皇海山列
そして実は同じような国生みの神話を持つ日本とも、ハワイは海底でつながっています。
ハワイのホットスポットによって生まれた海山はベルトコンベアのように太平洋プレートによって日本の近くまで運ばれていきます。前述のハワイ島から始まりミッドウェー島の先には、さらに海山が連なっており、これらにはなんと日本の古代天皇の名前がつけられています。
ミッドウェー島に近いところから、代表的なものとして桓武海山、雄略海山、欽明海山、応神海山、神功海山、仁徳海山、推古海山、神武海山、天智海山となり、ハワイ‐天皇海山列と呼ばれています。
この天皇火山列の名づけの親は実は日本人ではなく、戦前の日本の海底調査を元に研究を行っていたアメリカの海洋地質学者のロバート・ディーツ博士で、1954年に発表した論文の中でこれらの海山に天皇の名前が名づけられました。
それにしても、ハワイから連なる海山が日本の近くにまで来ていて、そこに国生み神話の神の子孫とされる天皇の名前が付けられているというのはなんとも不思議な話ですね。
日本も海洋プレートの沈み込む場所として、大量のマグマが生成され火山活動が盛んな土地。
複数のプレートが沈み込む境界域に立つ富士山は、まさにプレートの影響で多くのマグマが生成され、形成された火山。古来から霊山として崇められているその麓には水深2500mにも達する日本で一番深い海、駿河湾が広がります。
わたしたちの見えない世界で繰り広げられる地球のダイナミックな活動。地球内部の宇宙の神秘が噴き出し、現れ、山や島が生み出されていく深海。そこに神を感じ、海と火山と共に生きてきたわたしたち。
わたしたちが海に感じる特別な感覚は、地球の活動が見えてきたはるか以前からもっていた「星としての地球そのものを感じる」というものなのかもしれません。
海の傍らにたたずむとき、海の色や空の色、生物たちの気配を感じるとともに、さらに深海で繰り広げられる地球そのものの躍動に、想いを馳せてみませんか。
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