大きな宇宙の中の、小さな一粒でしかない人間。100年をどう生きるか、星空を眺めて考える。【マウイ島星空ガイド 山内良和さんインタビュー】
今回は、マウイ島ハレアカラの森林限界を超える標高3055mの世界で、ダイナミックなサンセットや満天の星空に包まれる星空ツアーを通して、自然や宇宙の素晴らしさを17年間伝え続けている山内良和さんにインタビューしました。
ハワイ神話の中でも「太陽の家」として登場する神聖な山、ハレアカラ。
山内さんは、麓の町から山頂までのドライブで、楽しいハワイの伝説や自然の話で盛り上げてくれながら、美しいサンセット&星空のドラマティックな時間をコーディネートしてくれます。
ハレアカラ山頂は草木も生えず溶岩が転がり、まるで月に降り立ったかのような景色。だんだんと陽が沈んでいくとオレンジとブルーの幻想的な光の世界が広がっていきます。山内さんのHPには下記のように記されています。
「日本のように1分1秒を大切にして過ごすことも必要ですが、時間を忘れ大自然の中に身をゆだね、日が昇り、日が沈むまでのんびり安らぐ一日を送る。そんな時間も時に人生には大切ではないでしょうか。
マウイ島ハレアカラで見る夕陽・星空は単に美しい、ロマンチックなだけではなく、人生につながる喜びを見出させてくれます。」
大自然の中の暮らしで日々感じていること、そこから学ぶことなどを教えて頂きました。(取材担当 林田)
ハレアカラ山頂は宇宙そのもの。そこで見えてくることとは。
林田:こんな大変な状況下でお時間いただきましてありがとうございました。以前、私自身も星空ツアーに参加させていただいたことがあって、ツアーのきめ細かさはもちろんですが、そこで語られる宇宙のことや星のこと、山内さんのお考えがとても素敵で今回インタビューさせて頂きました。コロナ禍の状況はいかがですか?
山内さん(以下敬称略):いや~、ほんと大変な状況になりましたよね。みなさんハワイにこれない状況になりましたし、私たちもずっとステイホームな状態。
ただ私は24歳でアメリカに渡ってから、9.11の時もアメリカにいましたし、ロサンゼルス暴動やら何かある時はなぜかその渦中にいるというタイプで(苦笑)もう仕方ないですよね、こういう時は受け入れるしかないんだって思っています。
ハワイはこんな気候だし、みんな夏休みな感じだよね(笑)このままだと誰も働かなくなる。
林田:そもそもあくせく働くことがなんなんだろうって、思ってしまいそうですよね。もう17年間続けている星空ツアーですが、日本から来る方はみなさんどんな想いを抱かれますか?
山内:綺麗とかすごいとかそういうのはもちろんあるけど、やっぱりみなさん何かしらご自分の中に変化が生まれるみたいですよ。
この星空ツアーがきっかけで自分がツアーガイドになったという人もいました。いろいろ見失っていた時にハレアカラに登って星を見て、目覚めたって。今度は自分が少し迷っている誰かの背中を押す仕事がしたいということで日本でネイチャーガイドをしていると話していました。
あとは子供が急に星の絵をかくようになったり。やっぱり本物を見るって強いよね。ハワイはぜんぶ原画、本物しかない。
子供のような純粋な時に本物を目の当たりにしたら、それはプラネタリウム行けなくなるよね。
このツアーでは宇宙に近づく、宇宙そのものを見る、目と身体と鼻すべてで体感するということをやるから。
林田:宇宙・・・・。3000回近く登頂している山内さんにとって宇宙って何なのでしょう。
山内:うーん、そうだなぁ・・・・。先がないもの、その先がわからないもの、かな・・・・。分からないものが目の前にどーんって広がっているってすごいよね。
やっぱり結論がないし、理解しきれないし、無限の可能性ともいえる。
これだけ大きな大きな宇宙の中で、ほんの小さな一粒にすぎない人間が、たった100年生きる。でもその100年間をどう生きるのか。ここがとても大切で、それを見出すきっかけになれたらと思ってずっと星空ツアーを続けているのだと思います。
変革期。お金に振り回されるのはずいぶんと寂しいことだな、と。
林田:100年間をどう生きるのか。まさに今は時代の大きな変革期で、みんなにその質問が突きつけられているように思います。
山内:そうですよね。日本もある部分、今の生き方はピークに来てしまっているから。まずは心のトリートメントをどうしていくのかが大切なのだと思う。
僕は大学生時代は音楽をやっていて、その後はサザンオールスターズのツアーマネージャーをやっていて当時はほんと年間休日3日みたいな、かなり忙しく働いていましたよ。
その後、24歳でアメリカにわたって2001年の9.11までレストランのオーナーをやっていました。
この年代の人みんなそうかもしれないけど、とにかくイケイケで、次へ次へ、という感じだったかな。
でも9.11で事業も立ち行かなくなり、まわりでも自ら命を絶つ人やさんざんな状況をみて、アメリカ本土からもともと好きだったマウイ島へ移住することにしました。
そこで、人って100万もらったら110万欲しくなるし、110万もらったらもっと欲しくなるのが性だけど、本当にそうなんだろうか。それだけというのはずいぶんと寂しいことだな、と考えました。
やっぱり本気で人の役に立つこと、人を喜ばせることをやりたい、と思った時に、子供の頃から好きだった宇宙や星に関わる仕事をしようと考えたんです。
林田:まったくツテも何もない状況で、一から立ち上げたのですか。
山内:最初はツアーの会社に入ってガイドをやりましたよ。でもやっぱり効率優先で、ただお客様を回転させるだけのやり方に納得できなくて。
1年くらいでもう会社を立ち上げようとして、10人に相談したら10人無理だよ、と言いましたけど、なんとか本当にお客様に喜んでいただくツアーをやりたい、という想いだけで立ち上げました。
大手の旅行代理店を回っても断られることばかりだったけど、自分でホームページを作って、そこに想いを綴り始めたら、少しずつお客様が増えていって、あとはもう口コミとリピートで今みたいな規模まで来た感じですね。
林田:やっぱり本気でやりたいと思ったことを実現すると、人はわかってくれるのですね。
山内:本当にそうですよね。
日本で試行錯誤しながら、ちょっと疲れていろんな悩みを持った人達が、気持ちを楽にするためにハワイに来たりするじゃないですか。だからその背中を少し押すような仕事をしていきたいってずっと思っています。
それに今考えてみると、若いころに必死でサザンのコンサートツアーの仕事をやっていたときや、飲食店やっていた時の経験が全部生きているんですよね。
ハレアカラでサンセットを見て、最後に星空を見ながら宇宙を感じるという舞台を、毎回天候もお客様も違う中でその時のベストを尽くしてやっている感じです。
本当にやりがいのある仕事です。
マウイ島はすべてが癒し。そして圧倒される自然。
林田:ハワイ、マウイ島は山内さんにとってどんなところですか?
山内:もうね、なんといってもマウイ島は目に見えるところすべてが癒しなんですよ。ぱっとみたら海があって、山があって。これはほんとお金に換えられない。
やっぱり自分が住んで毎日目に見えてくるものって、必ず大きな影響を与えるよね。環境で人は変わるから。少しくらい不便だったり家賃が高くても、自分が穏やかになれる環境にいることが大切だよね。
マウイはオアフのような忙しさもなくて、それでいて街の生活もそこそこそろっていてスローでとても気持ちいいところです。
ハワイはとにかく人が温かくて優しいですよね。
まだこの島に人の営みができ始めてから数百年しかたってないんですよね。だからハワイの人達はマウイやカウアイやいろんな島があるけどみんな仲がいいですよ。
島の外からあまり文化が入ってこないし、独自の文化を保って人との助け合いとか優しさで社会が動いている。なんだか昔々の日本と似ているのかもしれないよね。
あととにかく暖かいから。楽天的で幸せに暮らしたい人が多いよね。
毎日これだけお天気で気持ちよかったら、そりゃ煮詰まらないよね~。
ここにいたら、何かがなくちゃいけないとか、あれが欲しいとかこれが欲しいとかなくなるよね。なけりゃないでいいよね、という価値観になっていく。
もちろん都会には都会の良さ、それぞれの良さがあるのだと思うけど、自分はマウイがやっぱり一番のホームだと感じていますね。大好きです。
林田:ハワイ島にも高い山がありますが、やっぱりハレアカラなんですね。
山内:マウイのハレアカラはやっぱり特別だと思います。
ハワイ島にもマウナケアという4000m級の山があるけど、その高さになってくると体の負担とか、時間の負担とかが大きくなってしまう。
3000m級の山で、片道1時間半で行けて、その一番高い所で星空を見れるというのはやっぱり特別なことじゃないかな、と。日の出のツアーもありますが、やっぱり何といっても夕焼けから満天の星空へ変わっていくこのサンセットツアーに参加してみてほしいですね。
林田:本当ですね。山内さんの手掛けるサンセットツアーの数時間は、どこにもない特別な時間だと思います。これからまたハワイへの旅行客も増えてくると思います。日本のみなさんへのメッセージをお願いします。
山内:日本も今はまだまだ不安な状況の中にあると思います。でもこんな時だからこそ、自然に触れたり星空を眺めたりして大きな宇宙の中にいる自分を感じることが大切なのではないかと思います。
そして身近な家族や大切な人との時間をゆっくりと味わうことができるチャンスでもあると思います。
またハワイへ気軽に来れるようになったら、ぜひマウイ島のハレアカラに訪れてください。ここにしかないスケールの大きな圧倒される自然と星空が待っています。
何かに疲れたり、見失ったり、背中を教えてほしいなと思う時には繰り返し訪れて頂ければ、大切なものが思い出せるのではないかなと思います。
林田:山内さん、ありがとうございました。大きく価値観が変わりつつある今、改めて大自然から学ぶことを教えてもらいました。
■山内さん主催:マウイ島ハレアカラ サンセット&スターゲージングツアー。掲載写真の一部は山内さんのInstagramより。
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