ヤリイカ

大人になって空を飛ぶ

今年中に、47都道府県を制覇しなければならない。

全国各所にある、とある店舗を撮影するという案件が舞い込んだのだ。

青森から秋田に車を走らせたかと思えば、そこから羽田空港を経由して愛知に飛ぶ。ロケ地の都合上、そんなトリッキーなコースもあった。

「こんなにたくさん飛行機に乗るだなんて、なんだか大人になったなぁ」なんて言ったらバカにされる年齢になってしまった。

これから向かう場所で、何かの暗示のように地震や台風などの災害が起こった。「撮影なくなるかもなぁ」そんな心配をよそに撮影は決行され、これまた何かの暗示のようにいつも晴れていた。
晴れ男だと言われた。
なんとなく居心地の悪い言葉だった。だとすれば、いつも一緒にいるあなたもまた晴れ男じゃないか?。あなたは気持ちも晴れている。自分のように曇ってない。

撮影が終わると、夜はその地域ならでは食に触れる。

福岡で食べたヤリイカの刺身は、鮮度が良すぎて模様が点滅していた。
珍しいので動画に撮って母に送ると「気持ち悪いね」と一蹴された。
でも、これまで食べたことないようなイカの甘みが口に広がる。
「イカ、以上だね」
なんて饒舌に、僕らはその透明な物体を平らげ、経費で落とした。

現地ではもっぱらレンタカーで移動し、何度もパーキングエリアに立ち寄った。それは空なんて飛んだことのない子供の頃の、遠出の象徴だ。

しかし、どうしてパーキングエリアの記憶って晴れてるのだろう?うーん。やっぱり晴れ男なのかもしれない。

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