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ノラガミ設定考察 終レポート 完全版③

夜ト
・ヨトウムシ類、夜盗虫。蚕同様、蛾である。またはヨトウガ。一般的な分類では、例外はあるが、蝶は昼に活動し、蛾は夜に活動する。ヤトが切ることしかできないのは作物を食い破る害虫だからである可能性が高い。アワヨトウ(英名は稲穂刈り毛虫)の幼虫は全体的に褐色で、体側面の白い縦線が特徴的である(ジャージの由来か)。他のヨトウムシ類も、シロスジアオヨトウなど、幼虫あるいは成虫の体の白い線が特徴の種が多い。農業害虫として非常に有名である。ヨトウムシの活用方法は見つかっていない。夜盗の名の由来は、夜行性で日中は土に隠れており、存在に気が付かれにくく、気づいたら木や作物が丸裸になっているからである。神が人間に姿が見えず忘れられやすいことと繋がる。発見される場合は、葉の裏に若年幼虫が数十匹まとまった状態になっていることが多い。葉を裏から食べて、表面の薄皮だけ残したスケスケにしてしまう。文字食い虫の紙魚の様に、葉にうねる様な線の食べ跡がつく場合はコイツが怪しい(とおや先生の画才…)。ヨトウムシ類のほとんどの種はイネ科以外のほとんどの植物を食べるが、イネ科のニッチに適応したヨトウムシもおり、ほぼなんでも食べると言える。イネヨトウという種類はイネやアワの茎に潜り込んで越冬する。筆者もグミの木やバラ、クチナシを何度も食われており、気がついたら葉っぱが全滅しており、オルトラン粒剤を怒りに任せて散布している。ヨトウムシにはオルトランDXが効く(殺意)。冷涼な地域では年数回発生する(ここは秋田じゃマジで絶滅しろ)。幼虫は糸を吐いて繭を作るが、蚕のような有用性は無い。幼虫の群れに刺激を与えると一斉に糸を吐き、ぶら下がって逃走する。年に数回見るが死ぬほど気持ち悪い(一昨年祖父の家で大発生して風が吹くたび雨あられとヨトウムシの毛虫が降ってきた)。全ての作物の天敵であり、実りの神である天照の天敵。労基を守らなかった夜トが吊り下げられている様子と似ている。地下神殿を建造しようとしたのは、ヨトウムシが日中は土に潜って隠れて暮らすため。
 また夜トのボロ布がチャームポイントなのは、ヨトウムシが紡ぐ糸が、蚕の足元にも及ばないことを示す。よって雪音/蚕なら、と父様は考えて、莠を繭にすら毒針をもつチャドクガにしたと考えられる。父様は莠と名付けたとき、より夜トに相応しい神器にしてやろうくらいの気持ちだった可能性がある。あるいは素材が綿であるなら、それは父様/綿打ちのつけた首輪である。
 ひよりが夜トと関わり続けたことで徐々に体調悪化したのは、紙縒り(和紙は楮という植物からできている)の性質をもつひよりを、その生命力を、ヨトウムシな夜トが食い荒らしてしまったからとも取れる。よって縁、毛虫の糸を断ち切ったことで、ひよりは回復できた可能性がある。
 人間にとっては農業害虫でしか無いが、自然界において、ヨトウムシは植物の生育を助ける部分もある。木は葉が混み合いすぎると蒸れて病気になるため、人の手で透かし選定もする。自然界で選定するのは芋虫や、実を食べる為に枝を折る熊や、下生えを食べる鹿である。それら芋虫が増えすぎないように、芋虫に寄生する蛆や蜂、鳥がいる。天照が夜トを選んだのは、ヨトウムシも生態系の一部であるからに他ならない。雪音(蚕は人に定められたものしか食べない)が夜トをただひたすら災いのみを断ち清めるよう導くなら、それは木の葉が減って森の隅々に太陽光が行き届くように、天照の光が世の隅々まで照らす助けとなるのである。
 ちなみに、椿の葉は放っておくと葉が増えて込み込みになって藪と化すため、花を美しく見せられるよう余分な葉や枝に剪定を施す。雪音は夜トのために、望みすぎないことを選び、自制と自律を選んだ。それは剪定のようであり、水を注がれる花のようである。夜トが雪音のみ育ててを道標とするのも、天意に沿うというということである。
・桑 ヨトウムシが唯一食べることができないのはクワである。ヨトウガがクワを食べると、2〜3日中に死亡する。家蚕は桑が作る糖類似アルカロイドや新規耐虫性タンパク質に対して高い耐性を持ち、成長阻害作用を一切受けなかった。またこれらの毒を無毒化するため、クワの葉を食べている蚕の体には毒が残らない。
 夜トはこれまで、どんなことでもできる多彩な能力を持つにも関わらず、自分の思い描くようにはなれなかった。人々に求められる神に、人を幸せにする天の神にだけは成長できなかった。しかし雪音を手に入れた夜トは、雪音に導かれて人を災厄から未然に守る道(無毒化)を見出して、天の神の一員になった。公食性のヨトウムシ(夜ト)が唯一食べられず成長できなかった桑という分野を、蚕(雪音)が開拓していったのだ。また同時に、蚕(雪音)が食べれないものを、ヨトウムシ(夜ト)はなんでも食べて攻略する力が有り、雪音が失った多くのものを夜トがこれから一緒に体験させてあげるのだろう。また、屋外のヨトウムシを駆除する薬剤を散布すると、屋内の蚕まで被害を受ける。夜トが自ら雪音から離れようとしたのは、自分の行いのせいで雪音にも害が及んだからである。しかし夜トが自分を殺す道を選んだことで、結局雪音まで傷つくことになった。
 そしてクワ科の楮、紙の原料、すなわちひよりの人生を食い荒らしたヨトウムシの夜トは、その毒でたちまち体が半分溶けて死にかけた。が、雪音/桑の毒を無毒化する蚕が協力したことで、夜トは助かった。しかし蚕も楮は食べるが、栄養にできない。
 あるいは、ヨトウムシは椿を食べることができ、ムガ蚕は朴木を食べられる。羊は莠を食べられる。狼は羊を食べられる。互いを食物とすることができる関係にある。
・卜伴椿 卜伴椿という品種は、中央の雌蕊雄蕊が突然変異し、フリルの様な花びらがまとまってボール状になっている。白と赤がある。卜伴椿の外見は、さながら初登場時のケセランパセラン雪音である。夜トと伴音のコンビの字はここからきている可能性が高い。
・ヤボクはイスラエルを流れる川の名前である。アラビア語ザルカ川ともいい、ヘブライ語のヤボク(発音はヤロク 日本語約聖書ではヤボク表記)同様、青、碧いという意味である。聖書をおいて他に、世界中の神話にヤボクという名は登場しない。日本人口のうちキリスト教信者は2%しかいないが、ごくわずかでもヤボク川という単語を覚えているものがいたなら、ひよりも父様もいなくなった後、真名を知る生きた人間はいないはずなのに夜トが即消滅しなかった理由になり得るかも知れない。あるいはひよりが手帳や社に夜トの名を書き残していたからかもしれない。
・シンジュサン シンジュサンは日本語で樗蚕、神樹蚕。中国語で椿蚕。カイコカの昆虫。日本書紀において、キリスト教の経典山上の垂訓が曲解され、「常世の神」として祀られたが、聖徳太子によって排斥された。夜トの由来である。詳しくは父様の項。常世の神として祀られたのはカイコ科の蛾の幼虫、またはアゲハ蝶の幼虫であった。よって夜トの性質は芋虫である。芋虫の神に父様が天を滅ぼすよう祈った結果、ヨトウムシ、ヨトウガという害虫の性質になってしまった。しかし本来は人を幸福にしたい、捧げ物もたくさん欲しい神であるため、下々を思いやる心を持ち、人の願いも叶えたいし、開運グッズも欲しがるのである。そんな芋虫の神である夜トが、雪音という蚕、シルクを手に入れたため、本来のシンジュサンとして祀られた時の人を幸福にする神へと戻っていったのである。
 シンジュサンは大型の野生の蚕で、翅を広げると体長は12cm以上もある。蚕の成虫は4cmしかない。橘(日本原産のすだちのような植物)はもちろん、クヌギ、コナラ、桜、モクセイ、リンゴなどかなり幅広い食性を持つ。また芋虫は突起が無数に生えており、黄色、黄緑、青と派手な色彩を持つ。幼虫にはトゲトゲがあるので王冠がトレードマークで、目の青さも芋虫の体色に由来する。成虫は黒い羽根に白い波線が入っており、三日月の文様が翅一枚につきひとつ入っている。黒に白い波線がジャージであり、三日月紋様がゆるふわである。東南アジア地域ではシンジュサンの繭から糸を取ることもある。しかし日本では橘もシンジュサンも激減しており、保護の対象となっている。
 神樹/シンジュは神器/シンキに通じる。その樹の葉となるのが、根の国の言の葉で名付けられた神器である。また神樹は春樹、そして椿に通じる。
・橘 椿と橘はどちらも常緑の肉厚の葉を持ち、丸い実をつける。いずれも若い実は青く、熟れると赤もしくは橙色になっていく。花は違い、橘は柑橘類であり、星のような白く小さな花をまとまって咲かせる。椿は肉厚の花びらと大きな花芯を備える。いずれも魔除けの木であり、常緑で、葉が紅葉することも枯れて無くなることも無いため、永遠を象徴するとされてきた。橘はユダヤ人が祭祀に用いる柑橘類エトローグに酷似するとされる。古代日本では椿と橘を近い植物と考えられており、和紋様の椿と橘はそっくりで見分ける事が難しい。これは夜トと雪音の本性が近しいことに繋がる。雪音は蚕で椿でもあり、夜トは芋虫で橘でもある。この2人の関係が永続的である事を表す。
・F1 蚕の仲間は世界中に数百種いるが、そのほとんどが交雑可能である。通常の蝶や蛾は違う種とは交尾しないため、カイコ科のみの特徴である。蚕は別種の蚕の隣に置くとすぐに交尾を始め、産んだ卵も孵化しやすく、簡単にハイブリッドが手に入る。この性質を利用して、日本は家蚕とさまざまな野蚕を交雑させ、一代雑種強勢F1を発見した。病気に強い蚕や、クワ以外も食べれる蚕、美しい色の糸を出す蚕を生み出していった。これにより、日本の養蚕業は発展し、世界に名だたるシルクの国になっていったのである。
 天が夜トを「要る」と言ったのは、夜トが野良の蚕神であり、雪音というすでにある良質な蚕の特徴を備えたものと交雑させておけば、より良い絹糸を産する蚕神になると思ったからかもしれない。あるいは2人の存在は、蚕を進化させ続けてきた日本の製糸の歴史を表しているのかもしれない。その糸は天網の一部となり、雪音/蚕の無毒化の力を備え、この世の魔を清めることになるのである。
・常世 または常夜。永久に変わらない神域死後世界でもあり、黄泉もそこにあるとされる。「永久」を意味する。日本神話古神道の用語。現世と対である。よって夜トに夜の名が付いた理由の一つ。
・ナザールポンジュウ 青い目の紋章で、魔除けの力がある。トルコのお土産でガラス製の青い目がよく売られている。雪ぐも塩も魔除けを意味する点で繋がりがある。
・ヤコブ(ヘブライ語で人を出し抜く者) ヤボク川を渡る直前、天使と決闘して神から祝福を勝ち取った旧約聖書創世記の羊飼い。勝ってからヤボク川を渡った。褒美として神からイスラエル(ヘブライ語で神と戦う)という名を新たにもらった。叔父から羊の群れを預けられた際、毛に黒い斑が付いている羊は給与として自分の羊にして良いと告げられた。ヤコブは早速、黒い斑がある牡羊を雌羊たちに種付けさせる様にし、やがて叔父の羊の群はほぼ全てヤコブのものになってしまったという、やり手上手の逸話を持つ。斑の出た羊は自分のもの、というのがノラガミの神が神器に名付ける部分に似ている。また神から名前をもらったという点が、父様に名付けられた夜トと通じる。
 ヤコブは羊の名前にもなっている。ジャコブ羊といい、現在ではブリティッシュウールの代表的な品種である。白と黒の2色のまだら柄が特徴で、非常に大きな2〜4本の巻き角を持つ(六甲山牧場の十六くんというジャコブ羊が有名)。ジャコブ(ヤコブの英語読み)のウールで作られたブランドもののスーツなども存在する。白と黒がジャージを連想させる。肉も食する。羊は捨てるところが無いと言われる。毛皮はムートンに、革は財布や手袋、羊皮紙にも用いられる。角や骨は工芸品に、糞は燃料になる。羊は羊飼いと牧羊犬に守り育てられる。しかし、羊は明治に入るまで、日本で飼育繁殖に成功しなかった。何度か唐から贈り物として羊が送られているが、すぐに死んでいる。日本では羊は長らく幻の動物だった。夜トが日本の神話に存在しないのは羊だからかもしれない。狼も現在では日本から絶滅しており、野生では狼も羊も現代日本に居ないという点で共通する。
・莠(狗尾草)は羊が好む稲科の植物である。山羊は粗食に強く雑草だけでも生きていくことができる。一方の羊は羊毛や肉を発達させるよう品種改良されているため、人間が育てた栄養豊かな稲、麦、粟や稗、大麦、などの稲科植物や豆科(蚕豆/そらまめ)などを食する必要がある。よって羊は比較的、山羊より雑草対策に適さない。狗尾草などの野生の稲科はタダで手に入る羊の重要な飼料である。足腰の強さや斜面への適応力はヤギにも劣らない。翔という漢字が羊に羽と書くが如く、跳躍力が高い。しばしば囲いを超えて近隣の雑草を食べる。雑草だけではなく、庭木や花壇や田畑も食害する。モンゴルの砂漠化は羊の放牧のしすぎだと言われている。このため、牧羊犬による監視と管理が必要となる。
 羊は紙は食べない。藁や柔らかい青草を好むため、紙は好まない。山羊は樹皮や硬い木の葉も食べるため、誤って紙を食べてしまうことがある。しかし山羊も、植物からできた和紙は消化できるが、化学薬品などが使用された現代のコピー用紙やチラシは消化できないため、与えてはならない。
・解廌、獬廌(かいたい、かいち)羊に似た中国の聖獣(祥獣)で、公平と正義の裁判を司る。羊に似て一本の角を持ち、黒く豊かな毛を持つ姿で描かれる。カイチの両隣に争い合う者を立たせると、不正直なものに触れて知らせたという。また理不尽なことをする者がいれば、その角で突き刺して殺し、食べてしまう。カイチの裁きによって勝った者は慶とされ、その胸に心を表わす紋章の刺青を施し、勝利の証とした。負けた者は法とされ、誓いが無効となった証のとしてサイの紋章(祝詞を入れる容器の蓋を取った図)を刺青され、生贄の鷹と共に川へ流されたという。夜トはカイチ、雪音の胸の印は勝利の証、という側面があるのかもしれない。野良となって祝の誓いは覆された、一方で、天に仇成し主人を死なせる葬りの側面もなくなったと言える。また夜トが天に対して上申した様子はカイチの裁判を司る様子に似る。聖書では裁きは神のもので人間のものでは無いとされる。
 羊はそもそも中国においてめでたい動物であり、故に吉祥、美しいなどの漢字に含まれる。
・朴の木/ホオノキ モクレン科の樹木 ムガ蚕が食べる木。葉に抗菌作用があり、おにぎりや味噌を包む。また火に強く、アルミホイルの様に食べ物を葉に包んで焼くことができる。花は甘く芳醇な香りがする。実も食べることができる。木材は軽くしなやかで、日用品や工芸品に使用される。葉や樹皮に薬効がある。ホオノキの花言葉は「誠実な友情」薄い本の友情…とやらかも知れない。
・ムガ蚕 インドで飼育される金色の糸を作る貴重な蚕である。ホオノキなどモクレン科の木の葉を食料とする。世界の絹の生産量の0.5%しか採れない。雪音/シルクが夜ト/朴の木の下で祝へ進化できた理由かもしれない。
・辛から酉へ。辛酉は天命が覆される年であるという。モクレン科の植物に辛夷/こぶしがある。辛夷の花言葉は友情。
・蠧/しみ 蠹、紙魚、あるいはキクイムシのこと。この漢字は音読みで「ト」。訓読みは「むしばむ」。夜に木を食う虫で、ヨトウあムシを表すとすれば、夜トの名の書き方は漢字で夜蠹である可能性がある。夜に卜う/うらなうの書きかたに隠されたもう一つの意味。キクイムシは紙や木材、衣服を食べる虫を総称する。この漢字の部首は虫であるが、上半分は壱を表す古い形状で、これは原初の虫である。蠧毒/とどく、という言葉は、少しずつ毒を盛って殺すことを表す。夜トは雪音に当てたひよりの手紙を食べていた。
 ひよりの苗字は壱岐であり、また紙縒である。よって夜蠹によって蝕まれ、生死の境を彷徨った。名の相性の悪さは最悪であり、壱岐家の実家でひよりの祖母に「悪いもの」として見えた理由である。また貧乏神が縁を結んだ理由である。(つまり、ひよりが誰かと結婚して苗字が変われば、運勢や相性も変わる可能性がある。婿は取らず、嫁に行く方が良いであろう。これも占いである。)
・裾 ひよりが夜トのジャージの裾を掴み、止めるシーンがある。古代ユダヤでは夫以外の男性の衣服に女性が触れただけで、姦淫の罪として石打ちの死罪になる運命であった。新約聖書では、出血の止まらない女が癒されたい一心でキリストの裾に触れた。この時はキリストが「あなたの信仰があなたを救った」と言って周囲の人々にとりなした。ひよりは夜トが雪音を救ってくれると信じて向かっていったのであり、最終的に雪音も夜トがひよりを救えると信じた。雪音という蚕は毒を無毒化し、雪ぐものであり、よって雪器が夜蠹/蝕むものとの縁を切ったことで、ひよりは助かった。
・蚕影神 オシラ様 木花開耶姫が一緒に祀られていることがある。姫は一瞬のご登場だったが。
・天鳥船神 またの名を鳥之石楠船神。神々を載せる船の神。父様が最初に殺した神としている。この神に真名を与えて夜トとしたのでは?と考えることもできる。しかし天鳥船神は全国に数軒神社がある。葦でできた船だったと伝わる為、葦/悪しとして父様が標的にしたのかもしれない。
・天若彦 弓で鳥を射て、神を射たことになってしまうというストーリーが世界中の神話に散見される。旧約聖書の創世記のニムロドにちなみ、ニムロド類型という。夜トが弓を得て、傷つけられた雪音が飛び去ったのはこれが参考になっている可能性あり。
・椿の海 現在の千葉県あたりに実在したと言われる内海もしくは干潟。現在は消失している。伝説がある。椿の海の中央には、巨大な椿の大木があり、そこに悪鬼が住んで人々を困らせていた。それをタケミカヅチとフツヌシが退治したという。悪鬼により椿の大木は引っこ抜かれ、海は花びらで赤くなった。父様が国生みで作り出した海、もしくは墓があった島のある海はこれがモデルかもしれない。詳しい話は検索されたし。
・建葉槌命(たけはずちのみこと)・天羽雷命(あめのはづちのみこと)・天羽雷命(あめのはづちのみこと 宮水神社 天照大神天の岩戸から誘い出すために、文布(あや)を織ったとされる。文布は倭文布とも倭文とも書き、「シドリ」また「シヅリ」という織物である。タケミカヅチもフツヌシも勝てなかった天香香背男と戦って勝利した。天棚機比売命と夫婦で祀られていることが多い。タテハ蝶の名にその由来が見られる。夜トのモデルの可能性あり。
・セーターとウェディングドレス なぜ夜トは雪音にセーターを紡いで編んだのか。それはやはり、雪山で冷蔵庫の中、埋もれていた蚕に、少しでも暖かい思いをさせてやりたいということであろう。それが羊なのは、夜トがヤボク/ヤコブ、ジャコブ羊であり、羊である自らの身を削って雪音を救いたいという想いが暗喩されている。このイベントがクリスマスであったことも、サンタが実在する設定も聖書との繋がりを匂わせる。野良も「主の元へ行く、色々な生死感があってそのようになる」ということを言っている。古代ユダヤにおいて、男子が自らの着ているものを女子に与えることは、すなわち娶ることであった。夜トは雪音を名付けてすぐに自分のジャージを与えており(踏まれたが、これもまた意味があるため過去の考察を参照)、また雪音が夜トの呼び声に答えてから神御衣で包んでいる。
 夜トがプレゼントしたセーターは、アランニットという技法が組み込まれている。胸の綱のような模様は、アラン模様のひとつ、ケーブル模様である。アランは元々、漁師のために妻が編んだセーターだ。海に行く夫の安全を願い、船を陸に繋ぐケーブルの模様を編み、いつでも必ず自分のところへ帰ってきて欲しいという願いを込めているのである。またシルクとウールを5対5で混合した糸は手編み糸の中でも最高級品である。
 また雪音が被っているポンポン付きの帽子(たぶん編み地からして手編み)は、服飾用語ではチュリョという編み物で、元は南米アンデスの民族衣装である。アンデス地方では、女性は家庭の為に糸紬ぎも編み物もするが、男性は女性に対して自らの器用さと頭の良さを示す為に、複雑な編み込み模様の帽子を歩きながら編むのである。より複雑な編み物を贈れた男性が、より良い糸を紡ぐ女性を伴侶にできる。あの帽子は出来からして夜トが編んで、ひよりが仕上げにちょいと不器用な王冠の刺繍を入れたのかもしれない。
 ではひよりへのウェディングドレスはというと、夜トはわざわざ蚕から繭をとって雪/シルクを紡いでドレスを織った。またレース部分は意匠から見て、クロッシェでもニットでもなく、おそらくボーン・レースである。糸を巻き付けた無数のボビンを交差させることで、蜘蛛の巣の様に中央から円形に編む緻密なレースである。シュールすぎるので雪音の骨を使ったとは思いたくないが、雪音の骨を拾ったのは夜トである。つまり蚕/雪音の導き糸から夜トが紡ぎ出すものが、ひよりを守るということである。これは仮死状態のひよりに雪音が上着を掛けたこととも相対する。雪音がひよりを娶るのではない。雪音が「いつか綺麗なお嫁さんになって行くんだ」と言った時、ひよりは誰かの隣でウェディングドレスを着ていた。雪音の望んだひよりの幸せが達成されるということかも知れない。野良も上着を雪音のかけられているが、その頃から父様の意思に反する言動が見られるようになり、最終的に父様を捨て自分の意思を通した。雪音/絹という神の新しい約束が、赦しと愛が、雪音を通してひよりや野良にも分け与えられるということなのだと考えることができる。神がキリストの愛と赦しの仲介を持って、罪深い人間と和解したように。という原作にある通り、神々は父様を倒す為なのに、単体では地上の人々に災害しか成し得なかったため、次々と神器を呼んだ。夜トもひよりの高校生活をめちゃくちゃにした。雪音の導き無しには、夜トはひよりの生活を食い荒らす芋虫で迷える羊である。よって夜トは雪音に導かれて世を守護する繭を作り、脆い繭の蜂であるひよりは雪音の繭に護られて立派に羽化して医者となり、本当の白衣をまとって医師として活躍するのだろう。ひよりは再び夜トと雪音を思い出したのであるから、雪音を通して知った命の尊さを胸に、患者の命と向き合うに違いない。
(白いウェディングドレス自体の歴史は意外と浅く、ヴィクトリア女王が自らの結婚式でデザインした白いドレスを着たのが始まりである。)
・救い方 時折、夜トはただ言葉をかけるだけで、相手が自ら救われるように仕向けられるシーンがある。雪音の禊で、大黒が小福を刺したとき、絵画の霊を成仏させたとき、ひよりを魔から救った、倉庫に落ちてパニックになった雪音を救った時である。これはキリストの言行録である福音書によくみられるものと近い。キリストは救いを求めてきた人に「清くなれ」「立って歩け」などと言って悪霊を祓って病を治してあと、必ず、自分の力ではなく「あなたの信仰があなたを救った」と言うのである。これは夜トの「俺は何もしてない」に似ている。これはヨトウムシではなく、羊飼いのヤコブ、人類の牧者キリストに由来するのでは無いかと考えられる。伴音に捨てられた頃の、「俺を崇め奉れ、感謝しろ」と言っていた夜トとは大違いである。雪音によって夜トが大いに変わっていったことを示す。
・聖貧 パウロは布教活動をしつつも、信徒からの献金は全て貧しい人々のために使い、自分の食い扶持は自分稼いでいるので誰にもとやかく言われることは無いとしていた。パウロの職業はテント職人、または劇場の舞台の裏方であった。雪音もバイトで稼ぎつつ、年末は毎年、夜トと野良と、コミケでテケテケ3人組を披露し、大いに人々の記憶に残っていくのだろう。

・う○い棒 ちなみにヨトウムシもシンジュサンも、木を丸裸にするだけの大喰らいだが、家蚕はそれ以上によく食べる。どんなに普通の芋虫が群れでいても、蚕時雨の大雨のような音を立てることは無く、あの音は蚕ならでは。1日に何回か桑の葉を枝ごと与える(寄生虫の卵が付いているリスクがあるのでオススメしない)か、シルクメイトという人工飼料を与える。蚕は一度桑の葉を食べると人工飼料を食べなくなる。夜トがう○い棒を10分かけて食べるのに、雪音がサクサク食べてしまうのはこのせいかもしれない。シルクメイトは緑の大きなう○い棒のようなソーセージのような外見で販売されている。

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