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西行と吉野の桜

もう10年以上前ですが、『さくらいろ*春のひかり』という、桜のミニ写真集を作って販売したことがあります。
毎年春に撮っていた桜と春の花の写真や、奈良の吉野山の桜の写真に西行法師の歌を添えてまとめました。

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当時、辻邦生の『西行花伝さいぎょうかでん』という小説にハマって、吉野山と京都にある西行ゆかりのお寺を桜の時期に訪ねたのでした。

「願わくは 花の下にて 春死なむ その如月の 望月のころ」
という歌が有名な西行法師ですが、どういう人物かはよく知りませんでした。

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平安末期の歌人である西行は名家の生まれで、本名を佐藤義清さとうのりきよといい、鳥羽上皇の警護を担うエリート集団「北面ほくめんの武士」の一人でした。平清盛は同僚の一人です。

いろいろあって、出家して歌人になるわけですが、「西行花伝」は、西行法師の死後、彼の弟子が西行に所縁のある人々を訪ねて、師のことを書き留めるという形をとっています。中には、西行の亡くなった従兄弟の魂を冥界から呼び寄せて話を聞くという章もあります。

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西洋史が好きで、日本史は苦手なので、時代小説もあまり得意ではありません。
なのに、何がきっかけで分厚い「西行花伝」を読んだのかわかりませんが、どうしていいかわからないくらい感動してしまった本でした。

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混む場所は苦手なので、桜の時期は京都・奈良に行ったことがなかったのですが、「西行花伝」とカメラを持って、はじめて春の京都と奈良の吉野に行きました。

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吉野山は「一目千本」とも言われ、手前から下千本、中千本、上千本、奥千本と、下から徐々に咲いていきます。
早朝吉野に着き、人が増える前に最初に奥千本まで登って、撮影しながら下っていきました。奥千本は、西行が庵を結んだといわれる場所で、今は小さな庵に彼の像が安置されています。

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奥千本はまだ咲いていませんでしたが、中千本あたりまでは見たこともないような素晴らしい景色になっていました。
お昼近くなってくると、かなり人が増え、そのころにはもう撮影を終えて、山を下りました。

吉野には、金峯山寺(きんぷせんじ)というお寺があり、全身青黒い肌の巨大な金剛蔵王大権現という秘仏がいらっしゃいます。ちょうどご開帳の時期で拝むことができ、その大きさと慈悲のパワーに圧倒されました。
またいつか吉野に行きたいと思いつつ、ずいぶん年月が経ってしまいました。

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「散る花を 惜しむ心や とどまりて また来ん春の たねになるべき」
とても好きな歌です。

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これは京都の御室仁和寺の御室桜。背の低い遅咲きの桜で、まだ蕾でした。

写真集のデータが残っていたので、一部をアップしてみました。
ヘッダーの写真は横浜の根岸森林公園の桜の森で撮った写真です。

今、私の家のすぐ下の桜並木は、まだ2、3分咲きといったところ。
都内は満開のところもあるようで、あっという間に桜の季節が終わってしまいそうですね。



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