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スポレートのフィリッポ・リッピ

イタリア中部、ウンブリア州にスポレートという町がある。
アッシジの語学学校に通っていた時、同じペルージャ県にあるその町に日帰りで出かけていった。

日本に住んでいると、気軽に電車に乗ってほいほい出かけていくのが好きだけど、イタリアでは電車(というか列車)に乗って、自分の住んでいる町から出かけていくのはちょっとした小さな旅行のような気分だった。(日本でも、地方だとそうなのかもしれませんね。)

スポレートはローマからだと列車で1時間半くらいらしい。日本人はあまり訪れることは少ないと思うけれど、旧市街は古くていい感じの通りもあった。

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と言っても、実はあまりよく覚えているわけではない。駅からどう旧市街に行ったのかも記憶にないし(マイクロバスが走っているらしい)、その日はたまたま雨が降ってきて、どんよりと暗く、お店もあまり開いていないような時間だったのか、人も少なかった。

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この町を訪ねた一番の理由は、ドゥオーモ(サンタ・マリア・アッスンタ聖堂)の、フィリッポ・リッピと弟子たちが制作した祭壇画を見るため。リッピはここで足場から転落して亡くなったので、お墓もここにあるそう。

フィリッポ・リッピは以前から好きで、その弟子のボッティチェッリも大好き。息子のフィリッピーノ・リッピもけっこう好きなので、どうもその系統に惹かれるらしい。

ドゥオーモの後陣に描かれた「マリアの生涯」という壁画は、正面に「聖母の死」、その上部に「聖母の戴冠」、「聖母の死」の両側に「受胎告知」と「キリストの生誕」。
「聖母の死」の足元には、リッピと息子のフィリッピーノが描き込まれている。

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「聖母の死」

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「聖母の戴冠」の天使たちが可愛い。

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「聖母の戴冠」中央部分。

色彩がとにかく美しくて、いくらでも見ていられる。すこし離れた正面に座って、ぼーっと眺めたり、祭壇画の絵葉書で手紙を書いたり。人もほとんどいないくらい少なくて、小1時間ほど静かに過ごした至福の時だった。

スポレートには音楽祭が開かれるローマ劇場があったり、水道橋があったりと見どころもあるけれど、もう行くことはないだろうと思う。ただ、あの壁画を見るためだけでも、近くを通ったら寄ってみたい町ではある。

*photo by photofran (フランチェスカ)

*参加させていただきました。



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