J2第30節 大宮アルディージャ戦 プレビュー
泉澤の離脱というアクシデントはあったものの2戦続けて3得点を挙げて快勝を収めた。
底を抜けた中で迎える今節はホームでの大宮戦となる。
3位と勝ち点で並んだが、一戦一戦勝ち点を重ねていきたい。
1.前回対戦
前回対戦は第2節アウェイでの一戦。
今シーズン初勝利を挙げた試合である。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。
2.対戦成績
今節が50試合目の対戦となるが、ここまで甲府の17勝9分23敗と大宮が優勢に進めている。
ホームでの成績を見てみると五分五分に近い成績となっている。
直近の対戦を見てみると6勝3分1敗と甲府が圧倒している。
特に2019年に伊藤監督が就任以降は4勝1分で負けなし、4連勝中となっている。
通算では大宮優勢もホームと近年の成績で言えば甲府優勢と言えそうだ。
3.前節
甲府
アウェイでの群馬戦は効率良く得点を重ねた甲府が前回対戦に続いて点差をつけての勝利となった。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。
大宮
2連勝で迎えた前節はアウェイでの愛媛戦となった。
スタメンはヴェルディ戦から一人変更。
河面に代えて松本を左SBに起用した。
立ち上がりは大宮が愛媛陣内でのプレーが多くなる。
だが、最初のチャンスは愛媛。
スローインの流れからクロスを入れると榎本が合わせるが、GKの南が反応し防ぐ。
6分には大宮が先制に成功する。
左サイドの河田から右サイドの馬渡へとサイドチェンジが通る。
フリーで受けた馬渡が狙い澄ましたクロスを入れると奥抜が合わせ、大宮が先制する。
先制した大宮がボールを保持しながら幅を使い、愛媛を揺さぶっていく。
大宮のボール保持に対し、愛媛の守備が嵌まらず一方的にボールを持たれる展開となる。
愛媛としては後ろに人は余っていることもあり、ゴール前にボールを運ばれることは少ないがリードを許している状況ながらボールを奪いに出ていけない。
時間が経つ毎に徐々にボールを奪えるようになった愛媛は馬渡の背後へロングボールを入れていく。
だが、単発な攻撃に終始し打開策を見出せない。
飲水タイムを経ても流れは変わらず、大宮がボールを保持し愛媛のディフェンスを見ながら攻撃を組み立てていく。
大宮の追加点は時間の問題かと思われたが、38分に愛媛が同点に追いつく。
DFラインでのビルドアップから栗山が右サイドへサイドチェンジのパスを送る。
右サイドで受けた小暮が縦に仕掛け、クロスを上げると藤本が合わせ愛媛がワンチャンスを物にする。
追いついた勢いそのままに4分後に愛媛が逆転に成功する。
川村のCKに西岡がニアサイドでコースを変え、ゴールネットを揺らす。
大宮が終始コントロールした前半であったが、少ないチャンスを決め切った愛媛がリードして折り返す展開となった。
共に選手交代なく、スタートした後半も大宮のボール保持が多い立ち上がりとなる。
一方の愛媛もゴール前で続けてFKを獲得するも得点には繋がらない。
すると58分に大宮が右サイドを破ると奥抜のクロスが愛媛DFに当たり、同点に追いつく。
追いつかれた愛媛だが、すぐに勝ち越しに成功する。
大宮がゴール前に攻め込むもシュートがDFに当たり、跳ね返ったセカンドボールを拾い前線で待つ藤本へ。
ドリブルで仕掛けた藤本の背後を石井が回ると藤本からラストパス。
石井が逆サイドネットに突き刺し、愛媛がリードする。
直後に大宮は菊池と奥抜に代えてイバと柴山を投入。
するとすぐに大宮が同点に追いつく。
松本からのCKに河田が合わせ、再度同点とする。
68分に愛媛は小暮と藤本に代えて忽那と唐山を投入する。
共に攻守が切り替わる展開が増えていき、オープンなゲームとなっていく。
左サイドを中心に攻め手を探る大宮だが、決定的な場面を作るまでには至らない。
79分には黒川に代えて中野を投入し、攻勢を強めていく。
80分に愛媛は榎本に代えて山瀬を投入する。
共にシュートで終われないことでカウンターの撃ち合いという展開となる。
85分には愛媛が2人の交代を行う。
石井と高木に代えて前田と内田を投入する。
87分には大宮は松本に代えて山田を投入する。
サイドからのクロスでチャンスを作る大宮だが、シュートが枠に飛ばず決めきれない。
オープンな展開が多く、目まぐるしくスコアが動いた試合は共に勝ち点1を分け合うこととなった。
4.今季成績
両チーム比較
14勝9分6敗の勝ち点51で5位の甲府と5勝12分12敗の勝ち点27で18位につける大宮の一戦となる。
勝ち点51の内、ホームでは29積み上げておりホームゲームを得意としている甲府。
大宮はアウェイでは半数以上が引き分けときっかけ一つでアウェイで勝ち点を伸していけそうな雰囲気は持っている。
甲府
2勝1分2敗と五分五分の成績となっている。
町田戦を底に上り調子となってきた。
甲府はここまでリーグ5位の得点数を誇っている。
その中で特徴的なのは得点者数の多さ。
16人もの選手が今シーズン得点を挙げている。
GKを除いた選手がシーズン開始時には25人、現在は23人でありほとんどの選手が得点を取っていることがわかる。
最大の得点元であった泉澤が離脱したものの中断明けはリラも得点数を伸ばしており、離脱して以降の2試合で不在を感じさせていない。
2試合で6点を決めているが、リラが2点を決めている以外の4点はそれぞれ別の選手が決めているようにどこからでも得点が取れるのが今シーズンの甲府の特徴となっている。
継続してスタメン起用されている選手では長谷川や野津田の得点が増えていくようだと甲府の攻撃陣の恐さはより増していくだろう。
大宮
2勝2分1敗と勝ち越している。
現在3戦負けなしとなっている。
特にここ3試合で9得点と攻撃陣は好調を維持している。
だが、シーズン全体で見てみるとリーグ11位と点が取れていなかったことが低迷している要因とも言える。
見ていただけるとわかるが、チャンスは作っておりシュートも打ってはいる。
だが、シュートが決まらなかったのが中断前の大宮であった。
中断期間中に徳島から河田を獲得したことが得点力不足の解消に繋がっている。
加入後6試合で4得点を決めており、チームも6試合で12得点とチャンスを得点に結びつけられるようになってきている。
得点の比率としてはクロスからの得点が多くなっていることがわかる。
クロスの本数もリーグで3位とクロスからの得点が多いことはチームとしての狙いが上手くいっていると言えそうだ。
一方で失点は大半がセットプレー絡みとなっている。
甲府のストロングポイントと大宮のウィークポイントが噛み合っているだけに甲府のセットプレーは注目となりそうだ。
5.予想スタメン
甲府
前節との変更は無いと予想した。
結果が出ている時はメンバーをいじらないのが今シーズンの傾向でもあるだけにスタメンは変わらないだろう。
一方でベンチには関口や鳥海が戻ってくる可能性はある。
大宮
こちらもスタメンに変更はないと予想した。
変わるとすれば左SBではないだろうか。
松本に代わって山田を起用する可能性はありそうだ。
6.注目選手
甲府
長谷川元希
大宮のアカデミー出身である長谷川にとっては初の古巣大宮戦となる。
泉澤が今シーズン絶望となる怪我を負った中、代わりに起用された宮崎は前々節結果を残した。
リラも前節1ゴール1アシストとチームの勝利に結果で貢献したが、長谷川は先発復帰後いまだにゴールもアシストも無い。
前線の選手として一人取り残されている感じもあるが、攻守共にハードワークでチームの勝利に貢献はしている。
得点という結果で育ててくれた大宮相手に甲府を勝利に導く活躍を見せたい。
大宮
黒川淳史
アカデミー時代に伊藤彰監督の元でプレーした教え子となる。
大宮のアカデミーでは浦上の一学年後輩であり、長谷川と山田の一学年先輩と縁が深い選手もいる。
水戸に在籍していた2019年シーズンには小瀬のピッチで得点を挙げ、伊藤監督に恩返し弾を見舞った。
大宮初のアカデミー出身の10番は2シーズン前の再現を狙い、残留争いに巻き込まれている大宮を救う勝ち点を恩師の前でもたらしたい。
7.展望
前節の群馬同様、大宮も前回対戦時とは監督が代わっている。
岩瀬健監督に代わって就任した霜田監督の元、降格圏を抜け出し現在3戦負けなしと好調を維持している。
残留争いをしているが、霜田監督は守って勝ち点を拾っていくサッカーはしていない。
積極的に攻撃を仕掛け、勝ちきるサッカーを目指している。
特に中断明けは6試合で12得点と攻撃陣が爆発している。
状況に合わせ、速い攻撃と遅い攻撃を使い分ける多彩さを見せるのが大宮攻撃陣の特徴となる。
まず狙いとするのは相手DFラインの背後。
前線の選手は積極的に背後を狙い、一発でゴールに迫ることを狙う。
このように一発で背後を突いていく形をまずは狙っていく。
中でも中断期間中に獲得した河田が1トップとして大宮攻撃陣を牽引している。
加入後は6試合で4得点と結果も残しているが、背後への裏抜けも前線で起点となる働きも見せる。
この場面は河田が背後を突いた場面。
続いてこちらは前線で起点となり、最終的に相手DFラインの背後を取った形。
どちらも最終的には背後を突いているように河田を中心に相手の背後を取ることを狙う。
大宮は背後だけ狙い続けるわけではなく、セットした相手の守備に対してはビルドアップからの前進を狙う。
三門がDFラインに下がり、CB2人含めて3人+相手のFWのラインの裏でポジションを取る小島とでボールを動かしていく。
前線ではWGが高い位置で幅を取ることで甲府のWBが前に出ていけない状況を作る。
こちらは上の図のようにビルドアップして前進した形。
三門がDFラインに下がり、CBと3人でビルドアップを開始。
FWの背後でポジションを取っていた小島がパスを引き出し、櫛引を経由して馬渡へと繋いだ。
このようにWGが幅を取ることでSBは浮くこととなる。
この場面では一旦スピードダウンしているが、甲府のWBのスライドが中途半端となるとサイドから一気に前進を許すこととなってしまう。
最終的に菊地がDFラインの背後へ飛び出したところへ小島からラストパスが出たが、ビルドアップからの崩しにおいては大宮としての理想的な攻撃であった。
甲府としては同数で前から嵌め込んでプレスを掛けていきたいが、これに対し大宮が取る策は小島だけでなくWGの選手がインサイドに入ることで甲府のシャドーの裏でボールを引き出し繋いで前進を図ることを狙う。
DFラインの背後を取れない時に大宮が狙うのは幅を使った攻撃となる。
同サイドでビルドアップから崩していくこともあるが、多いのはサイドチェンジからスピードアップし、サイドでの仕掛けからチャンスを作る形。
この場面はWGの黒川が幅を取り、SBの馬渡がFWと中盤のライン間のハーフスペースで構えている。
サイドチェンジを合図に馬渡が相手のSBの背後へランニングし、サイドを攻略した。
奥抜と黒川のドリブル突破が崩しの武器であるが、ボールを保持し河田で起点を作るとWGが中央に入り河田と連動して崩しを狙う。
この際はSBが高い位置で幅を取ることで攻撃に厚みをもたらす。
幅を使った攻撃ではクロスからゴールに迫る形を増やしていく。
ビルドアップで前進を図れないとシンプルなロングホールで相手のDFラインを下げさせ、セカンドボールの回収からスピーディーな攻撃を仕掛けていく。
この際も奥抜と黒川の仕掛け、前への推進力が大きな武器となる。
スペースを与えると危険なため、前から嵌め込みプレスを掛けるのに合わせハイラインでコンパクトさを保ちたい。
新井のラインコントロールは今節も鍵を握りそうだ。
ボール保持を許した大宮はハイプレスとブロック形成を使い分ける。
ハイプレス時には前線から人を捕まえにプレスを掛け、ボールを奪いに出てくる。
3バックに対しては河田+菊池とWGの中から2人が同数で嵌め込む形でプレスを掛けていく。
ボールを奪った直後は大宮が人を捕まえに出てくるため、京都戦のようにシンプルに背後へ流し込むことも必要となる。
プレスを掛けていく大宮だが、DFラインが上がりきらずオープンな展開を許すことも多くなる。
中盤のラインの裏で長谷川や宮崎が前を向き、仕掛けていく展開を作りたい。
そこで奪いきれないとブロックを構える形へと移行する。
ブロックを作った大宮はトップ下の菊地が河田の横に並ぶ形で442の形でブロックを敷く。
甲府はいつものように可変を行い、ビルドアップして前進していくことを狙うこととなる。
押し込むことでWBが高い位置で幅を取る形で大宮の4バックに対して、前線5人で崩していく。
ハイプレスでもブロックを敷く形でも大宮は内を締めながら外へと誘導し、ボールの奪い所をサイドとする。
外へ誘導する形を作っているが、河面の欠場もあり左サイドの守備には不安を抱えている。
こちらは愛媛が右サイドを突破し、得点に繋げた場面。
この形は大宮が狙いたい形でもあるが、甲府目線で見ても宮崎が一対一の仕掛けから突破を狙うことに置き換えることができる。
こちらは群馬戦で荒木がSBの背後を突いた場面。
独力での突破だけでなく長谷川や宮崎がライン間で前を向き、WBが背後を狙うことでの崩しも狙えるのではないか。
攻守共に全体的にハイテンポなサッカーを展開する大宮だが、後半にガス欠となり足が止めることが多くなる。
前半から付き合う形でオープンな展開の中で行ったり来たりという展開よりは前半はコンパクトな陣形を保ち、リスクを犯さない展開に持ち込み交代選手を活用しながら足が止まったところでギアを入れる戦い方が良いのではないか。
このように大宮は間延びしてオープンな状況が多いてめ、選手交代で三平や中村とスペースに飛び出していける選手を投入し、オープンな大宮ディフェンスを攻略していきたい。
いずれも京都戦で途中出場した中村がSB裏を突いてカウンターを仕掛けた場面。
このように積極的にオープンスペースを突いていく形を途中交代の選手で作り、90分間で勝ち点3を掴む展開としたい。
大宮の多彩な攻撃陣を防げるかが今節のポイントとなるだろう。
幅、深さ、高さとあらゆる手を使い甲府のゴールに迫ってくる。
ボール保持を許し、耐える時間も多くなるだろう。
前節の群馬のように残留を争っている順位のチームとは思えないチームであり、群馬以上にクオリティの高いチームであるだけに前節のようにチャンスを数多く与えていては失点を許すこととなる。
だが、大宮の圧を防ぐことが出来れば甲府にもチャンスは訪れるだろう。
京都や群馬ほどの守備の強度や安定感はない。
チャンスは作れるはずで、後は決め切れるか。
簡単な試合とはならないが、勝ちきる試合としたい。
8.あとがき
昇格圏の背中は遠いままであるが、3位と勝ち点が並んで迎える今節。
大宮出身者が伊藤監督を始め、甲府には数多くいるため縁の深い相手ともなる。
甲府のチーム状態は中断明けの勝てない底からは脱したが、3位以下は混線のため1試合の結果で順位は大きく変化していく。
目先の順位に囚われず、一戦一戦勝ち点3を積んでいくことが今は必要となる。
勝つことで次に繋げる一戦としたい。
大宮にも同じことは言えるだろう。
中断明けの出来を考えると残留は可能であるように思う。
だが、残留争いとはそんなに簡単なものではない。
それは大宮アルディージャというクラブは良く理解しているかと思う。
確実に上がり目となっているだけに今の状況を維持して残留争いから抜け出し、一つでも上の順位を目指すきっかけとなる一戦としたい。
今節の大宮も確実に強いです。
順位だけを見ては痛い目を見ることとなる。
豊富なタレントを揃えるチームでも残留争いに巻き込まれているシーズンであることを考えると今シーズンの甲府は良くやっていると言えるだろう。
それでも昇格を目指しているなら3位であっても18位であっても大した差はない。
私たちのホームは夢叶う場所。
夢を叶えるためには勝ち続けるしかない。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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