てらうち@牛の獣医師

栃木県の牛の獣医師です。現場にいるけど牛飼いじゃない立場から、食とか、持続可能性とか、…

てらうち@牛の獣医師

栃木県の牛の獣医師です。現場にいるけど牛飼いじゃない立場から、食とか、持続可能性とか、動物福祉とかについて。情報発信というより、思考の足跡です。 仕事に関するブログはこちら https://wordpress.com/view/vetterra.wordpress.com

最近の記事

EUで森林破壊を食い止めるための新ルールが発効

気づけば一年間も更新をサボってしまったので 雰囲気を変えて、気になったトピックをザクっと紹介していこうと思います。 https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/05/16/council-adopts-new-rules-to-cut-deforestation-worldwide/ EU公式サイトからの引用です。 要約すると、 EUは2021年以降の指定生産物に対して、その生産過程で森林破壊

    • 国産の肉は環境にやさしい、はウソか。

      持続可能性に配慮するなら、国産の肉を食いましょう、なんてウソっぱちだ!と言われたら 単純に否定できません。 日本で牛を育てるのは、世界の主な生産国よりも環境負荷は少ないと言えます。 でも、エサをかなり輸入に頼っているので その膨大な量の輸送と、飼料の原材料の生産については 環境に大きな負荷をかけています。 国内で生産されているエサもありますが、大部分は輸入です。 エサも国内生産を主体にできたら、もっと地産地消で素晴らしいじゃないですか! というのが今日のお話。 牛のエ

      • 持続可能な畜産は国産消費から

        前回のつづき 「持続可能な畜産」というか、これからの世界の畜産と気候変動がどう変化していくのか、個人的な推測を語りました。 間単にまとめると 世界はざっくり先進国と途上国でわけて考えます。 先進国は、主にEU的な価値観で、代替肉や培養肉が盛り上がるし そもそも肉を食わない選択が増えると思います。 ただ、もともとが肉を食いすぎなので、消費が減ったところで日本人の平均よりも消費量が少なくなるのかは疑問です。 途上国からすると、先に環境を破壊して発展した先進国のルールで縛

        • 講義の終わりから探求が始まる

          4月の「持続可能な畜産とは」の講義から 一週間後に獣医師で同じテーマを考える企画をやったり 講義を聴いた方から個人的に話を詳しく聞きたいという面談が2件あったり そういったやり取りや、改めて考えをまとめる作業から 自分の考えがアップデートされていく過程を なるべく公開していきたいのだけれど なかなか時間との闘いに勝てない。 きれいにまとめるのではなく 喋るように書いていこう。 書きながら考えるので、読みにくいこともあると思う。 それはご愛敬。 講義で話したことも、すで

        EUで森林破壊を食い止めるための新ルールが発効

          ヴィーガンについて話したいけど

          こんなに心血を注がれた文章をいつぶりかに読んだ。 まずは四の五の言わずに、これを読んでもらいたい。 長いけど、一気に読めると思います。 何かを考え、学ぶとは、これくらい身体的なことなんだと感動した!! これを読んで共感する人もいるだろうし さらにその結果、むしろヴィーガンに向かう人もいるだろう。 畜産関係者にとって読んでいてつらい面も、嬉しい面も両方を 全身全霊の体当たりで取材されていて 気持ちが良いし、嬉しい。 今週末にせまる「持続可能な畜産とは」の講義で 肉食

          ヴィーガンについて話したいけど

          畜産の未来に僕が思い描くこと

          持続可能な畜産について書いていくnoteですが オンライン講義の日程が近づいてきたので この辺で僕の基本的な考え方を書いておきます。 僕は牛の獣医師で、豚や鶏には詳しくないので、牛のことが中心です。 ※ 本番前の下書きとして考えを整理しているのをのぞき込んでいるような気持で読んでいただけたら嬉しいです。 講義を聴く気はないけど結論は教えろ、という方向けに シンプルにリズミカルに見解は3つ ①畜産が なくなりゃせぬが 消費量 生産量も 減っていくよね ②食うならば

          畜産の未来に僕が思い描くこと

          COTENRADIOを聞きながら畜産業界のこれからを妄想して

          牛の獣医師はだいたい車に乗っている、と言っても過言ではありません。 ペットと違って動物病院に牛を連れてきてもらうこともできないので 牛の獣医師はあらゆる薬と診療道具を載せた車で 牧場を往診して回るのが基本になります。 なので、運転中の耳の友は獣医の個性が表れるわけですが 僕はインテリぶって【COTEN RADIO】という、歴史の話を超分かりやすく解説してくれるpodcastをよく聞いていて 今日も、過去の事実から言えることと、安易に言えないことのわかりやすい整理に

          COTENRADIOを聞きながら畜産業界のこれからを妄想して

          「いい牧場」が、ナンボのもんじゃい

          前回の続きです。 「社会に必要とされる牧場」とか 「社会の公器としての牧場」とか ムズかしくエラそうなことを書きました。 前回の僕の記事にはツッコミどころがあります。 ・「いい牧場」って結局どんな牧場なのか、やっぱりふわっとしてる。 ・「いい牧場」じゃない牧場は、あっちゃいけないの? ・「いい牧場」がいくつかあったところで、畜産業や社会が持続可能になるの? 僕が読者として突っ込むとしたら、こんなところでしょうか。 読者によっては、まだいくらでもあるでしょう。

          「いい牧場」が、ナンボのもんじゃい

          牧場の八方よし ~「良い牧場」とは~

          「持続可能な資本主義」という本をご存知でしょうか。 今回は過去に読んだのとは違う視点、すなわち本書を「持続可能な畜産」のアナロジーと仮定して読んでみた感想を書いていきます。 つまり、本書の随所に出てくる「資本主義」を「畜産」に読み替えて、頭の周りに立ち上がってくるイメージをつかむという作業です。 概要は、利益の追求だけを目的とした資本主義は限界にきているし、それを薄々みんなわかっているけど簡単にやめるとこはできない。 それでも、これまでは違う価値基準の「いい会社」が投

          牧場の八方よし ~「良い牧場」とは~

          持続可能性と畜産について

          1発目の記事です。 一か月後に「持続可能な畜産とは」というテーマでお話をする機会を頂き 秋ごろにはまた別で畜産と環境に関する記事を寄稿する予定もあるので その準備で目を通す文献や、ぐるぐる考えを巡らせた足跡を記録していこうと思います。 持続可能性ってなんでしょうね? 誰かへ語るのであれば、主体を明確にしないと考えがすれ違ってしまうと思うんです。 「持続可能な畜産」を考えるなら 「地球が持続可能であるために畜産はどうあるべきか」なのか 「持続可能な社会をつくるた

          持続可能性と畜産について