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ソウル2003年*銭湯の卵



韓国の住宅には湯船が付いてない場合が多かった。そのため銭湯、サウナ含めたチムジルバンという韓国の温浴文化が充実したとたしか聞いた。

庶民が集う銭湯的なものから、高級エステ美容まで含めたもの、大人数収容型などなど街には様々なタイプの施設があった。

私とメロンも、平日はシャワーだけなので、週に一度近所の銭湯へ行った。ただ、ここは湯船が適温でなく(水、超ぬるま湯、高温の3つ)ゆっくり浸かれない。

そこで今日は、以前泊まっていたコンドミニアム地下の銭湯まで遠征した。韓江(ソウルの大きな川)を渡って江南側。洗面道具着替え一式を抱え地下鉄に乗る。

早い時間帯だから。広い浴室が貸し切り状態で私はメロンにヒョイと平泳ぎを見せてあげた。

「ママ泳げるの? すごいすごーい」と褒められる。

さて、タイトルの謎卵。休憩室に常時30個くらいが山積みされてて、前から気になってた代物だが、今日メロンが解決してくれた。

先に着替えを済ませ、ひとりで休憩室へ入るメロン。滞在中もよく来てたので、我が家のように冷蔵庫からジュースを取り出す。

ガラス張りだから、ときどき様子見してると、知らないおばさんとメロンが並んで例の卵を食べていた。

急ぎ身支度を終わらせ、私も休憩室へ。気づいたおばさんは手際よく殻を剥き私にもひとつくれた。

お食べ、という顔で。

大阪人をも圧する、この[韓国における他人との距離感]笑。住んでみて驚いたランク、かなり上位の文化だ。

この銭湯でも、知らないおばさんたちが、よくメロンにジュースやみかん、果物をくれる。子供を可愛がってくれて嬉しいのだが、自分の水筒から直で何かを飲ませてたときは、さすがに慌てた。

また、すべて浴室内でのことだ。
飲食物はもちろん、パック用ヨーグルトやきゅうり輪切り(や、擦りおろし)を持ち込み、みな浴槽側でもくつろぐのだ。

卵を剥いてくれたおばさんも従業員でなく、普通の一般客、だが、なぜか主のように卵をふるまっている。卵も謎だが、おばさんも謎だ。


感触からして
ゆで卵以外の何ものでもないが
いちおう問うてみた。

「これは、なんですか?」

「卵」

アンタ馬鹿なのという表情でひとこと。

ですよね、はい。

いや、あの、私は、なぜ卵がいつもあるのか、何味なのか、日本では温泉卵というのがありまして云々の話がしたかったのよ

けど滞在ひと月で会話に自信無いし、卵と言われてそこから先が続かない。

不甲斐ない自分にシュンとする私の横で、メロンは

「これ美味しい。もいっこ食べていーい?」

普通に日本語でおばさんに尋ねた。おばさんは黙ってまた手際良く殻を剥きメロンに手渡す。

あにゃここは東京?

まあ、ええか。私も食べてみよう。

固茹でだった。白身部分が薄茶色で煮卵かと思ったが醤油味はしなかった。

お腹を壊した。気持ちも悪い。

卵のせいかと思ったが違うようだ。二つもたいらげたメロンはスヤスヤ眠っている。

私の体調が悪かったのか?


はっ。

我が子が喜ぶからと平泳ぎクルクルしてたら、のぼせたんや。そこから謎おばさんand謎卵。

きっとそれやね。

てかアータ、大人のくせに湯船で泳いではいけませんのやで。自業自得だ。寝よう。

【あとから調べると、これはサウナ熱を利用して作られた燻製卵だそうです。それでちょっと茶色だったのですね】

続く



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