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ニコレッタ@
2022年6月17日 22:12
「ワシの誕生日は三つくらいあるんや」フミオはそう言うと、マッチでショートホープに火をつけた。「役所へ届けたのも学校に出す書類も毎回ちごうとった。だいたいそのへんやろって。まあ昔はみんなそんなもんちゃうか」まるで他人事のような口ぶりだ。周囲が「大変ですね」「かわいそうに」「えらいことなりましたな」と言う時ほど「世の中そんなもんじゃ」と、軽く流す。逆に他人にとってはどうでもいいことが、フミ
2022年6月24日 20:29
【3話はフミオの妻となる三枝子目線です】 親に言われるがまま、初めて見合いをしたら、1週間後には結婚が決まった。 3ヶ月後にはフミオの嫁になった。 三枝子の気持ちは重要視されなかった。 身体が弱く入退院を繰り返す父に代わって、母が懸命に働き5人の子を育てた。三枝子は長女で弟と3人の妹がいる。 母の願いはただひとつ、娘たちが成人したら順にお金持ちの家に嫁がせて、安心することだ
2022年7月29日 20:50
「ここへ座れ」 フミオが娘の樹里を呼んだ。 畳に胡座をかいて腕を組んでいる。 「今からパパが大事な事いうからな。しっかり頭に入れろよ」 「なに?」 樹里はチラッと壁の時計を見た。 明日は中学の入学式だ。 ハンカチとティッシュ メンソレータムリップ 髪を結ぶゴムも探さないといけない。 忙しいのに大事な話て、何なのだ。 何でも良いけど短く済ませ