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芝生と私と反抗期と

 沖縄が梅雨入りして何日か過ぎた。今年は梅雨入り前までに結構な豪雨が何度もあったけれど、梅雨入り宣言後は専ら空梅雨の空模様だ。時々ぱらぱらっと降っては直ぐに止む雨。それでも梅雨入りしたらば夏はすぐそこ。あの季節がやってくる。そう、芝生が成長旺盛な夏だ。

 数年前に一軒家を購入して、庭を持つことができた。凝った植栽はない一面芝生の庭だ。田舎暮らしなので面積だけは広く、10✕15㎡くらいは個人(一人)で管理する自宅庭としてはギリギリの大きさだと思う。これ以上広くなると管理できる自信がない。芝生って勝手にあんな風(ゴルフ場のグリーンみたい)になるものだと思っていた。実際に自宅の庭として芝生を管理するまでは。

 肥料も必要だし、晴天が続くと水を撒かなければいけない。また、成長期である夏には最低一ヶ月に一度は芝刈りを行わなければ、すぐにボーボーに生い茂ってしまう。本当に手がかかるのだ。芝生は。それでもここ数年は頑張って管理してきた。伸びれば芝刈りして、デコボコの地面があれば砂を入れて、雨が降らないと雨乞いと水撒きをして。しかも今年は思い切って短く刈り込み、芝生のリセットを試みている。上手く行けば庭でパターゴルフができるようになるはずだ。

 そんな大変な作業を定期的に続けられているのは、多分高校生の長男の反抗期真っ盛りのおかげなのだと思う。

 ここ数年、長男が反抗期真っ盛りなのである。それはもう超を付けても足りないくらいの反抗期。ジェームス・ディーンよりも反抗期。元々子供っぽいところがあるせいなのかもしれないし、父親が悪いのかもしれないし。とにかく父親と口をきかない。話しかけても基本無視する。良かれと思い助言したところで、ふふんと斜に構えて冷笑されるという罰ゲームを受けている。まぁ、私にだって振り返ってみればそんな時期があったかもしれない。いや。あったな。なので、ここ最近はあれこれ口出しするのは止めにして静観することにしている。小さい頃はあんなに素直で可愛かったのに…なんてことは子育て経験者なら誰しも経験があるのではなかろうか。思った通りには育たないなんて当たり前だ。そう思うことにしてからは幾分私の気持ちも落ち着いてきた。

 そこでだ。庭の芝生なんである。

 芝生に限らず植物の世話って、セオリー通りやれば大方上手くいく。上手くいかなくても何とかリカバリー出来たり、最悪枯らしてしまっても人生が台無しになるわけでもないし。きちんと肥料や水をやって、定期的に芝刈りを行う。それだけで大体のこちらの期待に応えてくれる。反抗期の長男と違って。長男の反抗期罰ゲームを植物の世話で癒やす。だから芝生の管理が楽しくてしょうがないのかもしれない。

 いくら子育ての経験を積んできても、子供がどんな人間になるかなんて所詮分からない。教育書に書いてることなんて後出しジャンケンだろ。あんなに手間をかけたのに、ちっとも思ったふうに育たないじゃないか。まぁ、私だって親の期待通りに育ってはいないんだろうけど。多分。

 まてよ。

 芝生に過保護が必要なのは夏の間だけだ。冬場はほとんどすることがないのでほっぽらかしなんである。冬場はほとんど成長しないので放任期間なのである。そうか。子育てもそうか。長男、今は冬の時期で親の関わりを必要としてないんだろな。そうか。そうか。そうなんだ。

 今、曇っている空。この先は豪雨になるのか陽が差すのか。天気予報もあてにならないこともまだまだある。人生の先輩として先に反抗期を通ってきた者として、もうしばらく待っててやろうか。長男を。今日も一人芝刈りをしながら44の父親はそんなふうに思っている。




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