見出し画像

【サイドストーリー】

オリジナル曲は作詞をするにあたって、いろんなストーリーを膨らませています。


サイドストーリー

性さが(日本酒)


最近歌を習い始めたの。ほら、いつかちゃんと歌を勉強したい、って言ってたでしょう。いつか、いつかで何十年も経っちゃったから、今かな?と思って。

久しぶりの再会に、コートを脱ぎながら私は一気に捲し立てた。

私の話を聞いているのか聞いていないのか、全く分からない様子で、升に入った酒を美味そうに飲んでいた。

そもそも、私が隣に座ったことにも気づいたのだろうか?

― 弾いてる?

続けて私が尋ねると、酒に口を当てたまま目だけをこちらに寄越した。

― 弾いてない。

短く答えて、また升に口を運んだ。

予想通りの答えではあったが、軽く落胆をしたのは事実だった。弾いてないあんたになんか全く興味が持てない。と、喉元まで出て、目の前に置かれた冷酒と一緒に飲み込んだ。

あんたの演奏が大好きだったし、弾いてる姿に惚れたんであって、何もないあんたなんかまるで魅力はない。と、あの日私は、心の中で一番ドロドロした言葉をぶつけた。そして別れた。

あんなことを言ってしまったことに後悔したこともあった。今でもあの時の感情を思い出すと胸の奥がキュッと痛くなる。

そんな私のことをわかっているのか、いないのか、昨日の続きのように居酒屋のカウンターで隣に座る横顔は、イライラもするけど、落ち着く。

落ち着く。そんな感情を抱く自分がいる。それが偽りのない気持ちで、だからこうしてここに来たのだ。いつも仄かな期待を抱き、いつか私の気持ちが届くのではないかと、遠くから願い、永遠に忘れられない人になっていた。


― いつか、一緒に演(や)ろうよ。

私は、独り言のように言った。


いつか、いつかで・・・




「性(さが)」


風の吹かない渓谷

隠しきれない慟哭

胸に隠す刀の鞘が少しずつ

抜かれていることに気づいていたはずで

月夜に隠したdirty guilty

流した涙を隠せない


狡猾な嘘を見抜いて

素知らぬふりができない

背中を見せて小さくため息ひとつ

わざとらしい落胆を見せつけている

手にした刀を振り下ろし

あなたを殺めて良いですか



狂気に触れる渓谷

抜かれた刃(やいば)の光

二つの影を写し出す月の妖し

叫ぶ声は私の心に響いて

時間を止めて巻き戻す

風を起こして巻き戻す


美しい花の運命(さだめ)

花は咲いたら散るだけ

ハラハラと宙を舞う花びらを全て

両手で集めて土に埋める儀式を

輪廻転生(りんねてんせい) 

何度でも繰り返してる 

罪ですか

寄せては返す波のよう
繰り返すのは 性(さが)ですか


風の吹かない渓谷

隠しきれない慟哭

胸に隠す刀の鞘が少しずつ

抜かれていることに気づいていたはずで

月にかくしたdirty guilty

流した涙は隠せない


狡猾な嘘を見抜いて

素知らぬふりができない

背中を見せて小さく溜息ひとつ

わざとらしい落胆を見せつけている

手にした刀を振り下ろし

あなたを殺めて良いですか



狂気に触れる渓谷

抜かれた刃のひかり

二つの影を映し出す月の妖し

叫ぶ声はわたしの心に響いて

時間を止めて巻き戻す

風を起こして巻き戻す


美しい花の運命(さだめ)

花は咲いたら散るだけ

ハラハラと宙を舞う花びらをすべて

両手で集めて土に埋める儀式を

輪廻転生 何度でも

繰り返してる 罪ですか

寄せては返す波のよう
繰り返すのは 性(さが)ですか



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?