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これから読書を始める人のために

新しい季節が来て気分も一新、読書でも始めるか!という人のための記事です。もしそういう気分にならない人は、この「新しい春に向けて、読書のすすめ」を読んでそういう気分になってきてください。

この記事では基本的に、これから読書を始めてみようかな、という人に対して読書案内をするつもりです。が、本題に入る前に、読書初心者の方はどんなふうに本を読んでいけばいいのか、簡単なアドバイスをしておきたいと思います。

※「幻想文学」「海外文学」「日本文学」のブックリストを増補しました(2021年7月22日)

〇ほんのよみかた

・しんどかったら途中でやめる
まずは肩ひじ張らないことが大切です。気合を入れて、「よし、ドストエフスキーの『罪と罰』を読もう!」とか「三島由紀夫の『金閣寺』読もう!」とか急に難易度の高い本から始めると失敗しがちです。面白いと思えればいいのですが、いわゆる純文学の本はいきなり読んでも挫折する場合が多いからです。

ライトノベルでもなんでも、まずは自分が面白いと思える・思えそうな本から入りましょう。逆に、つまらないと思ったら途中でも読むのをやめていいのです。一冊の本を読み通さなくてはいけない、というのは学校的な価値観です。趣味なんですから自由に読みましょう。

「でも、せっかく買ったのに途中でやめるのはもったいない……」と思う人もいるかもしれません。そういう人は、最初から図書館で借りてタダで済ませるとか、友達と交換するとかしちゃいましょう。つまらない本を無理して読み通しても、そのあと本を読む気がなくなってしまうだけです。

・時間をゆっくりかける
世の中には速読のハウツー本のようなものがいくつか流通していて、早くたくさん読むのがいいことだとされていますが、本の中にも早く読める本とそうでない本とがあります。早く読めるのは情報だけ仕入れればいい実学書、ゆっくり読んだ方がいいのはストーリーや文章自体を楽しむ文芸書です。

最初の内は本を読むのに時間がかかってあせるかもしれませんが、慣れてくればスピードも上がりますので、のんびりゆっくりストーリーを楽しみましょう。

一応、仕事の関係で速読が要求される人に向けて言っておけば、最初の数冊くらいは丁寧に読むといいでしょう。あとの本は、最初に読んだ本と重なっているところを飛ばしながら読めば、効率がかなり上がります。また、どんな本でも紹介されているような内容は、その業界では基本的な前提事項となっている場合も多いので、押さえておいた方がいいでしょう。

・電子書籍で
「本を読みたいけど、ついついスマホに手が伸びてしまう……」という人は、電子書籍で読んでみましょう。Kindleなんかは、スマホアプリ版が存在し、スマホでも読書を楽しむことができます。

スマホを見ている状態から本を読む状態がシームレスにつながることで、スマホ中毒から抜け出せる可能性はぐんと上がります。

また、スマホだと手軽に持ち運べて短い待ち時間でも有効活用できるのがGoodですね。

〇なにからよむか

さて、では読書に取り組んでみるとして、なにから読めばいいのでしょうか。

本記事では主に2種類の本を紹介します。
①教養のための本(本を読んで教養を身に着けたい人のために)
②娯楽のための本(新しい趣味を開拓したい人のために)

①教養のための本

大学に入ったから何か新しいことを学びたい、あるいはビジネスマンとして基礎的な教養を身に着けたい。別に本なんか好きじゃないけど……。というツンデレの方のために、教養を身に着ける上で有益な本のジャンルを紹介しましょう。

それは、新書と呼ばれるものです。よく見かける文庫本サイズの本よりも縦に細長いのが特徴です。

新書のすばらしいところは、薄い・安い・読みやすいと3拍子そろっているところです。多くの本が200ページ前後で数百円、かつ専門的な内容をわかりやすく伝えてくれています(新書なのにすごく難解な本もしばしば存在するのですが……)。

これ、実はすごいことです。新書を書くのは、多くの場合その道の第一人者の先生で、その大先生の数十年分の研究から、専門外の人にとって分かりやすい内容を抽出して伝えてくれているのが新書なのです(……理想としては)。

大先生の数十年分が数百円で買え、しかもそれが200ページ程度にまとめられている!これは大変なことです。普通に同じ条件で学ぼうと思えば、数万円はかかります。

もちろん最近は新書の種類も増えており、必ずしも大先生渾身の一冊……というものばかりでもないのですが、岩波新書や中公新書あたりならまだまだその手の新書が数多くあります。

抽象的なセールスだけしててもなんですから、具体的に何冊か挙げてみましょう。

・宮崎幸治「ケーキの切れない非行少年たち」

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非行少年たちの行動の裏には、そもそも基礎的な認識能力の不足があった。基本的に「道徳」や「倫理」の問題として考えられている非行を認識の問題に置き換えたという点で、興味深い一冊です。

・福岡伸一『生物と無生物のあいだ』

細胞は自らを破壊しつつ再構成している―この「動的平衡」という作用について分かりやすく語った著作。生物を専門としない方にこそおすすめです。

・東浩紀『ゲンロン戦記』

批評家・思想家である東浩紀さんが立ち上げた企業「ゲンロン」。創立10年を経たゲンロンの波乱万丈を語ります。書類を入れるファイルボックスが実は大事、みたいな非常に地に足ついたエピソードが特徴。

・佐々木幹郎『中原中也』

中原中也という詩人の簡潔な紹介です。中也の詩は「よくわからないけどなんか素敵!」みたいな感想も多いのですが、そのあたりをうまく言語化してくれています。

他の文学者だと、荒木優太『有島武郎――地人論の最果てへ』や佐藤秀明『三島由紀夫:悲劇への欲動』、安藤宏『太宰治:弱さを演じるということ』なども出版されております。もちろん、夏目漱石や村上春樹など、代表的な文学者は、彼らのついての新書が何冊も出ています。教科書などで読んで、印象に残った文学者についての新書を探してみてもいいかもしれません。

小森陽一・成田龍一・本田由紀『岩波新書で「戦後」を読む』

タイトル通り、岩波新書を通して戦後日本を読みといていく本。歴史について学ぶと同時に、どの新書が重要なのか知る読書案内にもなっています。

上野千鶴子『情報生産者になる』

主に社会学の研究方法について書いてある本ですが、他分野の研究、いえ、ありとあらゆる「学習」「発信」のためのハウツー本として使える本です。上野千鶴子は社会学では絶対に外せないほど大きな業績を持っている学者なので、記述の信頼度が高いのもポイント。

また、新書以外にも講談社学術文庫やちくま学芸文庫など、手ごろな教養系のレーベルもあります。

まず第一におすすめしたいのが、苅谷剛彦『知的複眼思考法』です。

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物ごとを多角的に見る大切さが記されているだけでなく、具体的にどのようにして視点の多角性を確保していけばよいか伝えてくれている良書中の良書です。僕が新大学生や新社会人になにか一冊勧めるとしたらこの本です。

・外山滋比古『思考の整理学』

大学生協の書籍部に行くとよく平積みされている本。アイデアの出し方や思考の展開方法が書かれており、実際いい本です。詳しくはこの記事で書評してます。

野矢茂樹『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』

ウィトゲンシュタインという偉大な哲学者に『論理哲学論考』という大変難解な著作があります。「語り得ぬことは沈黙しなければならない」という一文が含まれた本だと言えば、ピンとくる人もいるのではないでしょうか。

本書は、僕が知る限りその『論理哲学論考』に関する最もわかりやすい解説書です。もちろん元の本が難しいのでラクラク読めるというわけにもいかないのですが、「哲学って興味あるけどどこから入っていけばいいんだろう……」みたいな方は読んでみるといいかもしれません。

②娯楽のための本

遊ぶ場所も閉まってて退屈だし、この際だから本でも読んで暇つぶしするか!という人に向けたブックリストです。ちょっと数が多くなるので、リンクを貼るのは一部だけにしておきます。

〇ミステリー

単純に楽しく読めるという点で最もおススメできるのはミステリーです。普段本を読まないという人でも、「犯人誰だ!?」という興味だけで十分読了できます。

伊坂幸太郎『重力ピエロ』

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街を襲う連続放火魔、それを予告するようなグラフィティーアート。その謎に泉と春(両方spring)兄弟が挑みます。さまざまな謎がちりばめられつつ、それらが一気に解決されていく快感はまさにミステリーの醍醐味。

伊坂幸太郎の他の著作だと、複数の人物の行動がバラバラに提示されつつそれが巧妙ににつなげられていく『ラッシュライフ』、麻雀あり恋愛あり強盗犯との対決ありの大学生活4年間を描いた青春小説『砂漠』、大統領暗殺の犯人に仕立てられた主人公が逃げまくる『ゴールデンスランバー』などがおすすめです。

米澤穂信『氷菓』

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アニメの方が有名かもしれない『氷菓』。とある高校の「古典部」の部員たちが、学校に潜む謎に挑みます。ライトノベルに限りなく近いので読みやすく、キャラクターも可愛く作られています。その割に謎解きがけっこうしっかりしているので、読書の「入口」としておススメです。

米澤穂信には、他にも似たテイストのほんわかビターミステリシリーズ『春期限定いちごタルト事件』(「小市民シリーズ」)、がっつりビターな『儚い羊たちの祝宴』『満願』などがあります。どれもミステリとして質が高いのでおススメです。

他には、

・ある一つのトリックが全編を引っ張っていく東野圭吾『容疑者xの献身』
・ありそうでなかったトリック、最後に気持ちよくだまされる歌野晶吾『葉桜の季節に君を思うということ』
・中二病の見本のようなかっこよさ、京極夏彦『姑獲鳥の夏』
・アニメ化もしたミステリホラー、クラスメイトが次々怪死を遂げる綾辻行人『Another』
・「レベル7までいったら戻れない」という謎の文言を追う宮部みゆき『レベル7』
・一転二転三転、怒涛のどんでん返しを見せる麻耶雄嵩『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』

あたりが面白いかと思います。

〇SF・ファンタジー

世界観や設定で楽しく読め、ゲーム・アニメ的雰囲気もあるので誰にでも読んでいただけるジャンルです。

貴志祐介『新世界より』

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ざっくり言うとディストピア小説です。少年少女たちが、一見のどかな村での生活に隠された世界の真実を追います。上中下巻あり重厚な世界観が織りなされているのがポイントです。

ちなみに貴志祐介には学校での連続殺人を描いたサイコホラー『悪の教典』や、無人島での生き残りサバイバル『クリムゾンの迷宮』など名作がそろっています。特に後者は、マイナーですがかなり面白いので、おすすめです。

伊藤計劃『虐殺機関』

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各地で起こる内乱、虐殺。その原因と思われる男を追う米軍大尉の主人公は、思わぬ真実を知ることになります。「虐殺の文法」とは……?

文体は観念的でやや読みにくいですが、それが逆にこの小説の魅力です。『虐殺機関』が気に入ったなら、続編にあたる『ハーモニー』『死者の帝国』も読んでみるといいでしょう。どれも才能を感じさせる筆致で、作者の早世が惜しまれます。

SF・ファンタジーなら、他には

・「塩」に侵略される世界を救おうと奮闘する有川浩『塩の街』
・宇宙の秘密を解き明かす壮大なミステリー仕立てのSF、ジェームズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』
・5分で読めるショートショート、星新一の『ボッコちゃん』
・超メタ小説、筒井康隆『虚人たち』
・戦争がショーになって時代、少年飛行士らの乾いた殺し合いを描く森博嗣『スカイ・クロラ』
・タイムパラドックスを一番「悪用」した小説、法条遥『リライト』
・完結がいつになるかわかんないけどとにかく面白い異世界ファンタジー、小野不由美「十二国記」シリーズ
・ど定番、上橋菜穂子『精霊の守り人』

あたりがよいでしょう。あと、『ハリー・ポッター』は映画好きだった人なら原作を読むのもおすすめです。特に後半の巻になると、映画では省かれていたあれやこれやがたくさんでてきます。

〇青春小説

高校生、大学生の人は共感しながら、社会人の人は昔を懐かしみながら読むことができます。

森見登美彦『夜は短し、歩けよ乙女』

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京都の大学生のドタバタを描いた小説。なにも考えずに読めるのがいいところ。高校生のとき偶然この小説を読んで、面白すぎて京大を目指そうかと本気で考えました。同じ作者なら、『四畳半神話大系』や『聖なる怠け者の冒険』あたりが似たようなテイストです。違う作者ですが、万城目学の『鴨川ホルモー』あたりも同系の小説で面白かったです。

森見登美彦は多才な人で、デビュー作はSF小説『太陽の塔』。他にも『ペンギン・ハイウェイ』というSFを書いています。また、文学作品のオマージュ『新訳走れメロス』、ホラー小説『宵山万華鏡』『きつねのはなし』などさまざまなジャンルの本を書いています。そのたびに文体も使い分けており、才能を感じさせる書き手です。

他には、
・まさかの主人公が登場しない小説、スクールカーストのゆるやかな変容を描いた朝野リョウ『桐島、部活やめるってよ』
・魅力的な文体、キャラ同士の掛け合いが楽しい西尾維新『化物語』
・ミステリであり、かつ音楽青春小説でもある中山七里『さよならドビュッシー』
・上京少年が都会に振り回される夏目漱石『三四郎』
・大人気映画のノベライズ、花札で世界の危機を救う『サマ―ウォーズ』
・少女のどろどろした自意識と性への目覚めを描いた村田沙耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』

あたりがおすすめです。青春小説はライトノベルと呼ばれるイラストがふんだんに使われたレーベルが強さを発揮するジャンルであり、読みやすい本が多い印象ですね。

○幻想小説

不思議な世界、夢の世界を扱った小説。いかにして雰囲気や世界観を演出するか、作家の筆力が試されます。

・内田百閒『冥途』

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夏目漱石の弟子、内田百閒は夢小説で有名です。夢の中の、論理がつながっているようでつながっていない不思議な世界。それを言葉にするのは簡単ではないでしょうが、百閒は見事に夢を小説にします。

『冥途』は短編集で、どの短編もすばらしいのですが、個人的に好きなのは「件」です。主人公は気がつくと生まれて三日以内に予言を行い、死んでしまうという伝説の生物、件になっていました。ところが何を予言すればいいかさっぱりわかりません。そうこうしている内に周りには予言を聞こうと人々が集まってきて、でも予言なんてできないんだけど、困ったな、どうしよう……という不思議かつユーモラスな小説です。

ちなみに百閒はエッセイストとしても有名で、『阿房列車』シリーズはなかなかの売れ行きを見せました。「阿房列車」とはつまり「阿呆列車」ということで、百鬼園(=百閒)先生が目的もなく汽車に乗り、だらだら旅をするという、忙しい現代人にぜひ読んでほしい随筆です。

幻想小説なら他には、

・現代に蘇る古典の不可思議な世界、中上健次『化粧』
・幻想小説のショートショート、稲垣足穂『一千一秒物語』
・美女とカクテル、官能的な幻想世界、倉橋由美子『酔郷譚』
・「この永遠の夜こそが世界の本当の姿なんじゃないだろうか」、森見登美彦『夜行』
・夢小説の原点、夏目漱石『夢十夜』
・修行中の聖が出会った、美しくも恐ろしい美女、泉鏡花『高野聖』
・現代版稲垣足穂、川上弘美『惜夜記』

あたりがおすすめです。

○海外文学

普段読んでいる日本の小説とは、違った日常生活や文化的背景があって、何気ない風景描写や食事のシーンでも興味深く読むことができます。

レーモン・クノー『地下鉄のザジ』

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フランスの小説家、クノーの代表作の一つ。内容としてはドタバタコメディで、いい意味で「クソガキ」のザジが下町的パリを謳歌します。キャラ同士の掛け合いが面白く、何も考えずにユーモアを楽しむことができる良作です。

クノーはあまり有名な作家ではないかもしれませんが、『ザジ』のようなユーモア小説だけではなく、実験的な小説も数多く書いている興味深い作家です。

たとえば、同じ内容の文章を百通りの文体で書いた『文体練習』、14行詩(ソネット)の1行ずつに10通りのバリエーションをもたせ、どんなに早く読んでもすべて読むのには190,258,751年かかるという『百兆のソネット』、各章で同じ構造が繰り返される「押韻定型小説」、『はまむぎ』など、どの作品も非常にユニークです。

クノーに興味を持った人は、「レーモン・クノーコレクション」という役所のシリーズが出ているので、ぜひ図書館などで探してみてください。

海外文学なら他には、

・2ページに1本くらいビールを飲んでいる小説、ヘミングウェイ『日はまた昇る』
・音楽をめぐる美しい短編が織りなすノクターン、カズオ・イシグロ『夜想曲集』
・鼻がどっかいっちゃたんですけど……、ゴーゴリ「鼻」
・最初はやなやつだと思ってたけど、アイツ意外とかっこいいかも……、少女漫画の原型、オースティン『高慢と偏見』
・青春化された悲しみ、サガン『悲しみよ、こんにちは』
・醜男が恋敵のイケメンのために手紙を代筆する、かっこわるくてかっこいいロスタン『シラノ・ド・ベルジュラック』

あたりがおすすめです。カズオ・イシグロなんかは原書でも読みやすいので、邦訳版以外も試してみると新しい楽しみが見つかるかもしれません。

○日本文学(純文学系)

最初に純文学は挫折しがち……みたいなことは書きましたが、それでもチャレンジしてみたい!という方のために何冊かご紹介しますね。

「日本文学100年の名作」シリーズ

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この「日本文学100年の名作」は、文字通り日本文学の名作を100年分集めたアンソロジーです。全10巻で、1巻10年分。大正から平成の終わりまで、まんべんなく珠玉の短編を追うことができます。

ここでアンソロジーをおすすめするのには2つの理由があります。1つ目は、最初から長編に挑戦すると挫折する確立が高いこと。2つ目は、さまざまな作者に出会えることです。本を読み慣れていない人はお気に入りの作者を作ることで読書を続けやすくなると思うので、どんなジャンルでも入り口としてアンソロジーがおすすめです。

ちなみに他の日本文学系のアンソロジーだと、岩波文庫の『日本近代短編小説選』、講談社文芸文庫の『戦後短編小説再発見』あたりがバランスのいいアンソロジーで、誰にでもおすすめできます。文学史をついでに学べるのもgood。

アンソロジー以外だと、

・芥川賞では屈指の名作、村田沙耶香『コンビニ人間』
・第二次世界大戦下、日本人俘虜の姿を描く大岡昇平『俘虜記』
・河童の世界に迷い込む、芥川龍之介『河童』
・「死があたかも一つの季節を開いたかのようだった。」、芥川の死をめぐって書かれた堀辰雄「聖家族」
・橋の上で山田を待ちながらむかしなくした外套をめぐる冒険を思い出しながら自分の挟み撃ちの経験を思い出す小説、後藤明生『はさみ撃ち』
・ある批評家によると、この作家で本当に面白いのは戯曲だという、謡曲を現代にリメイクした三島由紀夫『近代能楽集』
・日本文学史上最高の名作と誉れ高い、谷崎潤一郎『春琴抄』

あたりが面白いのではないでしょうか。

○おわりに―要するに何を読めばいいのか

ここまでいくつかの書籍を紹介してきました。このなかに、みなさまの気になる本はありましたでしょうか。

しかし、本の好みは音楽や映画と同じく千差万別多種多様。結局決め手になるのは、その本が自分に合うかどうかです。

世間的に評判が高い本だけど、自分はつまらなかった。自分に本は合わないんだな……、などと思わずに、ぜひ「自分の一冊」「マイベスト」を見つけていただきたいと思います。

この記事が、本選びの一助となりましたら幸いです。


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