前例踏襲主義 とは

この類の言葉を仕事中に聞いたのは1度や2度ではない。私はそのたびに絶望的な閉塞感を覚える。今日は、若手が一生懸命に顧客に手続き方法を上手に伝えるにはどうしたらよいかを悩んでいたときに、それを見ていた上司からの助言として語られたのを私は横で聞いた。

「(顧客の手続き書類の記入を)全部やってあげてもいいけど、次のときに’’前はやってくれたのに!’’って言われたら困るから(やらない)。」

この気遣いはどこにむいているのだろう。おおよそ理解しかねるが、想像してみるに、誰かの親切心が仇となって他の誰かの手を煩わすのは、まわりめぐって自他ともに迷惑だと言いたいのだろうか。前任が成し得たであろうパフォーマンスを自分が達成できない局面での言い訳の保険にしたいのか。逆に自分のパフォーマンスでハードルを上げることにより、後任からクレームがくるとでもいうのか。はたまた、顧客にも期待をもたせておいて失望させてはいけないという消極的な親切心なのか。

私はこういう非建設的思考が大嫌いだ。個人の工夫や想像力を、同調圧力によって封殺してしまっては、なんの発展も生まれない。試行錯誤を各々が挑戦した上で、思いもよらぬアイディアや発明が生まれるかもしれないのに。とかく突出した’個’の存在を否定するのは、日本ならではの思考であろう。変化よりは横並びでいることが珍重される。『思考停止』という概念が最近になって注目されているが、日本には『前例踏襲主義』という古式ゆかしい、そのかたちがずっと存在していることに今更ながらに気づいた。

※尚、上司が席をはずしたタイミングで、若手には「やってあげればいいじゃん!それくらい。」と真逆の助言をして水を差しておいた。


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