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7月の読了

めずらしく小説が多かった1ヶ月。3冊ご紹介します。

教室が、ひとりになるまで

kindle unlimitedの中で「面白そうな小説ないかなあ」と探していたときに、評価高くて気になった1冊。
いやこれは面白かった…!読み始めで思ったよりファンタジー寄りか?と身構えてしまったけど(笑)どんどん謎が増えて引き込まれた。

早い段階で黒幕は明らかになるけど、そこからがいよいよ本番という感じ。
気づかない間に伏線がたくさん散りばめられていたんだろうなあ。答えがわかった今、もう一回最初から読みたい。

星の子

日本中を揺るがした銃撃事件。その影にあった宗教という根深い問題。
そういえばこの作品は新興宗教の話ではなかったかと思い出して、ずっと積ん読リストにあった「星の子」をAudibleで聴きました。

最後までちひろは両親の信仰を否定することはしないし、周囲に変な目で見られて自分が普通じゃないとわかっても、両親や宗教について嫌悪感を示すわけでもない。
変わらずに両親のことを好きだし、集会のお友達も好き。宗教と両親から引き離そうとする親戚の手も、ふわりと払いのける。
これが2世の日常で、疑うことなくそういうものだと生きる道がスタンダードなのかと思ったら本当にぞっとした。

クライマックスは「えっここで終わり?」と思ってしまったけど、それが逆にとてもリアルだったな。

墜落遺体 

1985年8月12日に起きた日航機123便墜落事故。
その現場で遺体確認捜査の責任者を務めた警察官の、あまりに想像を絶する127日間の記録。

日航機事故は私が生まれる前のことで、それまで「御巣鷹の尾根」という単語ニュースに出ると「あぁお盆だな、」という気持ちになるというのが正直なところだった。

生きている中で本来だったら絶対に起こり得ない、そして目にするはずのないような人の形や状態、必死に家族を探す人々の様子やエピソードが淡々と記される。
見つかったとしても「人」とはわからない状態がほとんどで、熊本地震で橋が崩落したときに車ごと潰されてしまった男性が発見されたときの「”人のようなもの”が見つかったということです」というニュースの文言に絶望的につらくなったあの気持ちを思い出した。
本当に絶句と悲しみで終始心が痛くて、でも読み進める手が止まらなかった。

首のない遺体、脳が出てしまってぺしゃんこになった顔、あまりの圧力で人に人がはまり込んだ状態、手だけ、足だけ、指だけ、歯だけ。
それでも、それは誰かの大切な人であることは間違いなくて、ちゃんと特定して家族の元へ返すという執念が全てにおいて上回っていたんだろうなと感服した。
「自分の家族が、そんな状態で見つかったら」。そう考えただけで心臓が裂けそうだった。

四〜五歳の男の子の遺体はあまりにもきれいで、あどけない。「僕、ほら起きてごらん」といったら、目をぱちっと開いて起きあがってくれそうな感じがした。ガーゼを濡らし、何度も何度も頭を拭いてやる。その顔も涙でかすんでしまう。
頭部のない、背広を着た上半身のみの遺体。首のあたりにまとまっている皮を、医師と警察官が引っぱりながら伸ばしていくと、男性の顔であった。ビニールに綿をつめ、頭部をつくり、三角巾と顔の皮膚を縫って復顔する。

歯科カルテをもって肉親の歯を探してまわり、炭化して人体のどこの部分かもわからなくなった塊でも、「これがあなたのご主人です」といわれれば、頬ずりして涙する。私はこういう光景を数え切れないほど見たり、その確認の場に立ち会ってきた。

著者はこの本を警察官退任時に書きはじめたそう。
事件からある程度の時間が経っているのにも関わらずこれだけのエピソードを詳細に、具体的に綴れたというのは本当に脳裏に焼き付いて離れないんだろうな。

あまりに衝撃的な文章で読むのがつらい人もいると思うのでおすすめだと声を大にはできない。けど私は読んで本当によかったし、これからの生き方や家族への気持ちが大きく変わったってことを言いたい。
岸田奈美さんの「すすめづらいものを他人にすすめたい」心理ってこういうことかな。

今日で事故から37年。ネットにはいろんな陰謀説も出回るけど、あの日亡くなった520名の方へ、そして現場で全力を尽くされた著者を始めとする方々のことを思う日にしたい。


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