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1月の読了

小説ブームは続く。

何かに行き詰まったとき、“あの本にそういえばこんなこと書いてあったな”と思い出すのってだいたい小説だったりする。

フィクションは役に立たない、と人に言われたことがある。実用書で成功者の言葉を浴び、ライフハックを身に着けることも大切だし私も読むけれど、私の世界や価値観を本当の意味で広げてくれるのは小説なんだよなあ、と最近思う。
phaさんのいう、「ゆっくり効く読書」の効用をひしひしと感じている最近です。

根本的な生き方を変えるためには、「ゆっくり効く読書」が必要になってくる。「ゆっくり効く読書」の例は、一見実用性がなさそうな、小説やノンフィクションや学術書などだ。
「すぐに効く読書」が今まで知っている枠組みの中で役に立つものだとしたら、「ゆっくり効く読書」は、その枠組み自体を揺さぶって変えてくれるものだ。
・今までに見たこともないような、新しい世界を教えてくれる読書
・読む前と読んだあとで、価値観ががらっと変わってしまうような読書
・人生の選択肢を増やして、今の状況からの脱出口を作ってくれる読書

この本で紹介しているのは、そういった読書だ。

「人生の土台となる読書」pha 

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かがみの孤城

2018年本屋大賞受賞作。一見児童書のような装丁とあらすじだけど、大人にこそ読んでほしい&大人になった今本当に読んでよかった。
どこかの誰かのレビューで見た「10代のあの頃の自分を救いにいく物語」という言葉に、ああまさにそうだなと思った。

どうしてもわかりあえないクラスメイト。どうにか折り合いをつけて穏便にめでたしめでたし、なんてきれいごとに書かれていないのがとても良かった。「あんなのおかしい、あなたは正しい」とはっきり肯定してくれる大人の存在がいるのは読みながらとても心強くて、とても羨ましかった。私は当時、親に何かあったことを話しても「あなたにも悪いところがあったんじゃないの」とまず言われてしまっていたので。

姫野カオルコさんの言葉をお借りするならば、「ハートがぴかぴかつるつるの人間」は年齢関係なくどうしてもいて、それはそこに無防備で対峙して傷つくのか、ちゃんと一線を引いて身を守るのかは自分にかかっているんだとつくづく感じた。

あの手紙を読んで、こころは相手に言葉が通じないことを圧倒的に思い知った。だけどそれは、あの子に限ったことじゃない。喜多嶋先生が「あれはない」と言ってくれたのに、おそらくは、伊田先生にもそう伝えただろうに。それでも伊田先生の中ではそう言われることこそがお門違いでピンとこないのだ。自分がやったことを正しいと信じて、疑っていない。
彼らの世界で、悪いのはこころ。

辻村深月「かがみの孤城」

しかし世の中には、ハートにバンドエイドを貼る必要など、一度もなかった人間もいるのだ。ハートがぴかぴかのつるつるで、きらきらしていれば、できごとはできごとが表に見えているようにしかわからない。

姫野カオルコ「彼女は頭が悪いから」

少しずつ散りばめられた伏線が最後にぶわーーっと回収されていくのも圧巻。ずっと彼女を見守っていたい、この世界線にいたい、と思う小説でした。

プロジェクト・ヘイル・メアリー(下)

上巻で心底惚れたSF大作の下巻。
もったいなくてちびちび読み進めていましたが、遂に、読み切りました。
上巻で「えええっっ?!!!?まじかまじか」となったある出来事が下巻ではそれを前提として進んでいくこの異様さ(笑)
「いやちょっとまってそもそもこの状況でなんで冷静なんwwww」とふと時々思ってしまうのだけど、そんな野暮なことをせず存分に世界観に潜りましょう。

なにも知らないほうが絶対いいので何も言えませんが、、、本当に面白いのでぜひ。

「0.93cの巡航速度に達するまで500Gで加速してね。地球にもどるのに12年以上かかるけど、最終的にそいつらが経験するのはたった20ヶ月で。神を信じます?個人的な質問だってことはわかってるけど。ぼくは信じてるんですよ。で、“彼”は相対論をすごいものにしてくれたと思ってるんです。そう思いませんか?速く進めば進むほど、経験する時間が少なくなる。まるで“彼”がぼくらに宇宙を探検しろといってるみたいじゃないですか、ねえ?

アンディ・ウィラー「プロジェクト・ヘイル・メアリー」

そして、バトンは渡された

2019年の本屋大賞受賞作。Audibleで聴きました。
幼い頃から現在まで、名字が何度も変わる女の子の“家族”の話。

2人のお母さんと3人のお父さん。事情は多々あれど、みんな優子ちゃんのことが大好きだという確固たる事実が、穏やかとは言えない出来事や状況を中和していたと思う。
そして話が進むに連れて、なぜ優子ちゃんがこんなに周囲から愛されるのか、決め手みたいな大きな出来事はないにしろ彼女自身の考えや空気感からふんわりと伝わってくるような感覚だった。

映画化されていて、主要キャストは把握していたので顔が思い浮かんで聴きやすかった。梨花さんの「笑っていれば、色んなラッキーが転がり込むの!」という言葉は梨花さん役の石原さとみさんを想像したらそれはもう説得力抜群だったな。


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