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ジャン・チャクムルを見守り続けて・・・

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トルコの若きピアニスト、ジャン・チャクムル(Can Çakmur)の存在を知って以来、第10回浜松国際ピアノコンクール(2018)での優勝を経てさらに成長を続ける彼を応援していま…
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#浜松国際ピアノコンクール

ジャン・チャクムル『アンダンテ』誌インタビュー「敏感、謙虚でナイーブな音楽家―ジャン・チャクムル」

TRTラジオ3をはじめとし、様々なメディアで音楽番組の企画・プレゼンターとして経験豊富なアイシェ・ヤワシュ(Ayşe Yavaş)氏 が『アンダンテ』誌のために行ったジャン・チャクムル君のインタビュー(2021年12月31日付)を本日はご紹介します。 彼女はそのインタビューの最初にこのような感想を述べています。彼と会話をしている時、自分がまるで一人の哲学者と話をしているかのような感覚を覚えずにはいられなかったと。 それでは私たちも早速、彼との会話の中に入っていきましょう。

ジャン・チャクムル最新インタビュー(1) “芸術家は常に思想家であらねばならない”

現在、3枚目のアルバム(*1)を鋭意準備中のジャン・チャクムル君に対して行われた最新インタビュー(2021年5月21日公開)を本日はご紹介します。メネキシェ・トクヤイ(Menekşe Tokyay)氏がトルコの若き音楽家たちの内面に迫るインタビューシリーズ「素晴らしき若者たち」ファイルNo.62からの全訳です。 ---------*---------*---------*---------*---------*--------*-------- 音楽との出会い、現在ヨーロ

ジャン・チャクムル「サバフ」紙インタビュー(2) インスピレーションの源

- 自分のスタイルを説明していただけますか?(クラシック音楽の内外で) 自分が糧とした音楽家や音楽の種類には誰が、どんなものがありますか? 解釈者というのは、演奏する作品の言語やスタイルに敏感かつ協調的であらねばなりません。ステージの上で、理想的な条件の下で、音楽家は唯一の人間としてではなく、音楽が肉体を手に入れた状態としてそこにあるべきです。真のインスピレーションというのは、まさにこの露と消えてなくなる感覚ではないかと思います。私にとって最大のインスピレーションの源はお

ジャン・チャクムル「サバフ」紙インタビュー(1) 正しい道を歩んでいる証

2021年1月20日付で発表されたICMA(国際クラシック音楽賞)Young Artist of the Year(年間最優秀若手アーティスト賞)受賞*1 を受け、トルコ国内のメディアによるジャン・チャクムル君へのインタビューが続いています。 本日ご紹介するのは、2021年2月7日付でトルコの大手新聞サバフ(Sabah)紙に掲載されたインタビューです。過去に行われたインタビューの内容と重複する質問も中にはありますが、削除はせず全文を訳して掲載いたします。 --------

ジャン・チャクムル「芸術からの投影」インタビュー (2) 3枚目のアルバムは20世紀音楽

- 3枚目のアルバムのレコーディングですが、新しい日程は決まりましたか?シューベルトのどの作品が入るのでしょう? パンデミックのせいでレコーディングが3度延期され、2度はスタジオの変更を余儀なくされましたが、ようやく5月に実現できそうな見通しです。今回はプログラムにシューベルトはありません。その計画は11月に中止になったので、延期することに決めました。なぜなら元々スタンバイしている別のプログラムがあったからです。 そのプログラムは次の通りです。エネスクのピアノ・ソナタ第3

ジャン・チャクムル「芸術からの投影」インタビュー (1) パンデミック下での自己成長

芸術に関する総合的なポータルサイト「芸術からの投影」編集主幹シェフィッキ・カフラマンカプタン(Şefik KAHRAMANKAPTAN)氏によるジャン・チャクムル君のインタビューが2021年2月6日付で同サイトに掲載されました。 新型コロナウイルスの世界的流行により昨年の5、6月および11月から今年1月までに予定されていた日本公演がすべて延期か中止されたなか、コロナ流行下でのこれまでの活動状況、特に3rdアルバム収録や来日の予定など、ファンにとって得難い最新情報をこうしてタ

Wikipedia日本語版「ジャン・チャクムル」に掲載できなかったエピソード集

   先月(2021年1月)、Wikipedia日本語版に「ジャン・チャクムル」の記事を新規に執筆した。  ツイッターで私のアカウントをフォローしてくださっている方はよくご存知だと思うが、私はここ2年ほど、トルコ出身の若手ピアニスト、ジャン・チャクムル君のサポートを続けている関係で、トルコ語で報道された新聞や雑誌の記事が目に留まるたびに記事に目を通し、紹介する価値があると判断したものについては、極力、日本語に訳してツイッター上で紹介してきた。特に2015年以降に公開された

コロナの時代の音楽家—ジャン・チャクムルTVインタビューから (3)

Q: 音楽家の孤独について話したところで隔離の話に戻りますが、大変に予定の詰まったコンサートツアーがありましたね。ところが今は、私たち全員が何か月も家に籠っています。そこで気になるのですが、この隔離の日々はあなたにどう影響しましたか? A: この隔離期間の結果として、現時点で8月末まで全てのコンサートが、残っているものもまだありますが、ほとんど全てのコンサートが中止となりました。おそらくコンサート生活が元の状態に戻るには、かなり長くかかるでしょう。当然ながらこのことは、現

コロナの時代の音楽家—ジャン・チャクムルTVインタビューから(2)

Q: すでに素晴らしいキャリアをもってらっしゃいますが、ひとりの芸術家が成功を収めるには、当然ながらその分野に精通していることも、楽器に、音楽に精通していることも大変に重要です。その他に、あなたの考えでは、どんな分野で自分自身を育て伸ばしていくべきですか?あなた自身はどのような道を辿られているのでしょう? A: 成功と私たちが言うもの、特にステージに上がることと、そこで起こる反応に結びついて、これほどまでに成功と失敗とが評価される分野においては、成功は絶対に2つに分けて考え

コロナの時代の音楽家—ジャン・チャクムルTVインタビューから(1)

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により、コンサートホールで聴衆を前に演奏することで自らの音楽を伝えることを主要な仕事とする音楽家たちが、経済的な問題からだけではなく、演奏を理想的な形で披露できる環境と、自身の音楽を生で聴いてもらい聴衆の反応を直に感じることのできる機会が奪われた厳しい冬の時代を過ごしてきたことは想像に難くない。感染拡大が落ち着きを見せ始めたヨーロッパ各国が正常化プロセスに入り、音楽祭やコンサートが再開されるようになった雪解けの喜びも束の間、再びロッ

若き思想家―ピアニスト、ジャン・チャクムル(11)

(※以下の翻訳は、「アンダンテ」誌の発行人・編集長セルハン・バリ氏の許可を得て掲載しています。また、質問に相当する部分は必要に応じ要約してあります) ――今日の激しい競争環境と厳しい経済条件のなかでは、ソリストだけをしながら生き残るのは容易ではありません。したがってソリストたちの多くは、同時にちゃんとした組織で先生となることもキャリアの一目標と見なしています。一部のソリストたちは、定期的にマスタークラスを開き、若い音楽家たちに経験を伝えています。 ジャン・チャクムルは、自身

若き思想家―ピアニスト、ジャン・チャクムル(10)

(※以下の翻訳は、「アンダンテ」誌の発行人・編集長セルハン・バリ氏の許可を得て掲載しています。また、質問に相当する部分は必要に応じ要約してあります) ――あらゆる時代、あらゆる作曲家を制覇するという点で右に出るものがいないピアニストがいます。特にロシアの音楽院出身のピアニストたちは幅広いレパートリーを持っていることで知られます。ロシアの音楽院出身でなくとも、我が国のピアニストでいえばイディル・ビレットがこのグループに入ります。また例えばアルフレッド・ブレンデル、あるいはまた

若き思想家―ピアニスト、ジャン・チャクムル(9)

(※以下の翻訳は、「アンダンテ」誌の発行人・編集長セルハン・バリ氏の許可を得て掲載しています。また、質問に相当する部分は必要に応じ要約してあります) ――もう一度、日本の話に戻りますが、今度は別の理由からです。日本とトルコの近代化の実践は互いによく比較されます。2国ともほぼ同年代に近代化の動きが始まったわけですから。しかしその後の時代に異なるスピードで異なる方向へと発展を続けていきました。一方、ヨーロッパのクラシック音楽もずいぶん経って、ほとんど同じ時代に2国に入っていきま

若き思想家―ピアニスト、ジャン・チャクムル(8)

(※以下の翻訳は、「アンダンテ」誌の発行人・編集長セルハン・バリ氏の許可を得て掲載しています。また、質問に相当する部分は必要に応じ要約してあります) ――ジャン・チャクムルは〈考えるピアニスト〉という独自性をもち、単に作品の解釈の仕方だけではなく、クラシック音楽の世界、演奏と鑑賞の伝統などを歴史的視点から評価することができることでも、当代におけるピアニストの中でとび抜けています。アンダンテ誌でここ数年発表してきた読者の高い関心を集めている論考で、クラシック音楽の異なる側面に