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ただの女として、生かされていく。


とてもいい気分で
外を見ると、
つがいの蝶が
くるくると舞いながら
消えた。


夫を想いだして
涙がこみあげた。
けんかをしても
そっと抱きしめてくれる彼が
大好きだった。


夫が亡くなったその年、
わたしはパリの教会に行った。


いまおもえば、
よくそんな行動力があったなあ。


人生は、
本当の自分に戻る旅。
いるべきところ、
なすべきことへと、
自然と誘われていく。



あの頃はただ、風のなかに佇んで
ひとりの女であること、
ひとりの人であることを
ひっそりととりもどす毎日を生きていた。


わたしは、これからも何者かになりたい、
何かになりたいと願うだろう。
その儚さもまた味わうだろう。



そしてまた、
気づくのだろう。




自分の力を抜いて、
ただの女として
生きていくだけでいいのだと。


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