【セッションレポート】「脱・働く」#2 — リモートワークをオフライン以上に活かすZoom活用法
人々に「はたらく」を自分のものにする力を(GIVE PEOPLE THE POWER TO OWN THEIR WORK-LIFE.)をミッションに掲げるパーソルキャリア株式会社。 2020年3月19日、起業家や政策担当者など、多様なイノベーター達をつなぐ「Venture Café Tokyo」と共同で、トークセッションシリーズ「脱・働く-POWER TO/THE PEOPLE-」の第2回を開催しました。
これからの時代の新しい「はたらき方」はどうあるべきか。第2回目では、ここ最近急速に導入が進んでいるリモートワークについてトークを実施。『Zoomオンライン革命!』著者である田原真人氏をゲストに招き、オンラインならではの魅力やリモートワークの要となるZoomの活用方法、またリモートワークから考えるこれからの時代に対する向き合い方などを語っていただきました。
◆「脱・働く-POWER TO/THE PEOPLE-」について
不確実性の時代とも称される今。技術進化や人口動態の変化などにより、あらゆるゲームのルールが加速度的に大きく変わりつつあります。それに伴い、社会保障制度や終身雇用など戦後期に構築された様々なシステムも「制度疲労」に直面しているように思われます。我々はこの来るべき時代において、どのようにはたらき、生きるべきなのでしょうか?
本シリーズではその考えをもとに、様々なステークホルダーを招きながら皆さんと繰り返し対話の場を持つことを通じて「日本らしい“はたらく“のその先」について議論を深めることを狙いとします。
1. オンラインツールが変えた、コミュニケーションの新しい在り方
モデレーター:新型コロナウイルスの影響もあり、今まさに急速にリモートワークの注目度が高まっています。しかし、リモートワークを実際に使いこなすにはどうすれば良いのか、皆さんがまさに模索している状態ではないでしょうか。そこで今回『Zoomオンライン革命!』の著者である田原さんに、ぜひリモートワークやZoom活用についてご知見をお窺いできればと思います。
田原氏:はい、今ご紹介いただいた『Zoomオンライン革命!』著者の田原です。よろしくお願いします。まずは簡単な自己紹介をさせてください。
私はもともと予備校講師をやっていたのですが、2011年の東日本大震災をきっかけに大きく変化しました。地震の被害や危険性について調べて、自分や家族が今後どう行動するか決めなくてはと考えた始めたことが転機となって、「主体的な学びをどうデザインするか」に興味を持ち「反転授業の研究」というFacebookのグループを立ち上げました。
反転授業とは、あらかじめ授業のビデオを作って事前に予習として見てもらい、実際の授業では会話型ワークをする方法です。この反転授業のより良いやり方をFacebookのグループの中で議論し続けていると、学び合いの渦によってどんどんコミュニティが大きくなっていったので、今度はオンラインのワークショップをやってみることにしました。
ワークショップを繰り返しやっていると、オンラインならではの魅力や気を付けるべきことがいくつかわかってきました。
まず、オンライン上では誰しもがフラットな関係になれるということ。私たちはリアルでは縦の関係がありますが、そこでは自分を正直に出せないし、学び合えない。しかし、オンラインではフラットな関係がつくりやすく、学び合いが可能になります。私も40歳を過ぎてから初めて、フラットな関係で他人とたくさんつながり始めました。
さらにもう一つ、オンラインでは『余白づくり』に工夫が必要であること。リアルだったらワークショップ以外のことを隣の人と喋ったり、知り合った人と食事に行ったりと『余白』のところでたくさんコミュニケーションがあります。オンラインでは意識しないと関係性づくりの場所がなくなってしまうのです。そこで、放課後ルーム、居酒屋ルームなど、『余白』をつくってコンテンツ以外で雑談できる場を広げるように工夫しました。
そんな中で2016年にZoomが登場して、オンラインワークショップがよりしっかりと行える環境が整ったと感じました。さらにこれはコミュニケーションのやり方や学び方が根本的に転換するなあと思って、2017年に『Zoomオンライン革命!』を書くことにしたんです。
Zoomの特徴として一番大きいのは、最大1000人が同時接続可能でしかも皆が喋れること。当然大勢が一斉に喋ったら誰が何を言っているかわからないですが、小グループに分けるブレイクアウトセッションを使えば、50ルームに分けることができます。ですから、例えば100人が集まっても、2人ずつペアワークもできるわけです。ペアワークを終えてからまた戻って、「どうでしたか?」と全体共有もできます。
それからワンクリックで録画できる機能も凄く優れていて。ペアワークの動画も録画してくださいと伝えて、終わってからその録画を集めると、自分以外のペアワークも見合って学ぶこともできます。これはリアルではできない、オンラインならではですよね。
2. リモートワークには二種類ある。成功と失敗を分けるのは?
田原氏:今日一番重要でお話ししたいことがこちらの図です。
縦軸が共感で繋がる経営とにらみをきかせる経営、横軸がリアルとオンラインとしたんですが、まず、リアルでにらみをきかせる経営、これはいわゆる現代の日本に多い昔ながらの組織運営のあり方です。上から下への一方向のコミュニケーションをしていて、働く人をブロック塀のブロックみたいに規格化している状態ですね。ただ、人を規格化するのは無理があるので、ある種の強制力がないと維持できません。だから目が届く範囲で働いてもらうことがすごく重要になってきます。
それに対して共感で繋がる経営は、皆がそれぞれ主体的に活動する自律分散型の組織運営のあり方。これは賢いトップが経営するのではなくて、たくさんの人の経験や知識を集めて、その集合知でマネジメントしていこう、双方向コミュニケーションを大事にしていこうみたいな話です。
この二つの経営方法は、オンラインにしたときにものすごく明暗が分かれます。たとえば、にらみをきかせる経営をオンライン化すると、オンラインでは目が届かないのでリアルが劣化した一方向コミュニケーションになります。この場合のリモートワークはものすごく崩壊しやすいんですね。にらみをきかせる経営とオンラインというのは相性が悪いんです。
一方、共感でつながる経営、つまり集合知マネジメントはそもそも管理しようと思っていない。皆がそれぞれ自分で動いて集合知を作り出そうとしているんで、オンラインになったとしても別にデメリットにならないんですよ。つまり一言にリモートワークと言っても、この右上のリモートワークをやっている人と右下のリモートワークをやっている人では全然、別物なんですよね。
オンラインをリアルの劣化版だと思っている人が結構多いですが、オンラインをはじめると、実際はオンラインだからこそできることが結構あることに気がつき始めます。そして本気でその可能性を拡張していくと、会議やるんだったらオンラインの方が逆にやりやすいよねみたいな世界になってくる。
そうはいっても、にらみをきかせる経営を否定するのも違うなと思っていて。それぞれ全然違うビジネスモデルであるし、大事にすべきことも変わってきます。リアルとオンラインの特性も踏まえたうえで、どういうデザインをするのかが大事だと私は考えています。
3. オンラインミーティングならではの活用法と注意点
モデレーター:ありがとうございます。ではここからは参加している皆さんからの質問に答えていきたいと思います。
質問者A:よろしくお願いします。私は大学院生ですが、これからクラスメイトと新しくビジネスプランを立ち上げたいと考えています。コロナウイルスの影響で直接会うことが難しい状況で、今は毎日Zoomでチームミーティングをしています。皆で何をしたいのかを洗い出している段階で、できるだけ発散できるようなコミュニケーションをしたいのですが、オフラインで当たり前にできていたことがやりづらくなっているなと感じていて。発散フェーズで、オンラインだからこそできることがあればお窺いしたいです。
田原氏:僕らはたいてい、Googleドキュメントを使うことが多いですね。発散するときは、とにかくいろんなことをばーっとGoogleドキュメントに書いていきます。Zoomのホワイトボードやチャットでは次に残らないですが、これはどんどんログが残っていくので良いですね。会議そのものを録画して振り返るのもおすすめです。
あとはチームビルディングで言うと、お互いの背景を少しで良いからストーリーとして共有しておくといいです。これをしておくと、対立が起こったときに「この人はこういう背景で言っているんだな」とお互いにわかるので、その先に行きやすいんですよね。時間がないときはブレイクアウトセッションで2人組とかになって、共有を10分ずつやって、その録画を来週までにお互い見て来ましょうかっていうこともできます。
質問者A:ありがとうございます、録画は使ったことがなかったのでやってみたいと思います。見るときは、皆で一緒に見て振り返りをするんですか?
田原氏:集まるのも大変なので、SlackやFacebookなどのプラットフォームに動画をアップして、気づいたことをチャットで書いておくと良いですね。こうするとミーティングとミーティングの間も学びの場として使えるようになるわけです。
4. 新しい社会にシフトする。オンラインツールを養成ギブスに
質問者B:オンラインで自律分散化が進めば進むほど個が問われる時代が来ると思いますが、昔ながらの組織に慣れ親しんだ方がいきなり変われるんでしょうか。変われるとしたらどんな変容のプロセスがあり、どんな仕組みで橋渡しをしようとされているのでしょうか?
田原氏:素晴らしい質問ですね。昔ながらの価値観は「こうあるべき」という正解の中に自分がどれだけ入れているかで自己肯定感の度合いを測る価値観だと思うんですよ。それって欠けている部分がどうしてもあるから、欠けているところが自己否定の場所になりやすい。自分が欠けていると思う部分を開示しにくい文化だったと思うんですよ。
ところが自律分散型にやっていくことになると、自分の強みと同時に自分の弱みを両方出して、まわりとどう総合的に組み合わせられるかを見ていくことになるので、いびつな形の自分を受容することがすごく重要だと思っていいます。
一方で、それは昔ながらの価値観と真逆なので、抵抗感も出てくると思います。でも抵抗を感じながらも前に進んでいけば、そのうち抵抗感が外れていくとどんどん楽になっていきます。僕自身も、震災をきっかけに40歳から8年かけて相当大きく変わったなと思っています。僕はZoomを自律分散型養成ギブスって呼んでいるんですけど、自律分散型になればなるほどこのツールは味方なんですよ。
モデレーター:つまり、リモートワークに代表されるような新しい「はたらき方」に適応していくためには、この養成ギブスは最初は多少しんどいかもしれないけど、ちゃんとはめてしばらく頑張ってみる。そういうことでしょうか?
田原氏:そうですね。そうするとその先に大きな可能性が見えてくると思います。それこそ地方の行政とか変わるんじゃないですかね。これで本当に市民の意見を吸い上げて、立案してみたいなことができるだけのテクノロジーはありますし、本当に民主主義が変わってしまうくらいのポテンシャルを秘めているので、楽しみですね。
モデレーター: Zoomのようなオンライツールは私たちのはたらき方や生き方をアップデートしてくれるギブスであるというのは印象的なメッセージでした。新しい未来を掴むためにも是非皆さんも、最初は使いづらく感じるかもしれませんが、積極的に継続的に使ってみてはいかがでしょうか?ありがとうございました!
当日は、田原さんのセッションをインスピレーションにアーティストであるTomoko MATSUOKAがライブ・ペインティングを披露
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次回のセッションは、『ジョブ型』は本当に解決策か?〜雇⽤システムから未来の『はたらく』を考える〜
脱・働く第7回となる 8月27日(木) 19:00–20:00(オンライン)は、「『ジョブ型』は本当に解決策か?〜雇⽤システムから未来の『はたらく』を考える〜」をテーマにセッションを行います。ぜひお気軽にお申し込みください。
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