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第五話 産業医の選び方

熱い思いを持って、ベンチャー企業で働く人たち。
縁の下の力持ちである人事の方々がこのような人たちを支えている。
ベンチャー企業に入社2年目の江川千里の産業医採用への挑戦は続く、、、

このシリーズを初めて読む方はこちらからご覧ください。

千里は、知人が産業医をしているという従業員の話を聞いた。
その医師はベンチャー企業での産業医経験があるという。それなら弊社に産業医として招いても問題はなさそうだ。

そもそもネットの紹介会社を介した産業医の採用はなんだかんだで時間がかかる。とりあえずその従業員の知人である産業医に会って話を聞きつつ、並行して紹介会社に探してもらうのが効率がいいかなと考え、素直に紹介してもらうことにした。

ところで、実際に産業医と会ったとして、その採用の面接にあたり、どのような質問を投げかけるべきだろう? 千里はそれも調べてみた。

「『このページをご覧の方は、法律で定められているからという理由で産業医を探し始めた方が多いと思います』……その通りよ。『突然の人探しにさぞお困りのことでしょう』……まったくだわ」

HPを見ると、産業医の採用基準は産業医に何を期待するかで大きく変わってくる、とあった。

①その産業医に何に期待するか?(メンタルヘルスケア? 最低限の項目チェック? 徹底した職場巡視?)
②従業員数の変動はどうか?(年々増えつつあるなら精神科の産業医がおすすめ。メンタルケア大事!)
③従業員の方の平均年齢はどうか?(従業員の平均年齢と同じくらいの年齢の産業医の採用が望ましい)

「なるほどね」

千里は自分の会社に当てはめて考えてみた。

①危険作業のないオフィス系なため、基本のチェックだけをしてくれればよく、過度の職場巡視はいらない。
②従業員数は今後もどんどん増えていく予定なので、安全配慮義務に則り、メンタル面を診てくれる医師が欲しい。
③従業員の平均年齢が若いため、若めの医師が望ましい。

つまり、欲する人材は若めの精神科医ということになる。

「よし、決まり! これでオロオロと悩むことはないわ」

明確な人物像をカッチリ設定することで、堂々と産業医面接に望む手筈が整う。

ついに産業医との面接はZoomで行うことになった。相手は30代の男性精神科医……欲する人材ドンピシャだ。

面接は和やかにはじまった。

「なぜ産業医を目指したのですか?」
「産業医の仕事をする上で大切にしていることはなんですか?」
「今まで産業医としてどのような経験がありますか?」

最初の千里の質問内容は、従業員の採用面接の<ITエンジニア>や<事務>を<産業医>に置き換えただけのありきたりなものだった。相手は産業医の実績があるだけあり、明確にスラスラと千里の質問に答えていく。

それから、こちらが欲することを明示し、向こうが応じられる範囲を聞き出し、話を聞いたり、逆に聞かれたりして、面接は30分ほどで終了した。

特段の引っかかりもなく、なかなかいい医師だったと千里は感じたが、

「とはいえ、他の先生にも会ってみないと、なんとも言えないわね……」

比較対象がいないことには最善の判断もできない。

千里は引き続きネットの産業医紹介会社を回りながら、次の産業医面接のセッティングに奔走するのだった。<第六話へ進む>

■次回予告

産業医の採用を進めつつ、同時に衛生管理者の資格取得へ向けて動く千里。
勉強法を調べながら、共に資格取得を目指してくれる二人と進捗状況を共有してゆく、、、


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